iOS 8 SDKではデベロッパがA7ハードウェアのグラフィクス機能に直接アクセス–iPhone/iPadが最新ゲーム機並の迫力に

Appleは今日(米国時間6/2)のiOS 8の立ちあげに併せて、このモバイルオペレーティングシステムのための数々の新しいデベロッパツールをリリースした。その新しいiOS SDKをAppleのCEO Tim Cookは、“App Storeのローンチから今日までで最大のリリース”と呼び、APIの新設や更新が4000以上もあることを誇示した。

中でもとくにデベロッパが気に入ると思われるのは…新言語Swift以外では…、Appleが”Metal”と呼ぶ機能だ。デベロッパが、A7プロセッサのグラフィクスやコンピューティングなどハードウェア機能に直接アクセスできること、そういうライブラリというかAPI集のことを、Metalと総称している。同社によると、Metalを使うことにより、グラフィクスや計算集約的な処理におけるオーバヘッドが減り、マルチスレディングの効率も上がり、iPhoneやiPadにおけるグラフィクスの速さと迫力は最新のゲーム専用機と肩を並べるものになる。これにより、描画のスピードは、iOS 7を1とすると、iOS 8ではその10倍になる。

主に2Dや3Dのカジュアルゲームのデベロッパ向けに、SceneKitが新たに提供され、また既存のSpriteKitには、力場やピクセルごとの物理計算や逆運動の計算が加わる。

今日は大方の予想通り健康アプリがローンチされたが、それに併せてHealthKitというものがローンチされた。これを使うとデベロッパは、自分のアプリとAppleの健康アプリとのあいだで、データを交換できる。

このSDKの大きな目玉には、スマートホームデバイスを作ってそれにiOSと通信をさせたい、というデベロッパのためにフレームワークHomeKitが含まれる。また大量のデータ伝送やデータの保存をクラウドを使ってやりたい、というデベロッパのためには、iCloudの無料のAPI集とも言うべきCloudKitが提供される。なおHomeKitに関する詳細な記事がここにある。

CloudKitでAppleは、クラウドをベースとするバックエンド市場に参入するが、ストレージもAPIも無料という点が、既存のサービスと違う。容量制限は、クラウドストレージ1PB、データベース10TB、一日のデータ伝送量5TBだ。どんなアプリでもサービスでも、またユーザがどれだけ増えても、これだけあればとりあえず十分だろう。

今日の発表でとくに目立った機能が、アプリの拡張機能だ。これによりさまざまなアプリが、ほかのアプリへのインタフェイスを露呈することができる。この機能は、サンドボックスに入れられて安全が図られる。この拡張機能を使って、たとえばメールと写真編集アプリとのあいだで写真をやりとりできるだろう。Safariも、この拡張機能にアクセスできる。AppleのCraig Federighiが今日行ったデモでは、Safariの中からBing Translateを呼び出して翻訳をやらせていた。

ついにサードパーティアプリが通知センターの中で自分独自のウィジェットを定義できるようになった。しかも、対話できるウィジェットもOKだ。

指紋認証システムTouch IDも、そのAPIが提供される。つまりサードパーティのアプリが、Appleの指紋認証を使えるのだ。

iOSの写真機能もそのAPIがデベロッパに公開され、それらはPhotoKitというフレームワーク名で総称される。AppleのPhotosアプリも、もちろんこのAPIを使って構築されているのだ。非破壊的エディットやPhotosのライブラリを/にリード/ライトできる機能、またCamera APIによりフォーカス、ホワイトバランス、露出などのコントロールが、デベロッパの写真撮影アプリの中でできる。

iOS 8のベータとそのSDKは、developer.apple.comで登録したデベロッパが利用できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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