Google、VR広告プロジェクトのAdvrを発表――社内インキュベーターArea 120から誕生

Goolgは本日(現地時間6/28)、社内インキュベーターArea 120の専用サイトをローンチし、あまり公に語られることのなかった同プログラムの情報を正式に公開した。それと同時に、これまでのArea 120のプロジェクトとは一味違う、VR広告に関する試みが始まった。Advrと呼ばれるこのプロジェクトでは、3D(もしくはVR)空間で動画を再生する、キューブ型の広告の実験が行われている。

Area 120は、将来的にスタンドアローンのプロダクトや既存プロダクトの追加機能になり得る新しいアイディアを試す場をつくるため、そして起業家精神あふれる人材を社内に留めるために昨年の3月にローンチした。

ちなみに、インキュベーター自体の設立からあまり時間が経っていないこともあり、製品化されたプロジェクトは未だ誕生していない。

既にAres 120関してさまざま報道がなされており、その名前からは勤務時間の20%を自分の好きなプロジェクト使えるという、かの有名な20%ルールとの関連性がうかがえる(といっても、20%ルールは社内制度というより考え方に近いものだったが)。

しかし、Area 120は20%ルールのコンセプトを体系化した正式なプログラムだ。

社内インキュベーター制度のある大手テック企業はGoogleだけではない。MicrosoftはGarageと呼ばれる独自のプログラムを運営しており、Appleも2012年にBlue Skyで同じようなことをしようとしていた。

その中でもGoogleのArea 120はアクセラレーターのように運営されており、社員は決められた期間中に同プログラムに応募し、一部の選ばれたチームだけが参加権を獲得できる。各”クラス”は15のチームから構成され、彼らは6か月間かけて自分たちのプロジェクトに取り組むことになる。さらに、Area 120に参加している社員は日中の仕事から離れ、自分たちのプロジェクトにだけ集中できる。

もしもプロジェクトがうまくいけば、そのチームは期間終了後も引き続き自分たちのプロダクトに取り組むことができ、プロジェクトがうまくいかなかった社員は以前とは違うポジションでGoogleに戻ることになる。

Area 120のローンチから既に2クラスがこのプログラムに参加し、現在Googleは3期生の募集を行っている。

GoogleにとってもArea 120は新しい試みであるため、今後どうなるかや、そもそもArea 120にお金をかけるだけの価値があるのかというのはまだわかっていない。しかし、どこかのチームのアイディアが将来的にGoogleのプロダクトとしてローンチされたり、既存のプロダクトに吸収されたりする可能性は大いにある。その一方で、ほとんどのアイディアは十分なトラクションを集めることができずに終わるだろう。これは普通のスタートアップと同じだ。

Area 120のプロジェクトの内容は全てが公開されるわけではない。中には社内でだけ使われるものや、招待された人だけがテスターになれるものもあり、これまでメディアに取り上げられたプロジェクトの数はごくわずかだ。公開された中でいえば、Uptimeがもっとも期待されている。今月正式に一般配信がスタートしたこのアプリでは、友だちと一緒にYouTube動画を視聴することができる。

その他にもArea 120で生まれたプロダクトには、パーソナルスタイリストアプリのTailorやコーディング学習アプリのGrasshopper、絵文字メッセンジャーのSupersonic(こちらはサービス終了予定)などがある。また、特定のユーザーだけが利用できるサービスとして、バングラデシュのジョブマッチングサービスや、これからローンチ予定のAppointmentsとよばれる予約ツールなども存在するが、これまでGoogleがArea 120のプロジェクトを公に宣伝したことはなかった。

しかしAdvrは少し違うようで、本日Googleはディベロッパー向けのブログに同プロジェクトの記事を公開した。

Advr:VR環境における動画広告

Advrの主な目的は、VR環境内で動画広告が成立するか、そして成立するならばどのような形式になるのか、というのを解明することだ。

そこでAdvrのチームは、VR環境内で動画を再生できるUnityのプラグインを開発した。先述のブログポストによれば、ディベロッパーはVR用の全く新しい広告商品や実装が難しいものを開発するのに前向きではないため、Advrのチームはシンプルな立方体のフォーマットにたどり着いたという。

Advrの動画広告では、ユーザーが立方体をタップしたり、数秒間見つめたりすると、プレイヤーが表示されるようになっており、ユーザーはこの段階で広告を視聴するか、プレイヤーを閉じるかを選ぶことができる。

また、Advrのチームは、GoogleのDaydreamとCardboard、SamsungのGear VRを皮切りに、この新しい広告をさまざまなVRプラットフォームに導入しようとしている。

公に発表したからといって、GoogleがAdvrをVR広告のあるべき姿と考えているわけではなく、今の時点ではまだアイディアの域を出ない。その一方で、Google以外にもAdobeを含む数社(OutlyerImmersvOmniVirtなど)がVR広告を開発している。もしも成功すれば、AdvrはGoogleの収益に直接影響を与えるようなArea 120発のプロジェクトの先例になるだろう。

既に同プロジェクトでは、いくつかのVRゲームデベロッパーと協力してテストが行われているが、パートナーの詳細については明かされなかった。本日より、他のVRディベロッパーも招待ベースでAdvrのSDKを使えるようになったので、興味のある人はこちらを確認してみてほしい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter