HPがゼロックスの買収提案を再度拒否するものの交渉の余地は残す

米国時間11月25日朝公表された書簡で、HPの取締役会はXerox(ゼロックス)の買収提案を「当社の評価が著しく過小」だと簡単に述べて拒絶した。ただし、今後の交渉の余地は残した。

HPが明確に述べたのは次のような点だ。つまり、HPは買い手を探しておらず、ゼロックスグループに入らなくても経営には問題ないとした。実際、買収を提案したのはゼロックスだが「白馬の騎士」を求めているのはむしろゼロックスのほうではないかという印象を受ける。

HPの時価総額は290億ドル(約3兆1600億円)以上なのに対してゼロックスの時価総額は85億ドル(約9260億円)弱だ。11月5日、21日に買収提案書をHPに送ったが、HPはどちらも拒否した。

本日朝に公開された最新の書簡でHPの取締役会は「我々はゼロックスがHPを著しく過小評価しているため提案を拒絶すると再度述べねばならない」として「提示額が過小であること、またたとえその提示額であってもゼロックスが支払いを行う能力があるか懸念を持っていることを表明した。

「これに加えて(この買収の申し出は)仮定が多く不確実性が大きい。たとえ提案に示された額であっても、ゼロックスがそれだけの資金を調達できるかは依然として不透明だ。仮に資金が調達できた場合でも、それによって同社は巨額の負債を抱えることとなり株価に悪影響を与えるだろう」。

またHPはゼロックスの買収交渉に望む姿勢にも不快感を示した。「ゼロックスは、適切な情報を提供せず攻撃的な表現と行動で自分に都合のいい買収を強制しようと意図していることは明白だ」。

ただしこうした強い言葉使いにもかかわらず、HPの取締役会は買収提案に対して完全にドアを閉ざすことはしなかった。書簡は「ただしHPは、提案のもつ意味合いをさらに研究し、ゼロックスのビジネスの経緯、現状についても急遽さらに調査する用意がある。ただし、ゼロックスの株価に大きな影響を与える同社の短期的ビジネスの状況に加えて、長期的な事業見通しに関連し依然大きな懸念がある」と述べている。

HPが懸念するゼロックスの財務状況だが、同社はこのところ四半期決算で収入目標を達成できないことが4回ないし5回続いた。時価総額は2018年6月以降の1年間に
102億ドルから92億ドルにダウンしている。ゼロックスではこの下降傾向が来年度まで継続すると予測している。

両社が今後合意することになるかどうか不明だが、条件さえ折り合えば、プリンター、複写機ビジネスを支配する両巨人が合併するのはメリットがあるに違いない。現状ではHPの立場が優位であり、一度や二度の提案で簡単に妥協するつもりはないようだ。下はHPの書簡の全文。


画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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