InstagramがついにTikTokに敗北を認める

Instagramには10億人のユーザーがいるというのに、ショートビデオのIGTVアプリをダウンロードしたのは2018年6月のリリース以来、18カ月で700万人だった。これはTiktokの80分の1のインストール数だ。

InstagramのメインアプリからIGTVの利用を促す目ざわりなオレンジ色のボタンが消えたのはこの結果に敗北を認めたからだろう。TikTokは同じ期間に世界で11億5000万のユーザーを獲得している。Sensor Towerのデータによると米国だけでTikTokでは8050万ダウンロードがあったのにIGTVはわずか110万件だった。

たしかにTikTokはインストールを促す広告に巨額の費用を注ぎ込んでいる。しかし将来はどうなるにせよ、Instagramが長尺縦型ビデオというプラットフォームで成功を収められなかったことも確かだ。

要するにInstagramのユーザーはIGTVのような長いビデオを見る別アプリを必要としなかった。IGTVの機能はInstagramのメインアプリに組み込まれ、フィードに冒頭が流れ、タブから探索することもできた。ストーリーズやユーザープロフィールからも表示できた。それでも多くのユーザーにとってIGTVはInstagram本体のようなホームにするほどの魅力がなかった。

もうひとつ問題だったのはInstagramのクリエイターがIGTVにアップしたビデオを直接に収益化する方法がなかったことだ。 YouTubeやFacebook Watchのように広告収入の分配を受けることも Facebook、Twitch、Patreonのようにサブスクリプションや投げ銭を得る方法もサポートされなかった。

Facebook、Instagramからの唯一の財政的サポートといえば、一部のセレブの場合だとビデオの製作コストの一部が償還される程度だった。しかもBloombergのLucas Shaw(ルーカス・ショー)氏、Sarah Frier(サラ・フリヤー)氏によれば.こうした特権を得るにはコンテンツは政治的、社会的問題や公職の選挙に関する話題を含むことが許されないという。

【略】

Instagramのホームのトップからボタンが消えたので、今後はIGTVは「Explore」(発見)タブから開くことになる。またIGTVにビデオをアップしても十分な数のビューが得られていない。トップ20タイトルでさえ再生は20万回以下だ。Instagramでフォロワーが1000万人もいるトップクリエーターのBabyArielでさえ、IGTVには20本しか投稿しておらず、50万以上のビューを得たのは1本に過ぎない。

【略】

IGTVがスタートしたときは、 縦位置の長尺ビデオがよくわからない理由で熱狂的にもてはやされていたが、問題はこのフォーマットの優れたコンテンツがほとんど上がってこないことだった。複数の被写体を収めるような長尺ビデオは横位置が適しており、縦位置ビデオというのは自画撮りや何かをとっさに撮ったる場合がほとんどだった。

ところがInstagramの共同創業者のKevin Systrom(ケビン・シストロム)氏は2018年にIGTVを私に説明して「モバイルオンリーのフルスクリーン縦型ビデオは私が最も誇りに思うサービスだ。このフォーマットはここ以外どこにも存在しない」と語った

残念ながら縦型オンリーというビデオフォーマットはもはやInstagramにも存在しない。2019年5月にIGTVは縦位置のみというイデオロギーを捨てて横位置のビデオも受け入れるようになった。

【略】

IGTVは中途半端で使い勝手もよくなかった。それでもSnapchatやTikTokが存在しない世界だったらそれなりに需要はあったかもしれない。

しかしInstagramが直面したのは非常に厳しい競争の存在する世界で、短編ビデオならジェフリー・カッツェンバーグのQuibiがモバイルビデオの視聴者を集めようとしている。プラットフォームを提供すればあとはひとりでにコンテンツが集まってくるというような楽な環境ではない。

Instagramは視聴者が望むコンテンツを吟味し、クリエーターをもっと積極的に支援しなければならない。特にクリエイターが活動を続けられるような収入を確保できる道を提供するのが重要だ。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。