FTCがビッグテックの聖域「不法な修理制限」の調査と政策立案を開始

スマートフォンやその他の消費者製品が機能を増していくにつれて、それらはますます修理しづらいものになっていく。その不名誉な集団のトップにいるのがApple(アップル)だ。FTCもこの点に留意し、同機関がこの問題に関して手ぬるかったことを認めているが、しかし今後は、消費者が自分の所有物を修理、改造、および再利用するやり方に対する企業の違法な制限をより重視していく、と言っている。

現在のデバイスは、容易な修理や改造への配慮なく作られていることが多く、かつては定番だったRAMの増設や電池交換などのアップグレードさえできない製品もある。Appleのような企業は、ある部分に関してはハードウェアを長期にサポートしていることが多いが、ただし、たとえば画面の破損に対応するとはいっても、その修理をしてもよいのは、メーカー自身に限られている。

それは多くの点で問題だ。iFixitの創業者で修理する権利の活動家であるKyle Wiens(カイル・ウィーンズ)氏は、活動声明を誇らしげにブログに載せるだけでなく、この問題に関して長年、一貫して闘ってきた。FTCはこの問題に関するコメントを2019年に募集し、数カ月前に報告書を発行した。そして今回発表したのは政策声明だ。これらはおそらく新委員長Lina Khan(リナ・カーン)氏の、ビッグテック企業の姿勢を正すためなら何でもやる、という方針の表れだろう。

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全会一致で可決された政策声明の骨子は、修理を意図的に制限する慣行は重大な結果を招きかねないとする所見だ。被害が及ぶのは例えばかつては簡単な修理で済み、今でもそうであるべき故障の修復に対して、お金のない人でも一律に払わなければならないアップル税が、そんな問題の1つの例だ。

修理の制限に関する委員会の報告書は、これらの問題を数多く探究および議論して、修理の制限が家族や企業にもたらしている苦難を記述している。委員会が懸念するのは、この重責を負担する者が有色や低所得に代表される、恵まれない人びとのコミュニティであることである。テクノロジーへの依存がかつてなく大きくなっている消費者社会においては、パンデミックがこれらの負の効果をさらに激化している。

不法な修理制約は長年、委員会が優先する執行事項ではなかったが、委員会はこのたび、これらの慣行と闘うために、より多くの執行原資を投ずることになった。したがって今回委員会は、関連法に基づいて、不法な修理制限に対する調査を優先する。

そして声明は、4つの基本点を挙げている。まずそれは、不法で問題ある修理制限と感取されるものを消費者やその他の公共団体が報告し、その性格を明らかにする必要性を、改めて繰り返している。FTC自身が自発的に企業に出向いて調査するのではなく、Facebookによるユーザーデータの誤用の場合のように、当事者の苦情から調査などが始まる。

第2は、意外にも反トラストとの関係だ。FTCによると、修理制約が、消費者を特定の排他的なデザインに束縛する独占的な慣行の一部ではないか、検討する必要がある。それには、消費者による自由なアップグレードを拒否したり、ストレージやRAMの増設で法外な料金を請求したり、競争がありえないほどの設計やデザインにしてしまうなどの慣行が関与している。あるいはまた、ねじ1つ取り外しただけで保証対象外にされたり、デバイスをサードパーティの修理に持ち込むことを禁じたりすることも、この問題の関連項だ。もちろんこれらに関しては、企業の独占状態や市場力の確立との関係が立証されなければならない。それは従来FTCにとって、困難な課題だった。

第3に、商行為に対するFTCの通常の規制としては、修理制約が「不公正な行為ないし慣行」であるかを評価する。それは、独占とは特に関係なく、範囲が広くて応じることも容易な要求だ。「オープン・スタンダード」が人に誤った印象を与えることを主張するのに、独占は必要ない。あるいは、サードパーティアプリや周辺機器の動作を遅くするための隠された設定がある、という主張に対しても、独占を持ち出すことはない。

委員会が言及している最後の4つ目の項目は、新しい規制や法律を施行するために必要な州との協力だ。それは、2020年マサチューセッツ州で成立した先駆的な法律「修理権法」に言及しているのだろう。今後の失敗も成功もすべて考慮の対象となり、国と州の政策立案者らが、互いを比較しあうことになる。

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こういう動きは前にもあったが、でも、いちばんわかりやすいのが今回だろう。これまでのテクノロジー企業は壁に書かれた落書きを読まされ、独立の修理プログラムの拡張みたいなことをやってきたが、しかし今回のアクションは、この問題に対するFTCの強硬路線が期待されている中で作成された政策声明だ。

FTCはここで、手の内をすべて明かしてはいない。しかし、関連する企業がこれまでのような運を信じて卓につく気なら、お相手しましょうと言っている。今後委員会は、消費者の苦情の収集と消化を開始し、修理の状況がよく分かってくれば、その手の内ももっと具体的になるだろう。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:FTC修理する権利

画像クレジット:boonchai wedmakawand/Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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