GoogleとCoursera、機械学習の特別クラスをスタート――ITプロフェッショナルが実戦的能力を得られる

この数年、Googleと Courseraは共同でデベロッパーやITプロフェッショナル向けのオンライン学習コースを多数開催してきた。この中には機械学習の速習コースも含まれ、学習者に機械学習の基礎的知識を提供している。Google、Courseraはこれをベースとして機械学習特別クラスをCourseraでスタートさせる。新しい特別クラスは5つのコースからなり、実戦的能力の獲得に焦点を合わせている。

特別クラスは「Google CloudプラットフォームでTensorFlowを利用する機械学習」と名付けられ、学習者は現実の機械学習モデルの作成を体験する。これには環境の設定から始まって、データベースの構築、データのノイズ除去、TensorFlowによる分散機械学習モデル、モデルの精度向上のための、パラメーターの調整、各種のチューニングなどが含まれる。

Googleにおけるビッグデータと機械学習テクノロジー責任者、Lak Lakshmananは私の取材に対して「われわれのチームは学習者や企業から『〔オリジナルの機械学習コースは〕素晴らしいが、さらに突っ込んだ内容が欲しい』という要望が強いと聞いた。学習者は機械学習モデルの構築の基礎だけでなく、クラウド上で作動させる方法、データを供給するパイプラインの構築、チューニングの方法などモデルを現に運用して効果を上げるためのさまざまなノウハウを知りたいということだった」と語った。

Courseraのエンタープライズ開発担当バイス・プレジデント、Leah Belskyは、これに関連して、「こうした実際的な能力を学習者が身につけることは所属企業にとっても非常に価値がある」と説明した。

今やテクノロジーのあらゆる分野で機械学習の実戦的能力が求められている。新しい特別クラスのターゲットはこうした知識と技能を身に着けたいデベロッパーだ。機械学習の人材は払底しており、企業が外部から専門家をスカウトすることは不可能に近い。内部のデベロッパーに機械学習について学ばせる以外にない現状ではこのクラスへの企業の期待は大きい。

Lakshmananが語ったところでは、機械学習のユースケースは多岐にわたるものの、このクラスが重点を置くのは「日常業務を機械学習化する能力」だという。つまり既存のプロダクトの価値を機械学習によっていっそう高めることが目標だ。既存の課題の解決が主眼であるため、このコースは機械学習の最新理論をすでに学んだ大学新卒者にとっても有益だという。

Lakshmananによれば、こうしたクラスをスタートさせるのは数年前だったら不可能に近かっただろうという。専用GPUを備えた強力なハードウェアが用意できなければ意味のある機械学習の実験はできなかったからだ。しかし現在ではGPUにアクセスできる強力なクラウドプラットフォームが多数登場している。ことにGoogleのクラウドであれば機械学習のためのTensorFlow Unit(TPU)が利用でき、ハードルは大幅に下がった。

こうしたコースでは参加者はプログラミングに関してすでに一定の能力を持っていることを前提にしている。TensorFlowフレームワークの利用などにより機械学習の習得は以前よりずっと容易になったとはいえ上級分野であることには変わりない。「機械学習モデルの構築でPythonを学ぼう」というコースが登場するのはまだ先の話のようだ。

将来といえば、Lakshmananはすでに次のコースの構想を温めている。これは現在のコースの続編となるもので、非構造的データを取り扱う方法を学ぶ。これはまった異なるレベルのチャレンジになる。また現在の機械学習コースの内容を十分に身に着けている必要があるという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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