IndieBioデモデーでバイオ系スタートアップの最新動向をチェック!

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場所はサンフランシスコのダウンタウンにあるFolsom Street Foundry、今日の午後はその一室でIndibioの3度目のデモデーが開催されており、最新のイノベーションについて興味津々の人たちでごった返していた。

アクセラレーターのデモデーは一大イベントとなり、今ではTechCrunchもライブストリーミングを行っている

しかし、真の意味で純粋なバイオテックアクセラレーターがSOS Venturesからローンチされたのはほんの2年前のことだ。それ以来多くのアクセラレーターやベンチャーがバイオテックの分野に強い関心を持つようになったが、それでもなお、Indiebioはその業界で、特に奇妙で興味深いアイディアが披露されるという点において皆の注目を集める存在であり、そう言ったアイディアは、例えば動物の体の部位を3Dプリンターで製造するとか、微生物に卵白をつくらす、バイオリアクターを使ってビールを美味しくする、などだ。

3回目の今回も例外ではなく、キノコの皮で服を作ったり、チューインガム一枚のサイズのジカウィルス検出装置や、実験室でヒトのミルクを製造するなど、奇抜なアイディアを披露するスタートアップが次々に登壇した。ここではIndieBioの3度目のデモデーで登場した15のスタートアップ全てについて紹介しよう。

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Mycoworks– Mycoworksは皮革の天然の代用品としてキノコを使おうとしている。その素材は機能的改良が加えらえており、動物を使わず、環境に優しく、価格競争力も強い。同社は靴とファッション業界の3社とパートナー関係を結んでいる。デモデーの日、同社は牛のサイズの「キノコ皮」をお披露目した。これは牛1頭丸ままの皮革に相当し、3週間で培養したという。

SyntheX Labs– SyntheXは現在治療不可能なガンを、いわゆる「合成致死性」を利用して治療する会社だ。同社の開発したプラットフォームでは、たった一枚のペトリ皿で一度に1000万のタンパク変異体をテストできるという。同社は現在複数の製薬会社と連絡をとりながら、将来有望なデータをすでに手にしている。その中でも、新規に改良を加えた、がん細胞を死滅させる新しい方法に関する論文は向こう数カ月内に出版される見込みだ。

Ava Labs– Avaのミッションは最高級ワインをブドウを使うことなく再現することだ。その方法とは、選り抜きのワインの分子レベルの素性を分析し再構成することで、1万1000ドルの1973年製Chateau Montelena Chardonnayのような最高級ワインと同じ飲み口を再現することだ。Avaの先行発売の「複製」ワインは完売し、同社は既に250万ドル調達して最初の顧客には半年以内にワインを発送する予定だ。

Knox Medical Diagnostics– Knoxは子供の喘息を、発症する前に予防することを目指している。同社によると、病院レベルの喘息管理ツールを開発することで、家にいながら喘息の発症可能性に関する洞察を得ることができる。同社はこれまで喘息患者80人を使って研究を行い、UCSFと共同でさらに500人の患者を使った研究を開始した。その結果を製品発表と共に公開し、2017年春までにFDAの承認を得る予定だ。

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AstRoNA Biotechnologies– 食中毒は今日、世界的に懸念されている問題であり、毎年6人に1人以上の割合で食中毒にかかると言われている。AstRoNAは持ち運びできる小型の食品検査装置を開発した。これにより、汚染されている可能性のある食品を食品生産のどの段階においても直接装置を持ち込んで検査することが可能になる。同社によれば、これにより「現場からテーブルまで」この検査装置を使うことができ、正確な結果を得ることが1時間以内に可能だ。また、同社な試験的なプログラムを食品会社4社と立ち上げた。今年度末までに最初の大規模な製品販売を行う為に170万ドルを調達したいとしている。

BioNascent– BioNascentは母乳で育てられていない赤ん坊の為に、母乳と生理的に同等なフォーミュラを製造している。同社はヒトの母乳に含まれるタンパク質を合成し、現在使われている乳製品ベースの幼児用フォーミュラに取って代わる製品の製造を目指す。同社は既に最初の製品を販売するための販路を開拓しており、研究とマーケティングに注力しつつFDAによる認可を3年以内に取り付ける予定という。

Amaryllis Nucleics– AmaryllisはRNAの発見を加速することで研究の効率化を目指す。同社のテクノロジーはRNA配列決定に要する時間を半分に、また費用を8分の1にする。それにより、ガン診断、薬剤の開発、食の安全の確保が促進されるだろう。Amaryllisはこれまで、セールスにおいて25万ドル以上の資金を調達し来年までに国際的に販売を行うことを目指している。

MiraculeX– MiraculeXは次世代の、健康で美味しいタンパク質ベースの甘味料を植物に作らせるべく、研究を行っている。このスタートアップを支えるチームによると、同社の甘味料はゼロカロリーで、苦味は無く、砂糖より美味だという。MiraculeXは同社初のタンパク甘味料を今年度末までに発表し、さらにその他のタンパク質ベースの甘味料を翌年までにリリースしたいとしている。

OneSkin Technologies– OneSkinは研究室で本物の人間の皮膚の合成に成功したという。OneSkinによると、同社は人種と年齢に応じて皮膚を複製し、個人のニーズに合ったスキンケア製品を開発するという。同社は既に大きな化粧品会社と最初の顧客関係を結び、個人のニーズに合ったスキンケアと同社独自のアンチエージング化粧品のラインアップを1年以内に発表したいということだ。

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Willow Cup– Willow Cupは植物を使って乳製品を製造する会社で、まずはラテ用のミルクの泡を手掛ける。同社は特許を取得済みの植物のタンパク質ライブラリーを使って植物由来のミルク産業に革新をもたらそうとしている。同社によると既にサンフランシスコ内の代理店10社と提携販売を行い、全国の市場に販路を広げる予定だという。

Endura Bio– カリフォルニアは依然干ばつで苦しんでおり、当地では水は貴重だ。Enduraは農業用スプレーを製造しており、そのフォーミュラの使用により作物の干ばつ耐性を活性化し、水の使用を33パーセント抑えることが出来る。現在そのテクノロジーを検証すべくカリフォルニアで野外試験を実施中だ。

Ardra– 天然香味料と香水は急速に成長している市場でその市場規模は230億ドル以上にもなるという。Ardraによると同社の酵素テクノロジーにより香味料を他の天然に存在する同等品と比較して、より低コスト高マージンで製造できるという。同社によると最初の4ヶ月の内に手がけた最初の製品において商業収量を達成することに成功し、通常の製品開発サイクルにかかる何年もの期間を短縮することが出来たという。

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mFluidX– ジカ熱は妊娠した母親が感染した場合胎児に小脳症を引き起こす可能性のある恐ろしい病気だ。ブラジルは今年の8月世界が夏のオリンピックで集結しようとするまさにその時、その病気の渦中にいる。mFluidXは診断用のチップを開発したが、そのサイズはこれまでのDNAやRNA分析用の大きな研究室用装置とは違い、ほんのガム1パックのほどの大きさで、ジカウィルスを野外で検出出来るという。同社によるとその検出チップは電源要らずの使い捨てのチップで既存のテクノロジーの1000分の1の費用しかかからず、どこにいても感染病の診断に素早く使用可能だという。同社とパートナーシップを締結した最初の人物はブラジルでZikaウィルスを同定したウィルス学者だ。

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Jungla–  Junglaによると、同社はゲノム上でこれまで重要性が不明だった変異の役割を類推することにおいては世界最高のテクノロジーを保有し、機械学習と同社の専売特許であるタンパク機能マップを組み合わせ、まずガンの分野で応用するという。同社は核酸のシークエンスサービスの分野で著名な企業やゲノム診断の第一線を行く会社、アメリカで最大の心臓専門病院と提携関係にあるという。

Qidni Labs– Qidniは移植可能な人工肝臓だ。同スタートアップはブタを使った最初の臨床前試験を成功させ、来年には臨床前試験の全ての工程を終了し、次の5年以内にそのテクノロジーを市場に出す予定だ。

 

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(翻訳:Tsubouchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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