Foresite Capitalがヘルスケアスタートアップを対象とする約1033億円の投資ファンドを組成

ヘルスと生命科学を専門とする投資会社のForesite Capital(フォレサイトキャピタル)がLPからのコミットメントで計9億6900万ドル(約1033億円)という、同社にとって5番目となる新たな資金を調達した。これは同社最大のファンドであり、創業者でCEOのJim Tananbaum(ジム・タナンバウム)博士によると元々の目標を超える申し込みがあったという。資金調達のプロセスはパンデミック初期にゆっくりと始まったが、2020年秋ごろから急速に活気を帯び、最終的には予想を超えたと同氏は筆者に語った。

この最新のファンドは、実際にはForesite Capital Fund VとForesite Capital Opportunity Fund Vの2つの投資ビークルから構成されるが、資金は既存のアプローチに沿って投資されると同氏はいう。対象はアーリーステージからレートステージ、その中間にある会社まで含まれる。Foresiteのアプローチは企業を創業から(同社は社内にインキュベーターも抱えている)上場まで誘導し、そして上場後も面倒をみるというもので、これによって同社はユニークな位置づけとなっている。しかしForesiteはアーリーステージで見逃し、後に目についたスタートアップへの投資にもかなり関心がある、と同氏は述べた。

画像クレジット:Foresite Capital

「当社は数多くのヘッジファンドと競合する後期に参加し、有益でユニークなものを提供することもできます。なぜなら、当社が会社を立ち上げるのに使った付加価値のあるあらゆるリソースを持っているからです」とタナンバウム氏は話した。「ですので、レーターステージのディールでの競争で当社には優位性があります。そして資本市場において高度に機能できるという長所によってアーリーステージのディールでも競争上の優位性を持っています」。

同氏によると、Foresiteの他のアドバンテージは従来型のテック事業メカニクスとバイオテックが交差するところに長らく注力してきたことだ。この2つの間にあるギャップは狭まり続けていて、そうしたアプローチは近年特に成果をあげている。

「テクノロジー、そしてツールやデータサイエンス、機械学習、バイオテクノロジー、生物学、遺伝学、そうしたものが1カ所に集まるだろうと揺るぎない確信を持っていました」とタナンバウム氏は筆者に語った。「起業家のためにテックとバイオテックどちらの言語も本当に話すことができ、多様な人々をいかにしてまとめるかということを知っている組織はありませんでした。だからこそ、当社はそこに特化しており、テックオタクがバイオテックオタクに、そしてバイオテックオタクがテックオタクに話せるよう、多くのリソース、多くのクロスリンガルのリソースを持っています」。

ForesiteはこのアプローチをForesite Labsの立ち上げという会社のフォーメーションにも適用した。Foresite Labsは、スタートアップ起業の可能な限り早いステージで経験を生かすために2019年10月に設立されたインキュベーションプラットフォームだ。Alphabet(アルファベット)のヘルスサイエンス企業Verilyの共同創業者で最高科学責任者だったVik Bajaj(ヴィク・バジャジ)博士によって運営されている。

「過去数十年に、イノベーションサイクルはどんどん早くなってきました」とタナンバウム氏は話した。「ですので、公に本当に大きな勝利を収めている人々は『この真に大きな勝利はイノベーションと品質のサイエンスによってもたらされている。だから品質のサイエンスのもう少し上流の部門にいこう』とどこかの時点で話します」。

これは、テクノロジー全般の改善に支えられてヘルスケアプロダクトの開発サイクルがどんどん短くなっているのと相まっている、と同氏は付け加えた。同氏がForesiteを2011年に始めたとき、ヘルスケア投資のリターンの計画対象期間はかなり長く、ベンチャーエコノミクスの許容範囲を超えるものだった。しかしながら今では、ファンダメンタルな科学的進歩の場合でも一般的なテックスタートアップエコシステムにあるようなものにだいぶ近づいている。

Relay TherapeuticsのオフィスマネジャーStephanie Chandler(ステファニー・チャンドラー)氏が自社開発の新型コロナウイルス感染症検査の扱い方を新型コロナ検査室でデモンストレーションしているところ。2020年12月1日、マサチューセッツ州ケンブリッジ。がん治療開発会社である同社は手荷物部屋を従業員が週に1回検査を受ける部屋に変えた。定期的な検査導入の結果、100人超の従業員がオフィスに戻ってきた。RelayはForesiteのポートフォリオにある企業だ(画像クレジット:Jessica Rinaldi/The Boston Globe/Getty Images)

「基本的に、テック企業を見るのと同じようにバイオテックに目を向けている人々がいます。すぐには売上高にはつながらないかもしれないが、追って機能する中心となるマテリアルを与えるかもしれない浸透速度やその他のものについて、バイオテックに適用されるテックメトリックスがあります」

全体として、Foresiteの投資テーマは、臨床ステージの治療、自動化とデータ生成、そしてタナンバウム氏がいうところの「個人に合わせたケア」の3つのエリアの企業に出資することにフォーカスしている。これら3つはすべてテックに対応したヘルスケアのあるべき状態における連続体の一部で、究極的には「個人レベルで、自身の体質が病気になりそうな傾向にあることを理解できるようにする世界」となる。それはこの手の個人に合わせたケアが毎日のコンシューマーエクスペリエンスとなる、トランスフォーメーションだとタナンバウム氏は暗示した。以前スペシャリストの機能と能力だったテックが、一般の人々が広く利用できるようにしたのと同じだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Foresite Capital資金調達

画像クレジット:Luis Alvarez / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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