Google CloudがIntelのベテランをカスタムチップ開発チームに招く

近年、本来半導体企業ではない大企業が自社独自のチップを開発するトレンドがある。米国時間3月22日、はGoogleが同社のカスタムチップ事業部門を率いる人物として、長年Intelに役員として在籍したUri Frank(ウーリー・フランク)氏を副社長に迎えた。

Googleのフェローでシステムインフラストラクチャ担当の副社長Amin Vahdat(アミン・ヴァーダット)氏は、この新規雇用を発表するブログ記事で次のように述べている。「クラウドインフラストラクチャーの未来は明るく、そしてそれは急速に変化している。私たちが世界中からのコンピューティングの需要に応え続けようと日々努力している中で、ウーリー・フランク氏をサーバー用チップの設計を担うエンジニアリング担当副社長として迎えることができたのは、とても喜ばしいことだ」。

フランク氏の雇用でGoogleが得るのは、チップ業界の経験豊富な執行役員だ。彼は20年ほどをIntelで過ごし、技術者から副社長にまで昇進して、2021年3月に同社を去るまでDesign Engineering Group(設計工学集団)を率いてきた。

フランク氏はGoogleの一員として、イスラエルにあるカスタムチップ部門を率いる。彼はLinkedInに発表した声明で、これはカスタムシリコンの開発で長年の履歴を有する企業に加わるという大きな一歩だ、と述べている。

「Googleは、世界最大で最も効率の良いコンピューティングシステムを設計し構築してきました。長年、カスタムチップはこの戦略の重要な一部でした。ここイスラエルでチームを育てていくことと、コンピュートインフラストラクチャーにおけるGoogleクラウドのイノベーションを加速することが、今から楽しみです」とフランク氏はいう。

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Googleのチップ内製の歴史は2015年にさかのぼり、そのとき同社は最初のTensorFlowチップを立ち上げた。2018年には動画処理用チップに進出してOpenTitanを加え、セキュリティを重視するチップを2019年にローンチした。

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フランク氏の仕事は、これまでの同社の経験をベースとする開発の継続であり、顧客やパートナーと協力して新しいカスタムチップのアーキテクチャーを作っていくだろう。Googleは、さまざまなベンダーからマザーボードを手に入れていくやり方から卒業して、独自の「system on a chip」すなわちSoCを作る方向へ向かおうとしている。それにより効率が大幅に向上する、と同社はいう。

「マザーボードの上に部品を集積するこれまでのやり方では、各部品が数インチずつ離れることになる。そこで私たちは『Systems on Chip(SoC)』に目を向け、複数の機能が1つの同じチップの上にあり、複数のチップが1つのパッケージに収まっているアーキテクチャーを目指した。つまり、SoCは新しいマザーボードだ」とヴァーダット氏は語る。

Googleは早期から「Build Your Own Chip(自分のチップは自分で作ろう)」運動を推進してきた。現在では、AmazonやFacebook、Apple、Microsoftといったその他の大企業も自分たち独自のニーズを満たし、ハードウェアとソフトウェアの関係をより精密にコントロールするために、チップの内製を始めている。

フランク氏の仕事は、Googleのカスタムチップチームを率いて、それを次の高いレベルへと引き上げることだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleSoC半導体

画像クレジット:zf L/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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