Instagramの「タグ」を利用にしたフリマサービスを米国で展開する10sec、藤田ファンドから1.6億円を調達

サイバーエージェントが3月に開催した「スタートアップ版あした会議」。これは、サイバーエージェント内で開催されているビジネスプランコンテストである「あした会議」のスタートアップ版となる。

書類と面接による事前審査を通過した創業2年以内のスタートアップに対して、サイバーエージェントの経営陣や子会社の経営者がアドバイザーとなり、2日間でサービスのブラッシュアップに取り組むというものだ。優秀プランには最大3億円の投資がなされるとされていたが、最終的に5社が投資検討の対象となり、うち2社への投資が発表されている。

1社目はファッションECアプリ「melo」運営のGorooに

まず1社目は、スマホアプリ「melo」を5月2日に公開したGorooだ。同社はサイバーエージェントから2000万円の資金を調達したことを4月25日に発表している。

Gorooの手がけるmeloは、大手通販サイトからネット展開のみの小規模ブランドまで、200以上のウェブサイトに掲載されている商品を横断して閲覧したり、お気に入りの商品を投稿したりできるというもの。興味を持った商品は、直接当該サイトにアクセスして購入することができる。10代から20代の女性にターゲットを絞ってサービスを提供する。

Goroo代表取締役の花房弘也氏は、「ネットで服を買うのが楽しくないのは『チャネルが限られている』という理由から。BASEやStore.jpのようなプラットフォームが登場し、個人で運営するような規模のファッションサイトは今後増えると思うが、そういったサイトが食っていけるような世界を作りたい」とサービスへの思いを語る。今後は各ECサイトへの送客トラフィックを拡大し、ツール提供などでのマネタイズを検討する。

10secは「Instagram」をプラットフォームにコマースを展開

そして5月8日、スタートアップ版あした会議発のスタートアップとして2社目の投資先として発表されたのが、10sec(旧Instamall)だ。同社はサイバーエージェントから1億6000万円の資金を調達した。ちなみに、今回の出資はサイバーエージェント代表取締役である藤田晋氏の名を冠した投資案件を指す「藤田ファンド」としての出資になるそうだ。実は藤田ファンドというのは、サイバーエージェント投資事業本部の投資案件の中でも、グロースステージのスタートアップへの大規模な投資に限定されているそうだ。これまでの実績で言えば、BASEやクラウドワークス、スマートエデュケーションなどへの投資がそれにあたる。

話を戻そう。10secの手がける「10sec」(現在米国からのみ利用可能)は、画像共有サービスの「Instagram」を利用してCtoCコマースを実現するプラットフォームだ。ユーザー登録をすれば、「#10sec」というハッシュタグを付与してInstagramに投稿した写真の商品を10sec上に出品して販売できる。投稿時に「○○$」とコメントを入力していれば、それがそのまま商品の販売価格として表示される。商品の購入には、出品者の指定の金額で購入する「Buy」と、値引きの交渉をして出品者がそれを受け入れた場合に購入できる「Offer」の2つの手段を用意する。出品者が価格を設定せずに出品した場合は、「Best Offer」と呼ぶ入札制度も導入する。サービスは現在手数料無料で提供しているが、将来的には出品者から10%の手数料を徴収する予定だそうだ。

安全な取引に向けて、エスクローサービスも導入。購入者が決済(stripeを採用)をしたのち、出品者が商品を送付し、出品者が受け取り完了の処理をする、もしくは送付から10日が経過した時点ではじめて出品者に入金がなされる仕組み。物流などは現在出品者に手段をゆだねるが、今後は自社、もしくはパートナーとともに提供する考えもあるという。

10secは、インキュベイトファンドが主催するインキュベーションプログラム「インキュベイトキャンプ 5th」の卒業生。インキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏を通じて、同社から合計2300万円の出資を受け、米国に限定して2013年11月よりほぼノンプロモーションでサービスを提供してきた。10sec「1年半ほど前から、Instagramで『#forsale』『#buy』といったハッシュタグを使ってフリマアプリのように商品を販売しているユーザーが居るのに気付いた。だがInstagramで写真を撮って出品しても、売買をサポートするツールもなかった」——代表取締役CEOの正田英之氏はサービス提供のきっかけについてこう語る。僕も確認したが、#forsaleタグがついた写真は270万件以上も存在している。

10secでは、今回調達した資金をもとにマーケティングと人材採用を進める。すでに設立済みの米国子会社にマーケティング担当者を置くほか、サービスを開発する日本法人のエンジニア採用を進める。また、5月にはiOSアプリをクローズドベータ版として公開。6月から7月頃の正式リリースを目指すという。同社では当面米国でサービスを提供するとのことで、日本でのサービス展開については「すでにメルカリやLINE MALLもいるレッドオーシャン、そのまま勝負をすることはない」(正田氏)とのことだ。

ところで、サイバーエージェントとしては、日本でサービスを展開せず米国でのみサービスを展開するスタートアップに投資する意義はあるのだろうか? サイバーエージェント投資事業本部 本部長の宮崎聡氏は「どこで事業を展開するかは意識しておらず、グローバルでやった方が伸ばせる座組みなのであれば、そんな会社に出資する。資金を用意してアクセルを踏めばユーザーを取れるのであれば、そこに資金とノウハウを注入したい。また、米国であれば、我々が子会社設立の時にぶち当たった壁も理解しているのでアドバイスできるし、ネットワークもある」と、語ってくれた。

同社が将来的に考えるのは、Instagramだけではなく、さまざまなソーシャルメディアと連携したCtoCプラットフォームの構築だという。たとえばFacebookもPinterestもタグを付与して写真をアップロードできるので、これをすべて10secの出品のプラットフォームにする。また逆に、10secに出品した写真をさまざまなソーシャルメディアに掲載して、10secへの集客を図るというものだ。もしこの構想が実現すれば、全世界のソーシャルメディアユーザーが、CtoCの出品者、購入者たりえる世界がやってくることになる。もちろんそのためには、クロスボーダーでの物流や決済など、課題もたくさんあるのだけれども。

正田氏(左)と宮崎氏(右)


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TechCrunch Japan

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