fukuがライフサイエンス分野の研究支援サービス「Sophiscope」のオープンβ版の提供を開始

ライフサイエンス分野の研究者を対象とした研究支援サービス「Sophiscope」(ソフィスコープ)を開発中のfukuは10月14日、総額4500万円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資よるもので、引受先はプライマルキャピタル(プライマルキャピタル2号投資事業有限責任組合)、ディープコア(DEEPCORE TOKYO1号投資事業有限責任組合)、島田達朗氏。今回調達した資金は、バイオ自然言語処理、機械学習エンジニアリングの体制強化に活用するとのこと。

資金調達の発表に合わせて、Sophiscopeオープンβ版の先行利用の応募受付も開始した。

開発中のサービス画面

ライフサイエンスの研究では、試薬の量や反応時間などの適切な実験条件を調整するための予備実験に多大な手間がかかるという問題がある。fukuが実施したユーザーヒアリングでは、本実験(論文に掲載するデータを取得する実験)までに平均3回以上の予備実験を実施していることがわかったそうだ。

さらに新たな研究テーマに取り組む際には、予備実験の前に平均27本の論文を調査し、実験条件の検討に平均86時間を要することが判明。原因が、膨大な先行研究から目的に合致した論文を見つけ出すの作業や、論文の内容が再現可能か検証する作業に時間や手間がかかることなどが原因と考えられている。

同社は、これらの情報の検索・比較・精査に多大な手間がかかっている現状を解消し、研究者が研究活動により集中できる環境を整えるための支援サービスとしてSophiscopeを開発。

Sophiscopeでは、膨大な量のライフサイエンス論文の内容を、自然言語処理と機械学習を用いて構造化することで、すべての実験条件を統一したフォーマットに整理できるのが特徴だ。複数の論文を横断的に比較することが可能になり、先行研究の検索と比較を広範囲かつ高速に実現できる。

オープンβ版では、がんの移植実験(Cell Line-Derived Xenograft, Patient-Derived Xenograft)に関して10万件の論文(3000ジャーナル)から2万件のプロトコルを抽出。抽出している実験条件とその種類数は以下のとおり(2020年10月14日現在)。

  • マウス:22種
  • がん:1370種
  • 細胞株:243種
  • 評価指標:7種

なお、オープンβ版では対象疾患をがんに絞っているが、今後は糖尿病、認知症、AIDSなどにも拡大するとのこと。実験条件の抽出を足がかりに、将来的には「論文の再現可能性の測定」「実験条件の提案」「実験結果のシミュレーション」などの機能を開発する計画もある。オフィシャルローンチは2021年上半期を予定している。

fuku代表の山田涼太氏は、東京大学入学後農学部獣医学専修に進学後、転学部を経て同大学工学部システム創成学科を卒業。学内のアントレプレナーシッププログラムを通じてプロジェクトを立ち上げる経験を積んだあと、2018年在学中にfuku株式会社を創業している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:fuku、Sophiscope、ライフサイエンス

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。