Firefoxは今後どうなるのか?

10年か20年後に歴史家がWebの歴史を見たら、彼らはFirefoxを、当時約10年間のもっとも重要な製品の一つだった、と言うだろう。でも今Firefoxを見ると、その将来を心配せずにはいられない。

その成功の頂点、2010/11年ごろには、Firefoxは合衆国市場の1/4以上を占め、ヨーロッパでは1/3に近かった。しかし今日では、多くの地域でシェアは大きく低下している(ドイツ人だけは今でも、Firefoxをいちばん愛しているが)。その数字は情報源によってまちまちだが、大勢はどこでも同じだ。Mozillaのブラウザには、明るい未来が見えない。

GoogleのChromeは、Firefoxの開発が低迷したような時期にローンチした。ぼくが初めてChromeを立ち上げたのは2008年だが、その速さには仰天した。当時のぼくは長年Firefoxを使っていたが、Chromeは初期のベータの段階ですら、Firefoxに優(まさ)っていた。そしてその後は多くが変わり、今では、ことスピードに関してはFirefoxはChromeとほぼ肩を並べている。Firefoxが上、という結果を出しているベンチマークもある。でも当時のFirefoxにはすきがあり、そしてChromeはそのすきを突いて伸びた。

デスクトップでFirefoxが今後大きく伸びることはないだろうし、Mozillaはモバイルでもぱっとしない。Appleのモバイルプラットホームはその初期にサードパーティのブラウザエンジンを受け入れなかったし、その後販売台数を大きく伸ばしたAndroidでもFirefoxはあまり食い込めなかった。そして最近の数年間では、Mozillaは独自のプラットホームを立ち上げて地歩を稼ごうとした。途上国向けの安価なスマートフォンを提供したことは賞賛に値するが、でも今のところは二つのとても小さな市場で成功しているだけだ。しかもAndroid機がどんどん安くなっているから、これらの市場を足がかりにして伸びることも難しい。

多くの点でFirefoxのチームは、イメージの戦いを強いられているようだ。誰かに、なぜFirefoxを使わないのかと問うと、“遅すぎる”という答が返ってくるだろう。それは、事実ではなくてイメージだ。MicrosoftがIEで苦労しているように、Mozillaは同社のブラウザが実際には優れていることを、人びとに説得しなければならない。Microsoftと違うのは、潤沢なマーケティング予算がないことだ。MicrosoftのIEキャンペーンが、実際に効果を上げたとも思えないけど。

Mozillaは来月から、合衆国では検索に、新たにパートナーしたYahooを使うようになる。今のYahooは数年前のような死に体の企業ではないが、検索に関してはそれほど強力ではない。この契約により、Yahooで検索する人がやや増えるかもしれないが、デフォルトの検索エンジンがYahooであることは、一般消費者がそのブラウザを使う動機にはなりえない。

以上はすべて、Mozillaから見れば大きなお世話かもしれない。同社はWebを日に日により良い場所にしていくことを使命とする、非営利団体だ。たしかに、MozillaとMozillaの前身がいろいろやってくれたことによって、Webはすばらしい環境になった。でも、そのメインのプロダクトの、影が薄くなっていくとき、どこから新たな力を獲得できるのか? マーケットシェアが大きければ、リーダーとしての影響力も強い。しかしシェアが10%を切ったら、これまでのようにリーダーシップを発揮することは難しくなり、むしろ、マイナー勢力として無視されるおそれが大きくなるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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