ForgeRockがアイデンティティーおよびアクセス管理事業の拡大にともないIPO申請

ForgeRock(フォージロック)は米国時8月24日、米証券取引委員会(SEC)にフォームS-1を提出し、IPOに向けて次のステップを踏み出した。

同社は想定株価を提示しなかった。同社の株式はニューヨーク証券取引所でシンボル「FORG」として取引される。Bloomberg(ブルームバーグ)によると、このIPOはMorgan StanleyとJ.P. Morgan Chase & Co.がリードしており、同社の評価額は40億ドル(約4400億円)に上る。これは、PitchBookにある、2020年に行った前回のラウンド後のポストマネーの価値である7億3000万ドル(約803億円)を大幅に上回る。

あらゆる規模の組織に対するサイバーセキュリティ攻撃が増え続ける中、ユーザーのアイデンティティーを安全に管理する必要性が高まっている。サンフランシスコに拠点を置くForgeRockは、これまで複数のラウンドで2億3300万ドル(約256億円)の資金を調達している。同社の最後のラウンドは、2020年4月に発表された9350万ドル(約103億円)のシリーズEで、Accenture Venturesと並んでRiverwood Capitalがリードした。当時、CEOのFran Rosch(フラン・ロシュ)氏は、このラウンドがIPO前の最後のラウンドになるだろうとTechCrunchに語っていた。これは2017年9月に同社が8800万ドル(約97億円)のシリーズDを実施した後に、前CEOのMike Ellis(マイク・エリス)氏が語ったことでもある。

ここ数年、同社のIPOのタイミングははっきりしていなかったが、同社の成長は良い軌道に乗っていた。同社はS-1で、6月30日時点での年間経常収益(ARR)が1億5500万ドル(約171億円)、前年比で30%の成長だったと報告した。

収益が増加する一方で、損失は縮小している。純損失は2000万ドル(約22億円)と、前期の3600万ドル(約39億円)から減少していた。同社は、世界全体で実現可能なIDサービスの市場は710 億ドル(約7兆8100億円)規模になると推定しており、成長の余地は大きいと考えている。

ForgeRockが対峙する多くの競合他社の中には、2017年に上場し、その後数年間で成長を続けているOktaがある。Oktaは3月、クラウドアイデンティティーのスタートアップであるAuth0を65億ドル(約7000億円)で買収し一部を驚かせた。また、2019年に上場したPing Identityも成長しており、8月4日には、6月30日までの四半期でARRが2億7960万ドル(約308億円)に達し、前年同期比で19%増加した。2018年にCisco(シスコ)に23億5000万ドル(約2585億円)で買収されたDuo Securityなど、この分野ではここ数年、大きなイグジットが続いた。

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「ForgeRockは優れたアクセス管理ツールを持っており、顧客のアイデンティティーとアクセス管理(CIAM)において強力なプレイヤーであり続けています」と、Gartner(ガートナー)のシニアリサーチディレクターであるMichael Kelley(マイケル・ケリー)氏はコメントした。

ケリー氏によると、ForgeRockは2020年に中核となるアクセス管理サービスのほとんどをSaaS型に変更し、すでにアクセス管理をSaaS型で提供している他の市場に追いついたという。また、2020年はアイデンティティー・ガバナンスの分野にも進出し、まったく新しいアイデンティティ・ガバナンス・アドミニストレーション(IGA)製品を発表した。

「ForgeRockが提供している製品の中でも特に興味深いのは、ForgeRock Treesです。これは、顧客のために複雑な認証・認可のプロセスを構築するノーコードまたはローコードのオーケストレーションツールで、CIAM市場では特に有用です」とケリー氏は付け加えた。

ForgeRockは2010年創業だが、そのルーツは、2005年にSun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)が立ち上げたOpenSSOと呼ばれるオープンソースのシングルサインオンプロジェクトにまで遡る。2010年初頭にOracle(オラクル)がSun Microsystemsを買収した際、同社の多くのオープンソースの取り組みが放置されたため、Sunの元従業員がForgeRockを創業した。

ForgeRockはこの10年間で、単にシングルサインオンを提供するだけでなく、コンシューマー、エンタープライズ、IoTのユースケースに対応するアイデンティティープラットフォームを提供するまでに大きく拡大した。現在、同社のプラットフォームは、アイデンティティーとアクセス管理に加えて、アイデンティティーガバナンスも扱っている。

同社がS-1でアピールしているのは拡張性の高さであり、そのプラットフォームは、顧客ごとに1秒間に6万件以上のユーザーベースのアクセストランザクションを処理できるという。

「2021年6月30日時点で、1億件以上のライセンスIDを持つ顧客が4社ありました」と同社はS-1で述べている。「大口顧客の複雑な環境におけるミッションクリティカルなニーズに対応する当社の能力が、大口顧客の基盤を拡大し、またそれぞれの顧客の中でも拡大することを可能にします」。

画像クレジット:LeoWolfert / Getty Images

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(文:Sean Michael Kerner、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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