iPhone 12 miniレビュー、小型ながら主要機能に省略がない近年最高のコスパモデル

iPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxを同時にレビューするなんて、超ハードなエクササイズだ。以前行ったiPhone 12とiPhone 12 Pro(未訳記事)のレビューでは、もっと極端な比較対象がないとミドルクラスモデルの評価は難しいと書いた。

そして今回は、そんな極端な比較対象を調べることになった。2020年、上から下まですべてのモデルを揃えてくれたApple(アップル)に、いまさらのように感心している。これらのスマートフォンはサイズも妥当だし、すっきりとしたデザインで機能も豊富だ。いくつかの小さなものを除けば、人を無理やり上位モデルに誘惑するような露骨なしかけは、価格に関しても機能に関しても存在しない。これまではそれが業界の定石だった。

2020年に発売されるすべてのiPhone 12の中で最も印象的なのは、間違いなくiPhone 12 Pro Maxだろう。その大きなディスプレイと美しい筐体はとても魅力的で、私がこれまで見た中で最高のカメラを搭載している。

しかし私の考えでは、ラインナップの中でiPhone 12 miniが最も魅力的な製品だ。それは、ただ小さなスマートフォンが欲しいという人たちの外で自らを強く主張するダークホース的な存在になっている。

サイズ

iPhone 12 miniはiPhone 12より20%小さく、18%軽くてiPhone 11の約半分のサイズとなっている。これは人の手にぴったり収まるで、ホームボタンがないため、同時に表示できるコンテンツの数も多い。

私は手が大きいためiPhone 12の方が快適だが、それでもうれしいのは、iPhone 12 miniのタイピングが、4.0インチの初代iPhone SEよりもずっと良いことだ。2020年初めに登場した4.7インチの二世代目のSEよりも良い。幅は同じだが背が高いため、筐体は小さいがディスプレイは大きくなった、というSFドラマ「ドクター・フー」に登場するTARDISのトリックのようになっている。これにより絵文字キーボードを切り換えられるし、音声入力ボタンをキー配列の外に置くことができた。そしてリターンキーやスペース、数字キー切り換えなどにもゆとりがある。キーサイズが拡大し、特にスペースバーが大きくなったことでタイピングが楽になった。キーボードスペースのサイズはiPhone 12よりやや小さいが、日常的なタイピングには十分だ。画面表示が似ているiPhone 11と比べても、コンテンツの量もほぼ同じだ。

iPhone 12 miniをPro Maxの上に乗せてみた

レンダリングといえば、iPhone 12 miniではスケールされている。つまり、「本来」の解像度2340×1080を0.96倍で表示する。しかし実際に見てみると、そのスケーリングは気にならない。miniは460ppiのiPhone 12より画面が小さいため解像度は476ppiとなり、スケーリングに気づかなくてもそれほど意外なことではない。アップルは長い間、拡大機能で積分スケールしてきたため、多くの実績がある。人工的な効果やスクロールにそれがあったとしても気づかないし、多くのアプリが正しいバランスであるように見える。しかしさまざまなスクリーンサイズをサポートするアップルのネイティブのフレームワークを利用しない開発者が、自分であれこれいじることはあるだろう。

iPhone 12 miniは、軽量コンパクトという点でも優れている。133gの12 miniは140gのiPhone 4Sよりもやや軽い。iPhone 5は112gなので比べると重たくなる。12 miniはこれらの伝統をすべて共有していながら、もっとしっかりしていて一体感がある。iPhone 12の設計は、初期のデバイスのように複数の素材をサンドウィッチしたものではない。そのため作ったというより、育ったと感じる。

この統一された品質は、わずか1mmの差が重要な小さなデバイスにとって奇跡的なものだ。アップルは手を抜くことなく、その高性能な内部に相応しい筐体、デザインを与えているようだ。しかしながら、iPhone 12 miniのスピーカーとマイクロフォングリルは非対称だ。これには少々がっかりしてしまう。

性能に関して、iPhone 12 miniはすべての点において充実している。熱管理とスケーリング、電力管理のためアップルはプロセッサーにやや手を加えざるを得なかったようだが、ベンチマークを見るとそれらは十分帳消しになっているようだ。実際に使ってみても、iPhone 12 miniとその他のiPhone 12シリーズの違いを感じる機会はゼロだろう。

ついでにいえば、iPhone 12 miniはRAMが4GBでiPhone 12と同様だ。iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxは6GBとなっている。私の経験によると、iPhoneのRAMが大きいほど良い最大の理由は、バックグラウンドにおけるタブの廃棄が少なくなること(キャッシュを多用できる)だ。仕事でブラウザを酷使する人は、その点を考慮しておこう。

写真を撮る者にとって、iPhone 12 miniは基本的にiPhone 12と変わらない。「miniにはない」というものはない。素晴らしいカメラだ、といえばそれで終わりだ。世界最高のスマートフォンカメラだが、望遠レンズはない。

iPhoneをカメラ中心で使う人がiPhone 12でなくiPhone 12 Proを選ぶ最も明確な理由が望遠レンズの有無だろう。iPhone 12にも望遠レンズはない。望遠レンズがないことで、後悔する人もいるかもしれない。また12 ProにはLiDARセンサーも搭載し、その違いは大きい。

私のiPhone 12 Proのレビューから引用すると、どのモデルを購入するかその選択方法は、Macの「写真」でスマートアルバムを作ったり、メタデータが読めるツールで「望遠レンズで撮影」を指定して写真をソートすることだ。昨年撮った中でそんな写真が多ければ、望遠の撮れない人生が果たして楽しいか、すぐにわかる。

私の場合は、iPhone 11 Proで撮った写真の約19%が、望遠で撮ったものだ。そのほぼ30%がポートレート(縦長)なので、私の写真はおよそ5枚に1枚がそのかっちりとしたフレームで撮ってることになる。望遠を使うのであれば、周囲のトリミングを最初からもっと正確に行いたいし、近いものは長い焦点距離でできる圧縮をもっとかけたい。

4K / 60fpsの動画はできないが、この超小さいデバイスで4K / 30fpsのDolby Visionの動画を撮影できるのはすごい。これは一般的なユーザーがiPhone 12 miniに期待するものを超えている。

アップルによると、iPhone 12 miniのバッテリーは4.7インチの現行iPhone SEよりも長いという。私が試しても確かに長いし、楽に1日はもつ。iPhone 12と比べても、miniは数パーセント上だろう。今回、バッテリーに関してキングであるiPhone 11と比べる時間的余裕はなかったが、ハードウェア的に見ても、王座の奪回は無理かもしれない。なにしろminiは小さい。搭載するバッテリーパックも小さく、プロセッサーを大幅に減速していることもありえない。iPhone 12 miniは20WのMagSafe充電器で12Wで充電する。小さいから15Wは必要ないし、それでも充電のスピードは大きなiPhone 12と変わらず発熱量も少ない。発熱は小さな筐体ではいつも問題になる。

iPhone 12 mini用のレザースリーブを試すこともできた。まぁ良くできたスマートな製品だが、ポジティブな意味で私向きではない。常にiPhoneを使っているため、いちいちケースから出し入れするようなゆとりがない。もしそれをやったら、無駄なエクササイズになるだろう。しかしケースを必ず使う人にとっては、アップルが革製品でも優秀な技術を蓄積していることがわかる機会になると思う。巧妙な留め金も含めて、全体にとてもすっきりしている。手触りも良い。

またレザースリーブには、アップルのMagSafe充電器を使うとOLEDに時刻を表示する窓も開いている。周辺光センサーのためのスペースもある。時刻表示も、なかなか利口だ。明るい背景色はスリーブのレザーの色とマッチしている。そのために使っているNFCのトリックは、シリコン製ケースが、iPhoneを置いた場所と同じ色のリングを表示するときと同じだ。時刻表示は数秒に1度ずつ二段階でフェードインするが、周辺光センサーがポケットの中でないことを知り、A14内のモーションコプロセッサーが動きを感知すると点灯する。

そのため、ちょっと持ち上げただけで時刻がわかる。また、時刻のウィンドウをタップしてカラーがマッチした時刻表示を見ることもできる。

そしてこのスリーブには、クレジットカードやIDカード用と思われるカードスロットがケースの口のところに隠れている。これも私向きではないが、小さなケースに、目に触れないものも含めて大量の仕かけを盛り込んだのはすごいことだ。今後発売されるであろうより高度なMagSafeアクセサリーのお手本かもしれない。

結論

iPhone 12 / 12 Proのレビューには、私が個人的なデバイスを選ぶときのワークフローを述べた。

  • コンパクトで出しゃばらない形状
  • お金が許すかぎり良いカメラ

そして以下が、現時点における私の結論となる。

iPhone 12 Proは、iPhone 12 Pro Maxでカメラに関してはトップの存在になった。アップルがこれまでに開発してきた中で、最大・最良のセンサーを搭載している。本体サイズも最大だ。そんなiPhone 12が、小型バージョンのiPhone 12 miniで精密にクローンされている。上に挙げたシンプルなワークフローに照らし合わせれば、どれか1つが、私がテストしたiPhone 12、12 Proのどちらよりも、12 Pro Maxか12 miniを選んだ方がいい。最良の妥協点を探るならiPhone 12 Proだ。Pro Maxではない。

現在、12 Pro Maxと12 miniの両方が手元にあるので、私の考えは変わっていないといえるが、ラインナップの定義に関しては少し変わっている。

iPhone 12 miniは、iPhone 12の機能面で大きな妥協がないため、私はこれらを「小さいながらも、大きく使える2つの画面サイズを持つ1つのデバイス」と見なしている。こんなことをいうと馬鹿にされることは百も承知だが、私はこれをminiをかなり使い込んだ後にいっているのだ。決め手になったのは、タイピングの感覚だ。

iPhone 12 miniは、アップルの2020年ラインナップにおいて断然コスパが良い。iPhone 12のパワーと最新技術をすべて備えており、ないのはiPhone 12 Proの望遠レンズと60fps / 4Kの動画撮影、そしてiPhone 12 ProとMaxの新しいセンサーだけだ。これらの機能を追加すると300〜400ドル(約3万1500〜4万2000円)のコストがさらにかかることになる。

iPhone 12にするかiPhone 12 miniにするかを選択する決定的な要素は何だろうか。人間工学的に小さなディスプレイが必要な人なら、中心的な機能に妥協のないデバイス(12 mini)がある。では、それほど小柄でもない人にとって決定要因は何だろう?

それは、こんな意思決定フローになるだろう。

  • iPhoneが唯一のカメラで、頻繁に写真を撮る人ならiPhone 12 Pro
  • iPhoneを使っているフォトグラファーで、画像のプリントや編集をいつも大量にする人な、iPhone 12 Pro Max
  • 上のどちらでもないがiPhoneが唯一のモバイルコンピューティングデバイスならiPhone 12
  • コンピューティングにはノートパソコンやiPadを携帯し使っているが、その他にもiPhoneを常に持ってる人ならmini

ワークフローの方がわかりやすい、という人がいるかもしれない。

2020年はiPhoneのラインナップにとって最良の年の1つだ。主要な選択要素はカメラと画面サイズだけであるためシンプルでわかりやすいし、パワーや主要な機能で大きな妥協をしていない。どれも、機能が完全に揃ったデバイスで、大から小まですべて良くできている。

このようなサイズを軸とする系列化は、今後カメラの技術が向上しして、上のワークフローのカメラ部分が当てはまらなくなるまで、ずっと続いて欲しい。それまでiPhone 12 miniはアップルが作り上げた最良の「小型」iPhoneであり、しかも妥協の少ない製品であり続けるだろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPhoneレビュー

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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