iPhone 13でデュアルeSIMを試す―自由度アップで機種変が楽に

iPhone 13でデュアルeSIMを試す―自由度アップで機種変が楽に

カメラを刷新して、Proモデルは120Hz駆動のProMotionにも対応したiPhone 13シリーズ。同モデル4機種は、iPhone 12から数えて2世代目の5G対応スマートフォンでもあります。残念ながらミリ波に対応しているのは米国版のみで、日本版はSub-6オンリーですが、Gbpsを超える通信速度は魅力的です。一足先に、その実機を試してみることができましたので、ここでは通信周りに関するレビューをお届けしたいと思います。

iPhone 13の通信関連機能をチェックした

iPhone 13の通信関連機能をチェックした

通信周りでiPhone 12シリーズまでとの大きな差分は、やはり「デュアルeSIM」への対応でしょう。発表後の記事で筆者が取り上げたように、iPhone 13は4機種とも、eSIM同士のDSDS(デュアルSIM/デュアルスタンバイ)に対応しています。これまでのiPhoneだと、主回線・副回線のどちらか一方は物理SIMにする必要がありましたが、iPhone 13であれば、eSIMだけでDSDSができてしまうというわけです。

ということで、まずはこの機能を試してみました。物理SIMを1枚も入れていない状態で、最初に楽天モバイルのeSIMプロファイルをダウンロードします。この辺の手順はeSIMおじさん……もとい、eSIMに慣れ親しんだユーザーの皆様にはおなじみなので割愛しますが、普通に1回線目としてeSIMを設定しました。ここまでは、従来のiPhoenも同じです。次に、LINEMOのプロファイルを読み込んでいきます。

いつものようにQRコードを読み込んで1回線目を設定

いつものようにQRコードを読み込んで1回線目を設定

楽天モバイルのeSIMプロファイルがダウンロードされた

楽天モバイルのeSIMプロファイルがダウンロードされた

設定途中で、どちらでモバイルデータ通信を使うかや、どちらをデフォルト回線にするかを選択する画面が出てきました。これまでは、eSIMを1回線ぶんしか有効にできなかったため、こうした設定はできませんでしたが、iPhone 13では、2つ目のプロファイルをダウンロードするだけで自動的にデュアルeSIMの状態になりました。物理的なSIMカードは1枚も入れていない状態ですが、きちんと通信は両方の回線でできています。

続いてLINEMOのeSIMをセット。こちらもQRコードを読み込んでプロファイルをダウンロードする

続いてLINEMOのeSIMをセット。こちらもQRコードを読み込んでプロファイルをダウンロードする

 

1回線目がeSIMなのにも関わらず、どちらをデフォルト回線にするかの選択肢が現れた

1回線目がeSIMなのにも関わらず、どちらをデフォルト回線にするかの選択肢が現れた

2つのeSIMがどちらも有効になっていることが分かる。これがデュアルeSIMだ

2つのeSIMがどちらも有効になっていることが分かる。これがデュアルeSIMだ

なお、現状では仕様上、5Gの通信でそのまま通話する「VoNR」という規格も存在しますが、国内キャリアは未対応。そのため、モバイルデータ通信を指定していない方のキャリアは、当然ながら4Gで待受けをすることになります。5G/5GのDSDSではなく、5G/4GのDSDSになるというわけです。

SIMカードスロットを開け閉めする必要がなく、移行も簡単でした。楽天モバイル/LINEMOの両回線は、私物の「iPhone 12 Pro」から移しましたが、SIMピンを取り出す必要なく、画面上の操作だけであっさりSIMカードの情報を移すことができました。SIMピンを挿す際にあやまって側面を傷つけてしまったり、入れ替えまくっているうちにSIMカードの端子が読み取りにくくなったりといったトラブルが起きないのは、eSIMならではと言えるでしょう。

SIMカードスロットを出し入れする必要がなく、端末に傷をつける心配がない。ケースを外さないでいいのも便利だ

SIMカードスロットを出し入れする必要がなく、端末に傷をつける心配がない。ケースを外さないでいいのも便利だ

もちろん、どちらの回線も5Gを有効にできました。5Gの設定周りはiPhone 13でも特に変わっておらず、「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能。前者は不要な場合に自動で5Gの接続を切ることでバッテリー駆動時間を増やす設定。後者は“スピード命”のユーザーが常に5Gを有効にしておく設定です。また、5G接続時やWi-Fi接続時にFaceTimeやストリーミング動画などの画質を自動で上げる機能にも、引き続き対応しています。

ソフトバンクの転用エリアでもきちんと5Gにつながった。転用ながら、速度は速い

ソフトバンクの転用エリアでもきちんと5Gにつながった。転用ながら、速度は速い

iPhone 12発売時は、まだまだスポット的だった5Gのエリアですが、最近では都市部を中心に、かなりの広がりを見せています。特に4Gで利用していた既存周波数帯を5Gに転用しているKDDIやソフトバンクは、そうでないほか2社に比べると、5Gのアイコンを目にする機会は多いような印象があります。転用というと速度が遅いようなイメージを持たれているかもしれませんが、ユーザーの絶対数がまだまだ少ないこともあり、ご覧のようにLINEMOの転用エリアでもかなりの速度が出ます。

この点、iPhone 13は仕様が全キャリア共通なので安心です。アップルから購入しようが、4キャリアから購入しようが、変わらず全社の5Gを利用でき、主要バンドにもきっちり対応しています。5G用に割り当てられた新周波数帯のn77、n78、n79だけでなく、1.7GHz帯を転用したn3や、700MHz帯を転用したn28も利用できます。どのキャリアのSIMカードを入れても、主要な周波数でしっかり使えるのはiPhoneならではと言えるでしょう。

「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能なのはiPhone 12のときと同じ

「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能なのはiPhone 12のときと同じ

iPhone 13が搭載するiOS 15は、5Gの利用範囲を拡大しています。具体的には、設定の「データモード」を「5Gでより多くのデータを許容」にしておくと、今まで以上に多彩な場面で5Gを通信経路として選択するようになります。具体的には、iCloudへの自動バックアップに5Gを利用したり、十分な速度が出なかったり、セキュリティ上不安があったりするWi-Fi接続時に5Gで通信したりと、これまでよりもモバイルデータ通信でできることが増えています。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、iCloudの自動バックアップに5Gが使われるなど、iOS 14までより用途が広がっている

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、iCloudの自動バックアップに5Gが使われるなど、iOS 14までより用途が広がっている

デュアルeSIMやiOS 15に対応したことを踏まえると、iPhone 13シリーズは5Gをより生かしやすい端末と言えるかもしれません。一方で組み合わせが多彩になった結果、思わぬトラブルが起こることも懸念されます。記憶に新しいところでは、デュアルSIMのデータ通信専用SIMで通信している際に緊急通報をすると、そのままデータSIMで発信してしまい、電話がかけられないという不具合が明らかになったばかりです。eSIM同士で挙動が違うのかどうかの確認が増えると、検証にはさらに時間がかかるようになってしまうかもしれません。

(石野純也。Engadget日本版より転載)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。