IoTでミツバチの動きや健康状態をリアルタイムで追跡するBeeHeroの精密受粉プラットフォーム

精密農業をさらに超え、精密「養蜂」が未来志向の農家の心を捉えている。「BeeHero(ビーヒーロー)」は、2020年の登場とシードラウンド以来、急速に成長してきた。新たに1900万ドル(約21億1600万円)の資金を獲得したことで、当初の市場を超えて規模を拡大し、何千もの活発なミツバチの巣から収集した独自のデータをさらに活用できるようになる。

同社はミツバチの巣にIoT技術を導入することで、ミツバチの動きや健康状態を実質的にリアルタイムで追跡し、ダニの蔓延などを未然に防ぐことができる。その結果、作物の収穫量が大幅に向上し、巣箱が健康になり、結果的にトラクターに乗る回数も減らせる。巣箱を設置してから数週間ごとに様子を見に行くという通常の方法では、時間がかかる上に効率が悪く、その間に巣箱が崩壊していたり、受粉がうまくいかなかったりして、何エーカーもの農場を不作のシーズンへ導いてしまう。

BeeHeroのCEO兼共同設立者であるOmer Davidi(オメル・ダビディ)氏は「今日行われている受粉法は困難です。巣箱が不足していて、たとえ箱を手に入れられても、中に何が入っているのかわからず、ただ期待するしかありません。これでは、受粉を戦略的に行うことはできません。ストレス要因やさまざまなインプットとアウトプットを理解する必要があります。しかし、データをあまり必要としない古い産業でこれを行うのは難しいことなのです」と語っている。

画像クレジット:BeeHero

パンデミックが発生した当初の数カ月間のうちに製品を発売するという困難な状況にもかかわらず、農家とのつながりを構築する方法を見つけ出してからは、多くはゆっくりとだが、しかし確実に最新のソリューションを採用するようになっており、彼らの牽引力は目覚ましいものがあったとダビディ氏は語っている。彼ら農家はそのメリットに懐疑的で、(ビデオ通話やバーチャルデモなどで)手っ取り早い解決策を提示するスタートアップの創業者なんて当然ながら詐欺師だと疑っている。

「当初、私は『ひまわりやカシューを100%増やしたとみんなに伝えなければならない!』と言っていました。ただ、気をつけなければならないことがあります。彼ら農家は何世代にもわたって同じやり方を続けてきたのです。いきなり『私が新手法を解明しました』と言っても、すぐに信用を失ってしまいます」と同氏は説明した。「そのため、私たちは約束以上のことをしなければなりませんでしたし、それによって、より手がかからずに導入できるプロセスを構築することができました。そして、一度でもその成果を見ると、毎年それをやりたいと思うようになるのです」。

現在、BeeHeroは、世界的にアーモンドの生産量が多いカリフォルニア州の複数のトップアーモンド生産者と提携している。2021年末までには、10万個の巣箱を管理し、米国最大の受粉業者になることを目指している(現在は第4位)。

スマートフォンのBeeHeroアプリで巣の健康状態を表示しているところ。(画像クレジット:BeeHero)

1500万ドル(約16億7100万円)のAラウンドには、ADMキャピタル、Rabo Food and Agri Innovation Fund(ラボ・フード&アグリ・イノベーション・ファンド)、iAngels(アイエンジェルズ)、FirstTime(ファーストタイム)、J-Ventures(Jベンチャーズ)、UpWest(アップウェスト)、Entrée Capital(エントリー・キャピタル)、Good Company(グッド・カンパニー)、the Arison Group(アリソン・グループ)、Gaingels(ガインゲル)が参加している。また、同社は欧州委員会、BIRD財団、イスラエル・イノベーション局から400万ドル(約4億4500万円)の助成金も獲得している。

今回の調達の第一の目的は、米国やアーモンド品目以外にも展開することだ。まずベリー類、アボカド、リンゴなどに展開し、次にヒマワリや大豆などの作物にも展開する計画だ。トマトのような温室栽培の作物も可能かもしれない。オーストラリアやヨーロッパも候補に挙がっているが、パートナーシップやその他の要素次第となる。少なくとも資金はあるということだ。

ダビディ氏は、今自分たちがいる段階に現実的でありながらも、増大し続けるミツバチの活動データベースが、他の方法でも価値あるリソースになることを期待している。

「データサイエンティストとして言えることは、我々は何も知らないということです」と彼は認めた。しかし「我々」とは業界全体のことであり、BeeHeroは蜂に関連するデータにおいて最大のコレクションを構築している。蜂の巣や受粉が、さまざまな天候パターン、作物や植え付けスタイル、農薬、外来種(彼らは殺人スズメバチを注視している)、その他多くの要因に対してどのように反応するかを知ることは、非常に価値のあることであり、同社の仕事はまだ始まったばかりだ。

「例えば、まだ解明されたばかりですが、ミツバチは雨が降る30分前には雨が降ることを知っています」とダビディ氏はいう。なぜ、どうやって?いずれにせよ、その情報は農家にとって、そしておそらく養蜂業全般にとっても、有益なデータとなるだろう。

「世界ミツバチ計画」や日本の文部科学省をはじめとする学術界での研究提携は、このデータの宝庫に未開発の可能性があることを示している。世界の食糧供給を維持するために受粉が非常に重要であるにもかかわらず、ハチへの脅威は増加の一途をたどっているため、私たちはどのような情報でも得る必要があると言えるだろう。

画像クレジット:BeeHero

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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