Facebook MessengerがやっとiPadに登場―マネタイズ開始も近い?

FacebookがBelugaを買収してスマートフォン向けチャットアプリのMessengerをリリースしてから3年になる。今日(米国時間7/3)、やっとiPhoneアプリを拡大しただけではないiPad専用Messengerアプリが登場した。iPad版にはスレッドのリストと現在のスレッドを並行して表示するマルチウィンドウ機能が備わっている。Messengerには4月の時点で2億人以上のユーザーがいるが、これでiPadの広い画面でメッセーjジがやりとりできるようになった。

Messenger for iPadにはスタンプ、グループチャット、VoIP通話などiPhone版Messengerのほとんどの機能がある。わずかに欠けているのは最近追加された2画面自撮りカメラ長押しでビデオ撮影の機能だけだ。Androidタブレット版についての計画は明らかにされていない。

FacebookとMessengerの双方をiPadにインストールすれば、Facebookのメッセージ・ボタンをタップするだけでMessengerアプリに切り替わる。Messengerの画面トップのバーをタップすればFacebookに戻る。〔日本版:日本版のMessenger v7.0ではそのようになっていないようだ。〕

Messengerがサポートするデバイスを増やすことはSMSを改革してモバイル・チャット分野でも優位性を確立しようとするFacebookの長期戦略にとって重要なテーマだ。Facebookといえばニュースフィードとプロフィールを思い浮かべるのが普通だが、多くのユーザーは一般公開されたコンテンツを毎日丁寧に読むわけではない。むしろ特定のユーザー間の直接のメッセージのやりとりがユーザーの日常生活にとって重要な役割を果たすようになっている。

またメッセージはユーザーのソーシャル・グラフに深く関わっており、ソーシャル・ネットワーク活動そのものといえる。そのためFacebookはこの分野で優位に立つために全力を挙げている。実際チャットはそれ自身で巨大なソーシャルネットワークをいくつも生み出している。これがFacebookが190億ドルの巨額でWhatsAppを買収した理由だ。世界で5億人のユーザーを持つWhatsAppには、ステータスアップデート機能などを備え、単なる無料SMSアプリという以上の存在になりつつあった。Facebookがユーザーの限られたアテンションを奪われる恐れを感じたのももっともだ。

今のところFacebookはMessengerからは直接収益を上げていない。Facebookはこれをユーザーの囲い込みに利用しているようだ。サポートするデバイスが増えれば囲い込みはそれだけ有効性を増す。しかしMessengerアプリを利用した収益化の方法はいくらでも考えられるだろう。最近、FacebookはPayPalの社長、David Marcusを引き抜いて、メッセージ・プロダクト担当副社長に据えている。

この人事を発表した際、Facebookは「Marcusはこれまで数々のすばらしいプロダクトを作り上げると同時に、それらをすばらしいビジネスに育てる方法を見つけ出してきた」とコメントしているのは興味深い。これから察するに、Facebookは近くMessengerのマネタイズを図るのだろう。Lineのようにユーザーがスタンプを購入したり、自分のデザインしたスタンプを販売してりできるようにするのもよいだろう。また、最近のLegoMinifiguresパッケージのように、大手映画スタジオ、おもちゃメーカーなどと提携してブランド・スタンプを販売することもできる。

しかしそれよりももっと大きなビジネスチャンスは、まさにMarcusの専門分野である「支払」だ。Messenger上にP2Pの支払いネットワークを作って少額の手数料を得ることもできる。現在、世界中でオンライン送金の手数料は法外に高い。海外へ送金しようとすると、送金額の1.5%から最高で20%にもなる。現在有力な送金サービスはWestern Union、MoneyGram、Telegiros、Remit2Indiaなどだが、Facebookが参入すればこうした既存サービスを打ち負かすことは可能だろう。Facebookの参入で手数料が下げれば母国の家族に継続的に送金している出稼ぎ労働者などが大きな恩恵を受けるだろう。

もちろん、iPhone/iPadはこうした労働者には高価すぎるデバイスだが、サポートされるデバイスが増え、サービスのユーザーが増えればMessengerがネットワークとしてさらに有効性を増すことになる。

〔日本版〕 記事中にも注記したが、AppStoreで公開されている日本語版Messengerはv7.0にアップデートされているものの、Facebookとの自動切り替え機能などは現在サポートされていないようだ。iPadのFacebookアプリでメッセージアイコンをタップしてもMessengerアプリは自動的に起動しない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。