HTCの新しいCEOはスマートフォンの革新を怠っていたことを認めた

数カ月前のことだが、私たちはHTCの共同設立者でCEOのCher Wang(シェール・ワン、王雪紅)氏をTechCrunch Disruptのステージに招待した。しかし、人生がどうなるかはわからない。2週間前、同社はワン氏がその役職を辞任することを発表した。なお、その役職は、通信業界で長い経験を持つYves Maitres(イヴ・メイタース)氏によってすぐに引き継がれる。ありがたいことに、元Orangeの幹部だったメイタース氏も、先週のイベントのステージへの登壇を承諾してくれた。

メイタース氏は、OnePlusの共同創業者であるCarl Pei(カール・ペイ、裴宇)氏の直後に登壇した。両社のコントラストはこれ以上ないほどに際立っていた。創業6年という短い期間で、OnePlusは幅広い業界のスマートフォンのトレンドに逆らいながらも、安定した成長を遂げることに成功した。

一方HTCは、何年も苦しみ続けてきた。第2四半期には、この台湾のハードウェアメーカーは5期連続の四半期損失を計上した。7月には、スタッフの約4分の1を解雇している。それは急速な落ち込みだった。アナリストの数字によれば、2011年には同社は世界のスマートフォン販売の約11%を占めていた。だが現在、その数字は通常そうしたレポートの中で「その他」に分類されるようになっている。

このようなイベントでメイタース氏に話を聞くことは、外部から何年も新しい会社を観察してきた新任幹部としての洞察を知ることができる、貴重な機会である。このようなことから、彼はHTCの苦労についてさっぱりとした率直さで語った。

「HTCはスマートフォンのハードウェアの革新を中断していました」と彼は聴衆に語りかけた。「そして、Apple(アップル)やSamsung(サムスン)、そして最近ではHuawei(ファーウェイ)が、そのハードウェアへの投資に信じられないほどの労力をつぎ込んできました。だが私たちはそうしませんでした。なぜなら、私たちは仮想現実の革新に投資してきたからです。

私が若かったとき、誰かがこう言いました「間違っているときに正しいことをしてもそれは間違っているし、正しいときに間違えることは正しいことなのだ」と。私は、私たちが間違っているときに正しいことをしていたと思っています。なので私たちはそれを巻き返さなければなりません。タイミングを間違えたのです。タイミングを予測することは非常に難しいことです。HTCはタイミングという点でミスを犯しました。それは重大な間違いで、私たちはその代償をいま払っています。それでも私たちは革新、人材、そして貸借対照表という意味ではまだ多くの資産を抱えています。そして私は、タイミングの間違いから回復している途中だと思っています」。

ここで「タイミングの間違い」と言及されているのは主に、R&D資金の大部分をXR、主にVive部門を通じてVRに投じるとした同社の決定だ。メイタース氏は、HTCのXR製品がモバイルを追い越すのには、およそ5年かかると予測していると語った。

「それをより短くするために最善を尽くしますが、そのためにはお客様による採用がカギとなります」と彼は説明した。「人びとがどのようにテクノロジーをどのように採用していくのか。私たちは、それが絶対的に重要であることを知っています。そして最終的に私たちは、まったく新しくて珍しい、仮想的なものを扱う、目の前の人間たちを相手にすることになるのです」。

モバイル側では、メイタース氏は5Gが成長の主なボトルネックだと考えている。同社が最高に活躍できるのは発展途上国であるという意見に反して、彼はこの先のHTCの活動は「GDPの高い国」に焦点を当てた、より高級な携帯電話に向けたものになると述べた。

「競争は変化しています」と彼は言う。「私たちは皆、世界的な市場シェアが低下している状況に直面していて、顧客の方々はこの先最新のファーウェイの電話を持てないことに失望しています。HTCが今後数カ月で解決していくクラス最高のハードウェアと写真という観点から、どのようにお客様が望むものをご提供できるかが私たちの課題です」。

この先の数字はHTCの取締役会による決定に大きく依存するものの、メイタース氏自身は会社の収益性の回復に関しては楽観的な予測を続けている。

「私は本当に、キャリアが5Gを展開するやり方に、この先が左右されるだろうと考えています」と彼は言う。「ご存知のように、2020年が5Gの出発点になるでしょう。通常ネットワークの展開には2年かかります。なので2023年には広い範囲がカバーされることになるでしょう。これが、2025年が、おそらくはもっと早い時期が、転換点になるだろうと私が信じている理由です。キャリアの展開速度に依存しているのです」。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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