iPad mini 第6世代に死角なし、iPhone 13 Pro同等の最新仕様で処理も通信も高速

iPad mini(パープル)。試用したのはWi-Fi + Cellularモデルだ。別売のApple Pencil(第2世代)とともに

iPad mini(パープル)。試用したのはWi-Fi + Cellularモデルだ。別売のApple Pencil(第2世代)とともに

9月24日に発売となる第6世代iPad mini(以下、iPad mini)のレビューをお届けする。

今回のiPad miniはまさに「フルモデルチェンジ」。デザインはiPad AirやiPad Proと似た形になったが、中身はiPad AirともProとも違う、最新仕様のiPadと言っていいものだ。

ここでは、その魅力やパフォーマンスを見ていきたい。

サイズ・デザインはやはり絶妙

iPad miniの魅力が「サイズ」「デザイン」にあるのは疑いない。大きめのポケットにも入る……のは冬服などの一部のものに限られるかもだが、それでも片手で持てるサイズのiPadであることは間違いない。

ポケットにも……割と入る

ポケットにも……割と入る

本体裏面。パープルが映える

本体裏面。パープルが映える

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

iPad miniのパッケージと内容物。同梱されるのはUSB-CケーブルとACアダプター

特に今回は、対応するペンが第2世代のApple Pencilになり、充電時の収まりもよくなった。Lightning端子に突き刺す第1世代は、充電頻度が高くないので実用上そこまで大きな問題はなかったのだが、やっぱり見栄えが良くなかったし、なによりペンの充電キャップをなくしやすかった。マグネットで接続する第2世代はそのあたりの問題が非常に少ない。

本体右側面。ここに第2世代のApple Pencilがくっつく

本体右側面。ここに第2世代のApple Pencilがくっつく

メモ帳やコンパクトなスケッチブックのように持ち運べることに魅力を感じる人は多いと思うし、ペンはそうしたシーンで特に活躍する。

ペンをつけて片手で持ってみるとメモ帳っぽい雰囲気に

ペンをつけて片手で持ってみるとメモ帳っぽい雰囲気に

別売のiPad mini用Smart Folio(イングリッシュラベンダー)をつけて。片手にうまく収まるサイズ感だ

別売のiPad mini用Smart Folio(イングリッシュラベンダー)をつけて。片手にうまく収まるサイズ感だ

300g以下で「2020年のiPad Pro」に迫る性能

ポイントはなにより、このサイズで「速い」ということだろう。

iPad miniはiPhone 13 Proと同じ「A15 Bionic」が採用されている。A15 Bionicには、iPhone 13で使われている「GPUが4コア」のものと、Proで使われている「GPUが5コア」のものがあり、iPad miniは後者を使っている、とAppleは言う。

ただし、同社がプロセッサの動作クロックやメインメモリの搭載量を公開しないのはいつものこと。なので、iPad miniとiPhone 13 Proが「まったく同じ性能」とは限らない。

ということでGeekbenck 5でのテスト結果を見てみよう。

どうやらminiのものは、クロック周波数が低く、メインメモリ搭載量も少ないようだ。iPad mini搭載のA15 Bionicは最大クロックが2.93GHzで動いている。メインメモリは4GBだ。iPad Proが3.2GHz・6GBもしくは8GBであるのに比べるとやはりランクは下がる。

だが、速度が遅いわけではない。簡単に言えば、マルチコア処理の速度・シングルコアでの速度・GPUを中心とした「Compute処理」での値すべてが2020年発売の「iPad Pro 11インチモデル」に近いことがわかった。当時使われていたのは「A12Z Bionic」でこれもかなり速いプロセッサーだったが、それと近い性能のものが2年で300gの小型iPadに入ってくるというのは驚きだ。それだけ、Appleが積極的に自社開発プロセッサーの性能向上と生産性向上に努めている、ということだろう。

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近いGeekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

Geekbench 5を使った、iPad miniのベンチーマーク。プロセッサーの性能は2020年発売の「iPad Pro(11インチ)」に近い

同時発売となる「第9世代iPad」のテスト結果を見てみると、やはりこちらはiPad miniと比べて見劣りする。と言っても、昨年のフラッグシップスマホである「iPhone 12 Pro Max」に近い値ではあるので、けっして性能が低いわけでもない。4万円以内でこの性能が買えると思えば、それはそれでやはり驚きである。

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

同じく「第9世代iPad」の性能。さすがにiPad miniほどではないが、iPhone 12 Pro Maxより少し劣る程度か

一方で気になるのは、「最新のA15と、昨年のM1を比べたらどちらが速いのか」という点。

これはM1の圧勝だ。コア数がCPU・GPUともに8と多く、もともとMac向けに高負荷な処理を行うことを前提にチューニングされているから意外な結果ではない。

過去には、「iPad Proのプロセッサーを、最新の技術を使ったiPhoneのプロセッサーがすぐに追い抜いていく」現象もあったのだが、M1はちょっと違う。同じ技術を核として生み出されたプロセッサーであっても、iPhone・iPad向けの「Aシリーズ」と、Mac・iPad Pro向けの「Mシリーズ」は明確に違う路線を歩み始めている、と見て良さそうだ。

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

M1を搭載するiPad Pro(12.9インチ)の値。速度は圧倒的でA15 Bionicが載っているiPad miniでもかなわない

5G搭載で通信が高速化、4Gより5倍以上速い

もう一つ、速度面で魅力だったのは「5G」だ。

今回テストしたのはWi-Fi + Cellularモデルで、iPad miniは5Gに対応している。

この効果は絶大だ。今回は、同じくWi-Fi + Cellularモデルの第9世代iPadの貸し出しを受けているので比較してみたが、通信速度は下で5倍以上の差が出た。(テストはどちらもソフトバンク回線。テスト場所はJR五反田駅)

iPad miniの通信速度をJR五反田駅で計測。安定的に「下り285Mbps」程度が出ていた

iPad miniの通信速度をJR五反田駅で計測。安定的に「下り285Mbps」程度が出ていた

もちろん、通信エリアとして「5Gがしっかり入る場所」であることは重要だ。今はまだ5Gインフラも過渡期で、東京・山手線の駅で利用者数も多い五反田駅というロケーションは、それなりに恵まれた場所であるのは間違いない。

だとしても、安定的に下り285Mbpsが出ていたという事実はとても魅力的だ。ぶっちゃけ自宅の光回線と変わらない。本来なら、5Gならもっと速くなっても不思議ではないわけで、「インフラさえ整えば……」という気持ちになってくる。

4G・iPadでの「下り44Mbps」と言う値も、けっして遅くはない。だが、やはり5Gとの差は明白だ。

同じ場所で、4GのiPadの速度を計測。40Mbps台でも遅くはないのだが、5Gに慣れると人は贅沢になる

同じ場所で、4GのiPadの速度を計測。40Mbps台でも遅くはないのだが、5Gに慣れると人は贅沢になる

バッテリー搭載量が比較的大きく、これだけ通信速度が出るのであれば、単にタブレットとして使うだけでなく、「カバンの中に入れておいて5G対応モバイルルーター代わりにする」パターンも十分にアリだと感じた。

マイナス点としては「現状、5Gのミリ波に対応していない」ことが挙げられる。だが、ミリ波の利用可能な範囲がまだ狭いことを考えると、そこまでクリティカルな話ではないとも思える。日本で「ミリ波必須」と感じるようになるには、まだしばらくかかりそうだ。

「最新仕様」はゲームにも撮影にも活きる

こうした速度は、ウェブや動画を観るだけでなく、ゲームにも活かせるだろう。

SIEは先日のアップデートで、スマホ・タブレットからでもPS4/PS5が遊べる「リモートプレイ」をWi-Fiだけでなくセルラー回線にも解放した。5G環境なら(通信料の問題はあるが)問題なく遊べる。マイクロソフトも、クラウドゲーミングである「Xbox Cloud Gaming」を海外では展開中で、日本でも「2021年中」にスタートとしている。どちらもiPadに対応しているので、相性はいい。

もちろん、Apple Arcadeのタイトルやスマホ・タブレット向けのF2Pタイトルでもいい。パフォーマンスの高さはゲームにとって全ての面でプラスに働く。

また、今回のiPad miniはインターフェースが「USB Type-C」になったので、外部ストレージや使いやすいのもポイントだ。

iPad miniのインターフェースは、iPad ProやiPad Airと同様にUSB Type-Cに

iPad miniのインターフェースは、iPad ProやiPad Airと同様にUSB Type-Cに

写真や動画を扱う際、ビューワーがどうしても欲しくなる。移動先からデータを急いで転送したい時もあるだろう。iPad miniの処理能力とデータ通信性能なら、そんな要求を十分にこなしてくれる。

結局、「多くの人に求められているサイズのものが、最新のプロセッサーと最新の通信規格を使った仕様で出てきた」のが、iPad miniの最大の美点。どこにどう使うかも「最新仕様が活きるところ」がふさわしいのだ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。