Firefox 29: 完全な新デザインによる大型アップデート, Firefox Accountsで初のクラウド統合化

Mozillaが久々に、Firefoxの大型アップデートをリリースする。すなわち、ほぼ2年前から取り組んでいた新しいUIデザイン、通称Australisが、いよいよFirefoxの安定バージョンFirefox 29として登場するのだ。

初めてロードした人の多くが、たぶん、やや混乱するだろう。これは、Firefoxが数年前に短いアップデートサイクルに切り替えてから以降の、もっともラジカルなデザイン変更だ。外見的には、以前のFirefoxの面影は少なくて、むしろChromeに似ている。Chromeと同じように、右上の三本バーのアイコンが操作メニューで(上図)、タブのコーナーは円い。ただし、最近のブラウザ国の流行に頑固に逆らって、検索フォームは別個にある。

MozillaのFirefox担当VP Johnathan Nightingaleは、“新デザインのねらいは今のユーザのWebとの関わり方に合わせたデザインにすること”、と語っていた。チームは一年前にAustralisによる新デザインを初めて一般公開してから以降、ユーザインタフェイスの改良とバグフィクスを約1300件行ってきた。

Chromeとの類似に気づいたユーザの一部は反感をおぼえるかもしれないが、でもNightingaleはそれほど気にしていないようだ。“単純化はGoogleだけの専売特許じゃないからね。Chromeと違うやり方をしてるところは、山ほどあるよ”、と彼は言っている。

新デザインは、単なるユーザインタフェイスだけでなく、ブラウザ本体に関わる部分も多い。ユーザが自分のWeb閲覧体験を完全にカスタマイズできること、もそのねらいの一つだ。“中核的な部分以外では、ブラウザの使い方が一人一人違うようになるだろう”、と彼は言う。たとえば、バックボタンをまったく使わずに、キーボードショートカットですませるユーザがいるかもしれない。

自由にカスタマイズできるブラウザであること、それはこのリリースの重要な特徴の一つだ。Firefoxはこれまでもけっこう、カスタマイズの幅は大きかったけど、でもそれらは一種の“隠れ機能”になっていて、ひま人のユーザがメニュー階層のずっと奥の方を探検したときに、やっと見つかるのだ。お仕事などで忙しい一般ユーザには、無縁だった。

今回の新デザインでは、”Customize”ボタンがつねにメニューの最前面にある。それをクリックするとブラウザはカスタマイズモードになり、Firefoxのユーザインタフェイス成分のほとんどすべてを、自分にとっていちばん使いやすいように編成できる。しかも作業のほとんどを、ドラッグ&ドロップで簡単に行える(上図)。

また、いろんなタイプのユーザに合わせようとする努力の一環として、ユーザが今セレクトしていないタブを、目立たないようにできる。それらは背景に溶け込んでしまうから、いつも大量のタブを開く使い方をするユーザは、今必要なタブだけに集中できる。

ブックマーキングのやり方も改良されて、ページをスターすると、これまでのFirefoxとはがらっと変わってスター(星印)のアニメーションが現れ、そのアニメがブックマークリストのボタンに落ちて、ブックマークの編集ができるようになる*。〔*: 文章では分かりにくいが、実際にやってみると分かる!!〕

このアップデートの一環としてsyncにはMozillaのFirefox Accountsが使われるため、設定やブックマークも複数のマシン間でsyncされる。これまでの、クラウドをまったく使わない古めかしいsync方法と違って、これからはMozillaのオンラインサービスが活躍する(下図)。Nightingaleによると、これまではsyncの存在すら知らないユーザが多かった、という。あることを知ってるユーザでも、使い方が面倒なので使わない人が多かった。今度のFirefox Accountsというサービスは、ランダムなコードではなく、ふつうにメールアドレスとパスワードを使う。

Nightingaleによると、チームはすでに、Firefox Accountsをsync以外の機能でも利用することを検討している。そしてもちろんそれは、Firefox OSには最初から深く統合され、また今日からはFirefox on Androidでも使えるようになる。

これまで、とても短い間隔でFirefoxをアップデートしていたMozillaが、新デザインのリリースに手間取ったのはなぜか? これまでの2年近く、いろんな試行錯誤をやっていた。Nightingaleの説明によると、初期のデザインはほとんどがブラウザ本体に直書き(ハードコード, hardcoded)されていて、しかしそれらのすべてを、カスタマイズ可能に変えるためのコードの書き直しが、たいへんな作業だった、という。もちろん、コードを書くだけでなく、それらのテストもある。ユーザがまごつくような部分を残したまま、アップデートをリリースすることはできないのだ。

Mozillaは、同社の歴史の中でも、とくにおもしろい段階を経験したようだ。これまで、モバイルへの移行を急ピッチで進めてきたが、今日のリリースは同社のもっとも重要な道程の一つだった。しかもそれらの努力の多くが、Brendan Eichの短命CEO事件*の影に隠れてしまった。本日のリリースはMozillaを再び本来のミッションとプロダクトの軌道に復帰させるだろうけど、しかしまた同時に、多くの議論を呼びそうなリリースであることも確かだ。〔*: CEOになったばかりのEichが舌禍事件で下ろされたこと。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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