“interscatter” は、無線信号をリサイクルする技術

interscatter-contact

「スマート」コンタクトレンズや、永久脳内インプラントのようなものを考えるとき、問題になるのは電源だ。データの収集、処理、特に伝送のためにはエネルギーが必要だ。しかし、最後の一つは問題でなくなるかもしれない ― “interscatter communication” という技術のおかげで。

スマートフォンのように大きなバッテリーを持つデバイスにとって、2~3メートル先に届く無線信号を送ることは、エネルギー的にさほど高価ではない。

しかし、ごく小さな、特に体内で使うことを目的とするデバイスでは、電源が深刻な問題になる。バッテリーは小さく、ノートパソコンのようにペースメーカーを取り出して充電することはできない。だから、エネルギー消費を減らすものは何であれ、次世代スマート埋め込みデバイスにとって歓迎だ。

interscatter-three-devices

そこで、ワシントン大学電子工学専攻の大学院生3人は、無線信号を〈生成〉すること自体を不要にする技法を開発した。代わりにinterscatter を使うことで、デバイスは受信した信号を集めて再配信することができる。

しくみはこうだ。あるデバイス例えばイヤホンが、データを持たない特別な「単音」をBluetooth周波数で発信する。interscatterデバイスはこの信号を受信し、アンテナで反射させる ― ただしその前に極くわずかな操作を加えて空白信号をWiFi信号に変える。この改変された信号(実際には一種の歪められた反射)は、通常のWiFiデータと同じように、スマートフォンやノートパソコンで受信できる。

Fig-2

すごいだろう? 何よりもいいのは、受信した電波をわずかに改変るためにしか電力が必要ないことで、自分でWiFi信号を生成するより〈1万倍〉効率がよく、Bluetoothより1000倍効率がよい。

それだけ消費電力を抑えることができれば、様々なインプラントデバイスに可能性が開かれる。しかし、もちろん可能性はそれだけではない。チームはinterscatterをクレジットカードに仕込んで信号をリサイクルすることによって、支払いシステムと相互に通信できるプロトタイプを作成した。

プロジェクトの次期ステップの一つは、このテクノロジーをさらに小さくすることだ。現在はかさばるFPGAボードで作られているが、設計が確定すれば、通常の集積回路基板に載るはずだ。なお、標準的な信号を使っているため相手のデバイスはApple WatchからSamsung Galaxyスマホでも何でもよい。

このinterscatterに関する論文を書いたのは、Vikram Iyer、Vamsi Talla、Bryce Kellogg、および担当教授のShymmath GollakotaとJoshua Smithで、8月22日にブラジルで開催されるSIGCOMMカンファレンスで発表される。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。