GoogleのArea 120がモバイルアプリ開発者のプライバシーコンプライアンス対応を支援するプロダクト「Checks」を発表

米国時間2月22日、Google(グーグル)内のあるチームが、モバイルアプリ開発者向けの新製品「Checks(チェックス)」を発表した。これは現在のようにアプリに対する規制やポリシーが急速に変化する状況の中で、AI技術を活用してアプリ内で起こりうるプライバシーやコンプライアンス上の問題を特定することができるというものだ。

Checksはフリーミアムなソリューションとして、AndroidおよびiOSのあらゆる規模のアプリ開発者に提供される。開発者はChecksを使うことで、自分のアプリを分析し、発見された問題に対処するための実用的な洞察を含むレポートを受け取ることができる。

Checksは、ジェネラル・マネージャーのFergus Hurley(ファーガス・ハーレー)氏と、法務リーダーのNia Castelly(ニア・カステリー)氏が共同で設立したプロジェクトで、Googleの社内インキュベーターであるArea 120(エリア120)内で、過去2年間にわたり開発を行ってきた。Checksのチームはこれまで、開発者の技術的課題に対処するAndroid Vitals(アンドロイド・ヴァイタルズ)などのツールを構築してきたが、AIを使ってプライバシーコンプライアンスの課題に対応するというアイデアも持っていた。

現代のアプリ開発者は、欧州のGDPR(一般データ保護規則)要件から、アプリストア自体が施行する新ルールまで、さまざまな新しい規制やポリシーに対応しなければならない。一方で、消費者はフリーソフトウェアを使用する際のトレードオフについても理解を深めており、アプリがどの程度まで自分のプライバシーを尊重しているか、自分のデータがどのようにアクセス、保存、共有されているかといったことを、知りたがるようになってきた。また、開発したアプリがすべてのルールを守っていても、その開発者が使用しているSDKがルールを守っていない場合や、SDKのデータ共有のあり方が時間の経過とともに変わる場合もあり、これも別のコンプライアンス上の課題となっている。

画像クレジット:Google

Checksは、アプリ開発者が現在よりも簡単に、コンプライアンスを達成できるようにすることを目的としている。開発者は自分のアプリを提出して、プライバシーコンプライアンス分析を受ける。この分析には、自動化されたレビューの他、一部のサービス面では人間によるレビューも行われる。

Checksの利用を開始するためには、まずAndroidアプリの開発者は、自分のGoogleアカウントでログインし、Google PlayアプリのIDを入力する。その後、いくつかの質問に答えてアクセスを確認する。Checksは、アプリのプライバシーポリシー、SDK情報、ネットワークトラフィックなど、複数の情報源をスキャンしてレポートを作成する。このソリューションでは、自然言語処理を活用してアプリのプライバシー開示情報をスキャンするという、先進的な手法も採用されている。スキャンが完了すると、開発者には、発見された問題についての明確で実用価値のある洞察と、リソースのリストを含むレポートが提示される。

無料版では、自分が開発しているアプリを、Google Playの新しい「データ・セーフティ・セクション」に合致させるために使用できる。有料版のCore(コア)、Premium(プレミアム)、Enterprise(エンタープライズ)は、プロの開発者や、iOS向けの開発も含む大規模な企業のニーズに合わせて設計されている。

物理デバイスと仮想デバイスの両方で分析を行うChecksの利用には、技術的要件や前提条件はない。

月額249ドル(約2万9000円)の「Core」では、GDPRやCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの規制に対するコンプライアンスモニタリングや、今後のコンプライアンス要件に関するプロアクティブな通知機能が追加される。月額499ドル(約5万7000円)の「Premium」ユーザーは、自分の開発したアプリ内で行われるデータ共有行為のモニタリングを自動化し、SDK、パーミッション、アプリでデータ共有が行われている場所などを把握することができる。5つ以上のアプリをてがける顧客向けの「Enterprise」はカスタム価格となっており、より頻繁に、高度で詳細なプライバシーチェックが受けられる。さらに人間のレビュー担当者を含むコンプライアンスレビューチームの力を借りたり、カスタマイズされた分析やテストフローなども利用できる。

なお、Checksは、生成したデータやレポートをGoogle Playチームと共有することはないと述べている

チームは数百人のアプリ開発者からフィードバックを集めてChecksを構築した後、40人(社)のアーリーアダプターと協力して、発表前に製品をテストした。テスターには、Headspace(ヘッドスペース)、Sesame Workshop(セサミ・ワークショップ)、StoryToys(ストーリー・トイズ)、Carb Manager(カーブ・マネージャー)、Homer(ホーマー)、Lose It(ルーズ・イット)などの企業が名を連ねている。

現在、Checksはより多くの人々が利用できるようになっている。興味のある開発者は、Checksのウェブサイトでオンラインフォームに記入して、早期アクセスに申し込むことができる。

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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