IAA MobilityでEV挑戦状を叩きつけるメルセデス・ベンツ

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、ドイツで開催されるIAA Mobility(IAAモビリティ)ショーに先立ち、初のAMGブランドの高性能EV、セダン、GクラスSUVコンセプトなど、多数の電気自動車(EV)を発表した。いずれも、2020年代の終わりまでにEV専業メーカーになる決意の一部である。
メルセデスはすでに完全電気自動車であるEQSの生産を開始している。これは、Sクラスの電気自動車版カウンターパートとなることを目的とした、先進的で洗練されたフラッグシップカーだ。IAA Mobilityでメルセデスは、次の大きなEV関連の動きを紹介することを目指している。

2021年の初めに、メルセデスは400億ユーロ(約5兆2100億円)に及ぶ完全電気自動車化計画を打ち出した。このことによって、会社をより緊密に上流から下流まで統合し、従業員を訓練し、製品に利用するために必要なバッテリーを確保することを目指している。この計画は、実際には、より多くのEVを生産して販売するという以前の目標をさらに拡大したものだ。メルセデスは2017年に、2022年までにラインナップ全体を電気化すると発表していた。これはガスハイブリッド、プラグインハイブリッド、またはバッテリー式電気自動車を意味している。そして先の7月には、その2022年までに現在車両を提供するすべてのセグメントで、バッテリー式電気自動車を提供すると発表した。

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メルセデスは、2025年には以降のすべての新車の基礎となる、3つの完全電動アーキテクチャを立ち上げることを目指している。MB.EAプラットフォームは中型から大型の乗用車に使用され、AMG.EAはメルセデスAMG車を支え、VAN.EAは電気乗用ミニバンと小型商用車専用のアーキテクチャだ。同社はすでに、MMAという名で知られる「電気ファースト」のコンパクトカーアーキテクチャを発表しており、2024年までには車両に搭載される予定だ。

メルセデスベンツの責任者であるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は、新しいEQEの詳細を発表する際に「特にメルセデスが属する高級車セグメントでは、EVシフトが加速しています」と語った。「それこそが『EVファースト』から『EVオンリー』へと加速した理由です。2022年には、サービスを提供しているすべてのセグメントにバッテリー電気オプションを提供します。そして2025年までには、製造するすべてのモデルに少なくとも1つの電気式代替製品を提供します」。

ケレニウス氏は、全電気自動車への道を進むメルセデスは、2030年まで市場の状況が許す限り、メルセデス車を2台売るごとに1台のEVを販売することを目指していると語った。

メルセデスベンツEQB

画像クレジット:メルセデスベンツ

メルセデスが2021年初めに明らかにしたこの車種は、同社のイベントに登場した。そして今回、それらが2022年のある時期に米国で発売されることを含め、さらにいくつかの詳細が共有された。2021年の終わりにはヨーロッパと中国で発売される予定だ。

EQBは、ハンガリーのケチケメート工場から送り出される最初の電気自動車となる。中国市場向けの車両は北京で生産されている最中だ。米国に登場するEQBには、2つのバリエーションがある。最初に登場するコンパクトSUVは168 kW(255馬力)のEQB 300 4MATICだ。その次に215 kW(288馬力)のEQB 350 4MATICが発売される。前者は、390ポンドフィート(528.77ニュートンメートル)のトルクを持つ。どちらの場合も、航続距離は約419kmとなる。これは、米国時間9月5日に明らかにされた他の車種の航続距離よりも少し短い。メルセデスは、前輪駆動モデルと並んで、長距離バージョンも続いて提供される予定だという。

また電動パワートレイン(動力伝達機構)は、電動モーター、ディファレンシャル付き固定比トランスミッション、冷却システム、パワーエレクトロニクスで構成されるコンパクトな統合ユニットだ。前輪車軸には非同期モーターを採用している。

コンパクトなEQBは普段は5人乗りだが、大家族のために追加のスペースが必要な場合は、7人乗りにすることができる。

メルセデスベンツEQE350

画像クレジット:メルセデスベンツ

EQEセダンは、フラッグシップEQSを望んでいるものの、それを買う余裕がない人たちからの要望に応えるモデルだ。このセダンは、288馬力と391ポンドフィート(530ニュートンメートル)のトルクを発生する単一の電気モーターを備えている。気にしている人たちのために付け加えると、それはEQSより41馬力ほど少ない。90kWhのバッテリーは、約660kmの航続距離を提供し、急速充電を行うことで15分以内にさらに250km分を充電できる。市場投入時には、仕様の異なる2番目のモデルもリリースされる予定だが、メルセデスはそれ以上の詳細を発表していない。

EQSに備わるの機能の多く、すなわち先進運転支援システム、自動的に開くフロントドア、後輪車軸ステアリングなどは、弟分のこの車種にも搭載される。マルチスクリーン接続型エンターテインメントシステムのMBUXハイパースクリーンはオプションとして利用可能だ。ボディはやや小さめだが、室内はゆったりとしており、現在のEクラスに比べて、フロントシートのショルダー部が27mm広く、シートポジションが65mm高く、キャビン全長が80mm長くなっている。

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EQEは、メルセデスが2021年発表した4番目のEQ車であり、ケレニウス氏によると、ほどなくEQSとEQEのSUVバージョンが続くという。生産は世界市場向けのものはブレーメンで、中国市場向けのものは北京で行われ、2022年半ばには順次全世界での発売が開始される。

メルセデス-AMG EQS 53 4MATIC +

画像クレジット:メルセデスベンツ

さてパワーとパフォーマンスの登場だ。AMG EQSは、EQアーキテクチャに基づく最初のバッテリー式AMG生産モデルだ。メルセデス-AMGの本拠地であるアファルターバッハで生まれたこのクルマは、パワー、ボディ、豪華さを完璧に組み合わせたゼロエミッション車を具現化することを目的としている。その雰囲気を高めるために、このクルマは走行時に唸るような音を出すことができるようなサウンドシステムを備えた、特別なハードウェアで構成される。このことによって車内、車外の人たちに本物のAMG感を与えることができる。

AMG EQSは2台のAMG電気モーターを搭載し、システム全体の出力は484kW(658馬力)である。「レーススタート」まで踏み込んだ場合には、560kW(761馬力)と1020ニュートンメートルのトルクが得られ、3.4秒で0から時速100kmに到達し、最高速度は時速250kmとなる。

合計108kWhのストレージ容量を持ち580kmの航続距離を提供するバッテリーに対して、回生ブレーキシステムがエネルギーを送り返す。またこの車両は、200kWを超える高速DC充電にも対応している。

AMG EQSは、シュトゥットガルト郊外のジンデルフィンゲンにある、メルセデスベンツのカーボンニュートラルな工場の「Factory 56」(ファクトリー56)で生産されている。メルセデスは2021年末にこの車両を市場に投入することを計画している。

メルセデスコンセプトEQG

画像クレジット:メルセデスベンツ

さて「マイティG」のお目見えだ!EQGはGクラスの電動オフロードコンセプトカーで、EQモデルの先進的豪華さをともなった4×4 Gの強力な特徴を備えている。量産の前にはまだ多くの変更が考えられるため、メルセデスはEQGに関してはあまり多くの詳細は提供しなかったが、私たちが知っているのは以下のようなものだ。すなわち同車は「十分なパワーを持った」4基のモーターを持ち、それぞれのモーターは独立して制御できるようにそれぞれ車輪の近くに置かれている。またオンロードおよびオフロード走行用の新しい後輪車軸と、2速ギアボックス装備されている。

そのオフロード走行は、シリーズモデルへの開発の最後に、グラーツのシェークル山(標高1445m)にある、メルセデスのテストトラックでテストされる予定だ。

メルセデス・マイバッハ・コンセプト

画像クレジット:メルセデスベンツ

このSUVコンセプトカーは、比較的長い伝統を誇るマイバッハの歴史の中で、初の完全電気自動車となる。マイバッハEQSは、ツートンカラーの塗装仕上げなど、従来モデルのクラシックな特徴を備えながら、EQラインナップの先進的ドライブテクノロジーを備えた車種だ。おそろしく洒落た車両でもある。白いピアノラッカーの内装は豪華でなめらかで、映画「エリジウム」の後半で空中の楽園にたどり着くために使われた乗り物を思わせるかもしれない。仕事や休憩を快適に行える場所となるが、特に「エグゼクティブシート」や「ショーファーパッケージ」を選んだ場合にはなおさらだ。

このSUVは2023年には市場に出回る予定だが、メルセデスは早ければ2022年にも次のSUVのプラットフォームを導入すると発表しており、その予想される航続距離は約600kmである。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文: Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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