iOS7で伝統のスキューモーフィズム追放の噂―Appleが必要としているのは新デザインではなく新たなキラー・サービスだ

噂によれば、iOS 7はこれまでiOSデザインの中核となっていたスキューモーフィズムのほとんどを捨てることになるという。新たにiOSの責任者となったJony IveはiOS 7から現実を模倣したリアルなテクスチャーを備えたデザインをことごとく追放し、きわめてフラットなものに置き換えたという。

それはそれで結構だが、iOS 7の新機軸がそこで終わりだったら Appleは大きな問題を抱え込むことになる。真の問題はiOSの見た目ではない。Siri、iCloud、iTunesといった中心的なサービスがGoogleや多くのスタートアップが提供するものに比べて今や見劣りすることが問題なのだ。

携帯電話のハードウェアというのは金属ないしプラスティックの薄い筐体の上に高精細度モニターを取り付けたものに過ぎない。そういうもので他社といつまでも大きな違いを出しつづけるのは難しい。なるほどAppleの製品は現在でも他のほとんどの製品に比べて品質に優位性がある。しかしその優位性は日一日と縮まっている。Appleはアプリの質と量を誇ってきたが、1年前に比べると、今はその説得力も薄れている。というのも優秀なアプリのほとんどはAndorooidとiOS(あるいはやがてWindowsPhoneでも)の双方で利用できるからだ。

今やメーカーがライバルに差を付けられる領域は提供するサービスになっている。SamsungやGoogleはこの点を理解している。Appleももちろん理解しているはずだが、現在提供されているサービスは一頭地を抜いて優秀という域には達していない。鳴り物入りで登場したSiriだったが、今になってもそれほど高い実用性を持つには至っていない。iCloudは特長がよくわからないサービスだし、クラウド・ストレージを必要とするデベロッパーはAppleのサービスよりGoogle Drive やMicrosoftのSkyDriveのようなクロスプラットフォームのサービスを好むようになっている。 iMessageは優秀なサービスだがキラー・サービスというほどの力はない。さらにこの分野ではWhatsAppを始めサードパーティーのメッセージ・サービスが猛威を振るっている。Mapsについては触れずに置くのが無難というものだろう。

一方でGoogleはユーザーがその時点で必要としそうな情報を予め推測して提供するGoogle Nowを提供している。またGoogleは「定額・聞き放題」の音楽サービスをAppleのiRadioに先駆けていち早くローンチした。地図、クラウド・ストレージは言うまでもなく、Googleドキュメントの生産性アプリも何光年も先を行っている。GoogleがQuickofficeを買収したので、Appleがこれまであまり力を入れて来なかったPages、Numbers、Keynoteといったツールより優秀な生産性ツールがiPadに提供されるかもしれない。なるほどGoogle+はまだFacebookほど巨大な存在ではないが、Googleに膨大なユーザー情報をもたらしつつある。一方、AppleはといえばPingで失敗したままだ。

Googleはデータとサービスだけでなく、デザイン分野においてさえ徐々に進歩している。Appleもいくつかデータセンターを持っているとはいえ、基本的にはハードウェア・メーカーだ。Appleの問題はライバルが次第に優秀なハードウェアを作れるようになり、品質における差を詰めつつあることだ。ライバルに対する優位性を今後も維持するためにはサービスで差をつけるしかない。

iOS 7のデザインはiOS 6より優れたものになるのだろう。しかしそれはショーウィンドウの模様替えに過ぎない。Appleが真に必要としているのはライバルにない新たなキラー・サービスだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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