IBMが新型「Power E1080」サーバーを発表、エネルギー効率とパワーの劇的な向上を約束

強力なサーバーを稼働させる大規模なデータセンターでは、膨大な量の電力が使われていることを私たちは知っている。とりわけ気候変動が問題になっている今、電力消費量を削減できるのであれば、何であれ歓迎すべきことだ。その点においても注目されるのが、最新の「Power10」プロセッサーを搭載した新しい「IBM Power E1080」サーバーである。

IBMの主張によれば、競合する126台のサーバーで行っていた作業を、たった2台のE1080に集約することで、エネルギーコストを80%削減できるという(同社推定)。さらに同社は「この新サーバーは、主要なSAPアプリケーションのパフォーマンスを測定するSAPベンチマークにおいて、x86ベースの競合サーバーが使用するリソースの半分しか必要とせず、40%の差をつけて世界新記録を達成した」と述べている。

Moor Insight & Strategy(ムーア・インサイト・アンド・ストラテジー)社の創設者兼主席アナリストで、チップ業界に詳しいPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、このシステムが達成できることについてのIBMの大胆な主張は、ハードウェア設計の観点から見て納得がいくと語っている。「SAP、Oracle(オラクル)、OpenShift(オープンシフト)のワークロードについての同社の主張は、同じ性能を得るために必要なソケットや物理プロセッサの数が単純に少なくて済むという点で、まずは納得できるものでした。これらの数値は、(将来的に)Sapphire Rapids(サファイアラピッズ)に置き換えられることになっているIntel(インテル)のCascade Lake(カスケードレイク)と比較したものです」と、同氏は述べている。

IBMのPower Systems Group(パワー・システムズ・グループ)でバイスプレジデント兼ビジネスライン・エクゼクティブを務めるSteve Sibley(スティーブ・シブリー氏)によれば、この新しいサーバー(およびそれを実行するPower10チップ)は、スピード、パワー、効率、セキュリティの組み合わせを求める顧客のために設計されているという。「ここで我々が提供する拡張性とパフォーマンスは、お客様の最も高い要求に迅速に対応して拡張でき、機敏性をさらに高めることが可能です」と、同氏は述べている。

顧客に用意された選択肢としては、E1080サーバーを買い取り、企業のデータセンターに設置することもできるし、あるいはIBMのクラウド(場合によっては他社のクラウドも)からサービスとしてサーバーアクセスを購入することもできる。または、サーバーをレンタルして自社のデータセンターに設置し、分単位で支払うことでコストを軽減することも可能だ。

「当社のシステムは、いわゆる購入のベースコストという観点からすると少々高価ですが、当社ではお客様が実際に(E1080サーバーを)サービスベースで購入し、分単位の粒度で料金を支払うこともできるようにしています」と、シブリー氏は語る。

さらに、Power10チップをベースに初めて発売されるこのサーバーは、内部でRed Hat(レッドハット)のソフトウェアが動作するように設計されており、このことはIBMが2018年に340億ドル(約3兆7000億円)で買収したRed Hatに新たな活躍の場を与えている。

関連記事:IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

「Red Hatのプラットフォームをこのプラットフォームに導入することは、RHEL(Red Hat Enterprise Linux、レッドハット・エンタプライズ・リナックス)オペレーティングシステム環境からだけでなく、OpenShift(オープンシフト、同社のコンテナプラットフォーム)からも、アプリケーションをモダナイズするための重要な手段となります。また、当社のRed Hat買収とそれを活用することのもう1つの重要な点は、Red HatのAnsible(アンシブル)プロジェクトや製品を活用して、当社のプラットフォームの管理と自動化を推進していくということです」と、シブリー氏は説明する。

2020年4月にIBMのCEOに就任したArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏は、一部のコンピューティングがクラウド上に存在し、一部がオンプレミスに存在するハイブリッド・コンピューティングに会社の重点を移そうとしている。今後は多くの企業が何年もの間、同じ状況になるだろう。IBMは、Red Hatをハイブリッド環境のマネジメントプレーンとして活用し、さまざまなハードウェアおよびソフトウェアのツールやサービスを提供したいと考えている。

Red HatはIBMの傘下で独立した企業として活動を続けており、顧客にとって中立的な企業であり続けたいと考えているものの、ビッグブルーは可能な限りその提供物を活用し、自社のシステムを動かすために利用する方法を模索し続けている。E1080はそのための重要な手段を提供することになる。

IBMによると、新型サーバーの注文受付は直ちに開始されており、納品は2021年9月末より始まる見込みだという。

画像クレジット:IBM(Image has been modified)

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。