Googleとどう違う? エキサイト翻訳が15年目の機能拡張で専門用語を強化

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オンライン翻訳サービスの老舗「エキサイト翻訳」。2015年8月に15周年を迎えるこのサービスが機能拡充を実施した。8系統106分類の分野を選択することで、それぞれの専門用語にも対応した翻訳が可能になる(現状は英語のみ)。数個のボタンがついた程度で、以前と比べて正直見た目の大差はほとんどない。だがビジネスや専門分野の翻訳において使い勝手が大幅に向上しそうだ。

このサービスの詳細を伝える前に、まずは僕らが普段利用している翻訳サービスに大きく2つの種類があるという話をしたい。僕は今回紹介するエキサイト翻訳に加えて、Google翻訳を利用することが多い。正直どちらが優れているというよりかは、両者が得意とするコンテンツ、苦手とするコンテンツが結構違っていて、片方でうまく翻訳できない場合でも、もう片方ではうまく翻訳できる、なんてことが少なくないからだ。

それもそのはずで、(知っている人からすればとっくに知っている話だろうけど)この2つのサービス、同じ機械翻訳とはいえ翻訳エンジンの内容がまったく違うのだ。

統計ベース、ルールベース2つの翻訳エンジン

まずGoogle翻訳だが、これは「統計ベース」の翻訳エンジンを使用している。これは大量の対訳データを収集して、その統計データを元に翻訳の仕方を学習するというものだ。データがあればあるほど自然な表現にもなるし、訳文の精度も高まっていく。

ただし、統計ベースの翻訳エンジンでは、データの内容や分量によってそのクオリティが大きく変わる。基本的には日常会話や口語文、スラングなんかは得意なのだけれど、説明書や技術書、ビジネス文書なんかあまり得意ではないのだそう。統計ベースの翻訳サイトといえばGoogle翻訳のほか、Microsoft Translator(BingやFacebook、Twitterの自動翻訳など)

もう1つあるのが「ルールベース」の翻訳エンジンだ。これは文章の構文「主語」「述語」「目的語」といったように解析し、それぞれに対して辞書にある意味を当てはめて翻訳するというものだ。辞書をベースに翻訳をするため、一貫性がある翻訳結果を返すし、辞書を増やせば増やすだけ、幅広い業界の用語にも対応できるというわけだ。

もちろん弱点はある。文法的に正しくない文章であれば翻訳もうまくいかないし、辞書を使うので自然な翻訳文は苦手だ。だから日常会話なんかの翻訳はうまくいかない。これはエキサイト翻訳のほか、Yahoo!翻訳やLINE翻訳、Weblio翻訳といったポータル系の翻訳サービスに導入されている。

技術者や大学生のニーズに対応

この翻訳エンジンの違いを理解すると想像できるかも知れないが、エキサイト翻訳の利用者に多いのは、技術職や学生(特に大学生)。これはつまり専門書や仕様書、論文といった専門性の高い、ルールベースの翻訳エンジンの得意領域を多用するユーザーが多いということだ。そんなこともあって今回、専門用語辞書が追加されたのだそう。

この辞書の重要性が分かるのが多義語の処理。例えば「power」という単語はITや電気といった分野によっては「電源」を意味するが、「体力」だったり「支配力」だったりといろいろな意味を持っている。今回最適な分野を選択することで、こういった単語、文章もスマートに翻訳してくれるのだそうだ。

「retirement-accounting」というちょっと聞き覚えのない単語で実際に試してみよう。Google翻訳だとハイフンがそのまま訳されてしまって「退職-会計」となり、これまでのエキサイト翻訳だと「退職アカウンティング」とこちらもよく分からない言葉になる。それが新機能で「社会学系:金融」の辞書を選択すると「除却会計」となり、正しい「retirement」の解釈がなされることになる。ちなみにエキサイト メディアサービス本部ポータルメディア部の井上佳央里氏いわく、統計ベースとルールベースの翻訳サービスは、「競合として見るのではなく、用途によってどちらも使うのがおすすめ」とのこと。

このほかエキサイトでは、機械翻訳ではどうにもならない場合のために、500円(1文字6円程度)から人力で翻訳するというサービスも提供している。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。