GoogleはPixel 4のカメラでハードと画像処理AI/MLを融合、写真の新しい水準を実現

Google(グーグル)が発表した新しいPixel 4に写真機能の強化だけでも大量のテクノロジーが投入されている。こGoogle Researchでカメラ開発の指揮をとってきたMark Levoy(マーク・レヴォイ)教授が登壇してこの点を詳しく解説してくれた。この記事では広角から望遠まで高解像度で撮影するスーパーハイブリッドズーム、HDRをライブでプレビューするテクノロジーを含め、カメラの新機能を紹介する。

被写体、照明、レンズ、ソフト

レヴォイ教授はフォトグラファーの間に以前から伝わる格言から説明を始めた。つまり良い写真と撮るために必要なのは、まず被写体、 次に照明、つぎにレンズ、カメラボディーの順序となる。教授は「我々はこの格言には多少の修正が必要だと気づいた。つまりカメラボディには処理ソフトを含めて考えねばならない」と語った。

Screen Shot 2019 10 15 at 10.59.55 AM

もちろんレンズは依然として重要であり、Pixel 4では現行広角レンズに加えて望遠レンズを加えた。レヴォイ氏は「通常望遠のほうが広角より役立つ」と指摘したが、これはApple(アップル)がiPhone 11 Proに超広角レンズを加えてカメラ3台のアレイを構成したことに対する批判だろう。

Google Pixel 4 Camera

このコンテキストで説明するなら、Googleの「コンピュテーショナルフォトグラフィー」というコンセプトはスマートフォンの筐体に収まる小さい撮像素子(貧弱な画像しか撮影できない場合が多い)に対して強力な処理を加えることによって驚くべき高品質の画像を生み出すテクノロジーといっていいだろう。

レヴォイ氏によればPiexl 4に搭載されているのは「ソフトウェアによって定義されたカメラ」だという。つまり常時複数の画像を撮影し、それらのデータをコンピュータがバックグラウンドで合成することによってユーザーに複雑な操作を要求せずに優れた最終画像を得る仕組みだ。

Screen Shot 2019 10 15 at 11.07.56 AM

Pixel 4でどこが新しくなったのか?

コンピュテーショナルフォトグラフィーにより、Pixel 4ではいくつかの重要な機能が利用できるようになった。ひとつはライブHDRプレビューとデュアル露出コントロールだ。これにより、ユーザーはリアルタイムでHDR(広ダイナミックレンジ)処理を適用した写真をプレビューすることができる。これまではHDR写真を撮影する前のプレビューは撮影後の実画像とかけ離れているのが普通だった。Pixel 4では画像の高輝度領域と低輝度領域をリアルタイムで常に別個に調整することが可能になった。ユーザーは作画意図によって被写体をシルエット化したり逆光でも明るく描写したりできる。

機械学習によるスマートホワイトバランス機能はて適切なホワイトバランスの取得という問題を扱う。 レヴォイ氏によれば、Googleは現行Pixel 3で夜景モードを導入したとき、低照度条件でホワイトバランスを得る方法を開発したという。 Pixel 4ではこの機能が強化され、夜景モードだけでなくあらゆる条件で作動するようになった。逆光などの困難な撮影条件ではホワイトバランスがオレンジやイエロー側に振れる現象が起きやすいが、スマート・ホワイトバランスは白いものは白く描写できる。

Screen Shot 2019 10 15 at 11.02.01 AM

新しいポートレート・モードでは背景に加えるボケなどをいっそう正確にコントロールできるようになった。これは2つの撮像素子から得られるデュアルピクセル画像を処理することで奥行き情報を得て人物と背景の距離差を検出し、人物のみを鮮明に描写する。これにより人物がかなり離れた場所にいても人物に焦点を合わせ、背景をやわらかくボケさせることが可能になったという。人物の描写で髪の毛の一筋一筋や毛皮の衣服などデジタル一眼でも撮影が難しい対象を鮮明に描写できる。

複数カメラの採用により、当然ながら夜景モードも根本的なアップデートを受けた。新しい星空モードを利用すれば夜空を撮影して星や月を見たままに近く描写できる。星空モードが提供する夜の空は非常に魅力的だ。このモードでは数分にわたって撮影を続けることができるが、星の動きの追跡も含めて合成処理は処理はコンピュテーショナルフォトグラフィーが行うのでユーザー側で煩瑣な設定をする必要はない。

google pixel 4 sample images

さらに…

GoogleはPixel 4はスマートフォンの小型センサーに内在するさまざまな限界を打ち破ったカメラだとしている。写真界における世界的な巨匠であるAnnie Leibovitz(アニー・リーボヴィッツ)氏との共同撮影プロジェクトを続行中だ。レイボヴィッツ氏も登壇し、Pixel 3とPixel 4で撮影した写真を何枚か披露した。ただしとりあえずインターネット記事にフィードされる写真と最終成果物の写真集の写真とはかなり違うだろう。


レヴォイ氏はPixel 4の撮影能力はハードウェアのリリース後もカメラソフトウェアのアップデートによって引き続き改良されていくと述べた。つまりPixel 4のカメラはまだ始まったばかりということだ。現行Pixel 3のカメラはスマートフォンとしてトップクラスだが、ステージで披露されたデモ写真を見ただけでもPixel 4の写真はこれを上回っていた。今後実機を手にしてAppleのiPhone 11のカメラと比較してみるのが楽しみだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook