Fractionalは友人(あるいは見知らぬ人)と一緒に不動産投資を行えるプラットフォーム

後払い決済のフィンテック企業であるAffirm(アファーム)で同僚だったStella Han(ステラ・ハン)氏とCarlos Treviño(カルロス・トレビーニョ)氏は、不動産業を営む家庭で育ったという共通のバックグラウンドで意気投合した。そこでAffirmの「自分のペースで支払う」というミッションと、不動産を所有することにともなう時間的な負担やコストの高さという実体験がぶつかり合い、その軋轢からFractional(フラクショナル)のアイデアが生まれた。

Fractionalは、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業で、不動産の所有をより身近なものにしたいと考えている。Y Combinator(Yコンビネータ)2021年冬のバッチに参加した同社のプラットフォームは、友人や見知らぬ人と投資用不動産を共同所有することを可能にするというものだ。これは不動産を探す際のロジスティックな問題を解決するとともに、小額の小切手を集合体に預けて、その集合体が不動産に投資するという方法によって、経済的な障壁を取り除くことができる。

このビジョンを掲げたベータ版には400人以上のユーザーが参加し、95件の不動産に共同投資を行った。そして会社には数百万ドル(数億円)の初期資金をもたらすことになった。Fractionalは先日、3000万ドル(約34億円)の評価額で総額550万ドル(約6億2000万円)の資金調達を実施したと発表した。同社のシードラウンドはCRVが主導したが、Y Combinator、Will Smith(ウィル・スミス)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Unusual Ventures(アンユージュアル・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダース・キャピタル)、On Deck(オン・デック)、Contrary Capital(コントラリー・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)が参加した。

Fractionalは、住宅所有のプロセスを3つの主要部分に分けている。まず最初に、共同所有者をマッチングするか、友人たちのグループに参加してもらって、引受プロセスを開始する。これには共同創業者のAffirmでの経験が生かされている。次に、法律や金融関連のソフトウェアサービスを通じて、不動産の購入を支援する。そして最後に、不動産管理会社やその他のサービスと提携して、共同所有する家屋が良好な状態を保てるようにする(新たに共同所有者となった人々には、時間的負担が掛からない)。

確かに、Fractionalは不動産を所有する際の経済的な負担を軽減してくれるが、友人同士でビジネスを始めることは、人間関係に大きなプレッシャーを与えることになるため、敬遠されるかもしれない。もし、その中の1人が生活的事情から先に売却したくなったらどうするか? あるいは、誰かがキッチンのアップグレードを拒否したらどうする?

Fractionalの共同創業者たちは、自分たちのバックグラウンドから、不動産業界でサービスとしてのアクセスの提供を拡大することは、他に類を見ないほど複雑であることを知っていた。そこで、ハン氏とトレビーニョ氏は、このプロセスをより深く理解するために、実際に資金を出し合ってメキシコに土地を購入することにした。トレビーニョ氏の家族がメキシコで建設業を営んでいたこともあり、2人は市場に出回らない好条件の土地を見つけ、最終的にはその土地に店舗を建てることができた。しかし、ハン氏は「手続きは非常にスムーズというわけにはいかなかった」と振り返り、手続きの仕組みを理解するために1時間750ドル(約8万5000円)ほどの弁護士費用を支払わなければならなかったと語る。

「私たちは弁護士を雇わなければなりませんでしたが、それは私たちが2人でどのように意思決定を行い、どのように対立を解決するかということの、良い実例をきちんと作っておきたかったからです」。

Fractionalの共同創業者ステラ・ハン氏とカルロス・トレビーニョ氏(画像クレジット:Fractional)

CRVのジェネラルパートナーであるSaar Gur(ザール・グール)氏は、Fractionalのソーシャルネットワーキング機能が「新しい投資家と経験豊富な投資家が共生する環境」であることが、同社の特徴的な要素の1つであると考えているという。「また、これによってFractionalは、実際の取引に留まらず、プラットフォーム上で一定のエンゲージメントを促進でき、積極的な有料マーケティングを使わず、有機的な口コミを通して成長を勢いづけることができます」と、グール氏は声明で述べている。

NFT(非代替性トークン)購入やプライベート・エクイティ・ファンドなどのオルタナティブ投資の台頭は、さらなる採用のきっかけとなるかもしれない。消費者は、伝統的な公開株式からポートフォリオを分散させるという考え方に慣れてきている。Fractionalは、世の中でよく知られている資産クラスの1つである不動産を活用したプラットフォームだ。

Fractionalのエンジェル投資家であるNot Boring Capital(ノット・ボーリング・キャピタル)のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏は、Fractionalについて、拡張性が高くて利益率の高いビジネスを、一般的には拡張性が低くて利益率の低いビジネスにもたらすと考えている。投資家であり作家でもあるマコーミック氏は、TechCrunchに次のように語った。「私が最も感銘を受けたのは、家を買って改築してからそれを売ったり、あるいは資産を買って人々に投資してもらうといったことを必要とする、非常に資産偏重の業界において、Fractionalは純粋なソフトウェアによるアプローチを採り、プロセスの容易さを妥協せず、しかも人々に家を所有する実感を与えることです」。

画像クレジット:Fractional

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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