Facebook Messengerに続きViberが法人向けサービスPublic Accountsをローンチ

viber_chats_3

楽天の子会社で8億人のユーザー数を誇るViberは、プラットフォーム拡大に向けた次のステップをとろうとしている。ユーザーのだめだけではなく、売上増大のためにもFacebook MessengerやWhatsAppに攻撃を仕掛けようとしている同社は、本日法人向けの新しいタイプのアカウントPublic Accountsをローンチした。この新しいアカウントを使えば、企業やブランドはユーザーのコンタクトリストに登録されていなくても、マーケティングやカスタマーサービスに関連したやりとりを行うことができる。

img_7167ローンチ時点で、The Huffington PostやYandex、The Weather Channelを含む、約1000件のPublic Accountsが登録されており、ユーザーは彼らのアカウントにサブスクライブすれば、アップデートやその他の情報を受け取ることができる。

カスタマーサービス機能も近日中に追加される予定だ。ViberでCOOを務めるMichael Shmilovは、11月中にも10〜15種類の人気CRMパッケージにViberがAPI連携する予定だと、インタビュー中に語った。この準備が整えば、登録企業はソーシャルメディアやメール、メッセージといった既存のコミュニケーション手段と一緒に、Viberメッセージを送受信できるようになる。

さらにPublic Accountsの登場によって、Viber上で動くボットへの道も開けたが、ShmilovはViberがインハウスでボットを開発するつもりはないと話している。

「私たちは、拡張性のあるAPIを利用して最高のチャットサービスを開発することに注力しているため、自分たちでボットをつくるつもりはありません。しかし、ボットのディベロッパーに対しては(彼らがViberボットを作れるように)ツールを提供しています」と彼は語る。

本日リスボンで行われたWeb Summit内で、Shmilovが正式に発表したPublic Accountsは、”Public Chats”と呼ばれる2014年に追加された機能をもとに開発された。これは著名人(もしくは誰でも)が一般の人々と会話するための機能だが、その著名人をコンタクトリストに登録している人しか実際にやりとりをすることはできない。

Shmilovが強調するように、Public Accountsでは相手をコンタクトリストに登録していなくても、ユーザー(と企業)がやりとりをできるようになっている。これはViberでは初めてのことだ。

Public Accountsの登場によって今後Viberは、ユーザーに”話しかけられる”機能で既に法人ユーザーの獲得を狙いはじめている、他の消費者向けメッセージアプリと戦っていくことになる。

主要な競合相手となるWeChatLineは、それぞれ2014年と2015年から法人向けアカウントのサービスを開始している。Facebook Messengerは法人向けアカウントに関して少し遅れをとっていたものの、ボットやその他の機能で急速にサービスを拡大・アップデートしていき、最近でいえば昨日プラットフォームのアップデートが行われたばかりだ。

全体的なトレンドとして、ソーシャルメディアプラットフォームの運営企業は、インストリーム広告やディスプレイ広告以外の収入源を確保するため、ユーザーや彼らに関するデータを利用し、もっと消費者と距離の近いサービスを法人顧客に提供しようとしている。その証拠に、Twitterも現在カスタマーサービス機能を開発中だ。

しかし、もしもこのトレンドが本当だとすれば、まだその流れに乗っていないメッセージアプリも存在する。WhatsAppは今年の1月に、法人向けサービスを開始する予定だと話していたが、まだそのサービスは実際にはアナウンスされていない(遅くとも今年中には発表されるようだ)。

興味深いことに、他の全てのメッセージアプリが法人向けサービスを提供しようとしている現状を、Shmilovは、道理にかなっているだけではなく、良いことだとさえ考えている。Viber全体の登録ユーザー8億人のうち、約2億6600万人がアクティブユーザーにあたることもあり、ShmilovはViberのCRM機能が単に他社のサービスを補完し、全てのメッセージアプリが新たなコミュニケーション・チャネルとして認められるようになるためのフレームワークを構築するようになると見ているのだ。

「ユーザーが利用している数少ないアプリのひとつにViberが含まれているならば、私たちは企業とのコミュニケーションもViber上で行えるようにしたいと考えています」とShmilovは話す。

企業がメッセージアプリに興味を持っている理由は明らかだ。誰かと直接テキストベースのやりとりをする際の主な手段として、メッセージアプリ利用者の多くは、(完全にではなくとも)メールの代わりにメッセージアプリを使っているほか、中にはFacebookやTwitterといったオープンなプラットフォームの代わりに、メッセージアプリというクローズドなサービスを使っているという人もいる。いずれにしろ、メッセージアプリ上のやり取りはリアルタイムで行われ、これは(企業が渇望している)エンゲージメントを高める上で重要な点だ。

さらに、モバイルフレンドリーなメッセージングプラットフォームは、万能な多機能プラットフォームへと進化しようとしており、今ではステッカーのようなメディアを送付する機能のほかにも、通話機能や、オススメのレストランなどのさまざまな情報を備えた対話形式のボットなどが搭載されている。

そのため、まとまった数のユーザーと直接会話をしたい、またはカスタマサービスを提供する際に直接彼らとやりとりをしたい、もしくはその必要があると考えている企業やブランドが、メッセージングプラットフォームを利用しようとするのには納得がいく。2億6600万人というアクティブユーザー数を誇るViberは、そういった意味で、企業にとって魅力的な存在なのだ。

しかし同時に、法人向けサービスの拡大を嬉しく思っていないユーザーがいるのも確かだ。

先日の記事にも書いた通り、メッセージングプラットフォームは、Facebookのようなオープンなプラットフォームと張り合うくらいにまで成長した。FacebookやTwitter上では何でも公開されている一方で、メッセージングプラットフォームではユーザーが話しかけたい相手を選ぶようになっている。そのような環境に企業が入り込んで情報を発信しだすと、使い方によっては、ユーザーエクスペリエンスが低下する恐れがあるのだ。

Public Accountsの料金体系についてShmilovはハッキリと答えなかったが、どうやらViberはフリーミアムモデルを採用し、アカウント作成自体は無料で、法人ユーザーが機能を追加したときや、情報発信する際に課金する仕組みを導入するようだ。

「既に企業やブランドは、Public Chatsを使ってViber上でコンテンツを発信できるようになっていて、私たちはスポンサードステッカーやその他の販促サービスから売上を立てています」と彼は話し、Public Accountsがまずどのあたりから収益をあげていく可能性が高いかについて説明した。「Public Accountsのそれ以外の機能については、現状無料で利用できます」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。