GEの小さなロボットたちは、ガスタービン検査の大きな課題を解決してくれるかもしれない

稼働中のガスタービンを検査することの困難さを想像して欲しい。高熱であるだけでなく、ブレードは常に回転している。このためカメラを内部に入れてタービンを観察することは極めて困難である。ニューヨークのニスカユナにあるGEグローバル研究センターのチームは、こうした課題を解決するためにデザインされる、小さな実験的ロボットたちに取り組んでいる。

従来エンジニアたちは、内部で回転するタービンブレードの様子を観察するために、タービンシェルに予め開けられた穴に、ボアスコープと呼ばれるカメラを差し込んでいた。しかしこの手法には多くの制限がある。「従来の方法では、各コンポーネントを検査するためにカメラを正しい方向に保ちながら、タービンのすべてのポイントにナビゲートしていくことは困難です」とGEグローバル研究センターのロボットエンジニア、Kori MacdonaldはTechCrunchに対して説明した。

さらに、エンジニアがブレードの保護コーティングの傷などの問題をボアスコープで特定できたとしても、タービンを開かずにそれを修理する方法はない。つまり、タービンを停止し、それを開けて、問題のブレードを見つけて修理を行うことを意味する。この作業には最大12時間ほどの時間が必要で、その間タービンは停止したままだ。

より良い方法を見つける

科学者たちとエンジニアたちのチームがこの問題に取り組み、その「タービン外科医(The Turbine Surgeon)」プロジェクトの一部として幾つかの創造的解決策を見出した。彼らはまず、回転中のブレード間を移動するように設計された小型で柔軟なロボットのプロトタイプを開発し、エンジニアたちが、タービン内部で起きていることのビューを、ボアスコープよりも包括的に取得できるようにした。

彼らが私たちに示したプロトタイプは、PCカードほどの大きさで、きわめて明るいLEDライトと様々な方向を向く小さな高解像度カメラを備えていた。オペレーターは、プロジェクトの一部として開発したソフトウェアを使用して、カメラを操作しながらロボットをブレード間で移動させることができる。このアプローチによって、さまざまな画像を取得し、特定のブレード上の問題をよりよく理解することができるようになる。

このデザインが可能になった理由の一部は、小さなチップで利用できるコンピューティングパワーを伴う各コンポーネントの小型化だ。より効率的なLEDライトと高解像度カメラを組み合わせることで、チームは電池を使い切ることなく完全な検査を行うことができるロボットを作り出すことができた。

問題の再考

携帯電話のアプリ上の仮想ジョイスティックで、Crawlerロボットを制御することができる。写真: Veanne Cao/TechCrunch

これによって、起きていることに関するよりよい観察を行なうことができるようになったが、それでもまだ軽微な修理に対してもタービンを止める必要性に直面していた。この問題を解決するため、さらに同様のロボットが作成されたが、これには小型修理キットが付属していた。ソフトウェアでロボットを制御している人は、遠隔で修理モジュールを開け、破損したコーティングの上にチューブから材料を射出し、修理キットに付属した小さなパドルを使ってそれを滑らかにすることができる。このアプローチによって、ブレード上のコーティングをより積極的にメンテナンスすることが可能になる。

「タービンケースを開かずにタービンのメンテナンスを行うツールを開発することもできます。時間を節約できることは勿論ですが、発見次第修理を行うことができることで、部品に対する更なる損傷を減らすことが可能になります。これは喩えて言えば、歯のエナメル質にちょっとした問題を発見した際に、後で大きな虫歯の穴を治療するのではなく、その場でフッ素化合物を使って治療してしまうことに似ています」とMacdonald氏は説明した。

彼らはまた私たちに、”The Crawler”(這うもの)と呼ばれる小さなロボットを見せた。これはタービンブレードに自身を固定するための磁石のタイヤをはいた、マッチボックスのトラックのようにみえる。他のタービン外科医ロボットたちと同様に、これもLEDライトとカメラを搭載している。しかし回転するタービンの間を移動するようにデザインされた他のロボットたちとは異なり、これはブレードの上を自走するようにデザインされている。

オペレータは、スマートフォンアプリ、または仮想ジョイスティックのように動作するラップトップのアプリケーションを介してロボットを制御し、ブレード 上を移動することができる。修理キットロボットの場合と同様に、このロボットにも修理や他の仕事を行なうためのモジュールを装着することが可能だ。

これらのロボットはまだ試作段階のものに過ぎず、私達にはまだその柔軟な検査や修理を行なうロボットの写真は撮影させてくれなかったが、このプロジェクトはタービン検査の課題に異なる視点を取り入れようとするものだ。ボアスコープは単にこれまでのやり方で、誰もそのアプローチに関して再考することを思いつかなかったのだ ― このチームが検査問題に新しい視点で取り組み始めるまでは。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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