Isotropic Systemsが新しいコンステレーションを最大限に活用する衛星アンテナで42億円を調達

英国のIsotropic Systems(アイソトロピック・システムズ)は、同スタートアップが「定員超え」と主張する投資ラウンドで4000万ドル(約42億円)を調達し、2022年を目標とする次世代ブロードバンド端末の生産段階に入る。これにより、同社が調達した資金の総額は6000万ドル(約63億1000万円)となった。今回のシリーズB投資ラウンドはSESが主導し、べンチャー投資側ではBoeing HorizonX、Space Angels、Orbital Venturesが参加。さらに、英国政府の助成金も含まれている。

Isotropicの事業の中核は、新しいタイプのブロードバンド端末だ。複数の周波数にまたがった通信が可能で、同時に複数の衛星ネットワークに、個々の信号の品質や通信速度を一切落とすことなく接続できるというものだ。つまりその最終的な製品は、OneWeb(ワンウェブ)、SpaceX(スペースエックス)、Intelsat(インテルサット)、SES、Amazon(アマゾン)などの現在整備されつつあるいくつもの衛星ブロードバンドネットワークに、地上で同時に接続して利用できる利便性を利用者に提供する。

同スタートアップは、英国のレディングに2万平方フィート(約1860平方メートル)の試験と予測のための施設を開設し、最初の実用版地上端末の生産を2022年までに開始する予定だ。この完成版が宣伝どおり機能すれば、衛星ネットワークの接続プロバイダーにとっても、一般ユーザーにとっても大きな前進となる。なぜなら衛星ネットワークを使おうとするユーザーは、利用可能なサービスから1つを選ぶ必要はなく、たった1つのハードウェアソリューションで複数のネットワークに対応でき、その中で最善の通信速度を享受できる上に、ネットワーク冗長性も獲得できるからだ。

関連記事:通信衛星企業OneWebが36基の衛星をロシアで打ち上げ、2020年春の破産申請を乗り越え

経済的に合理性がある限り、その恩恵は明らかだ。たとえば国際線の飛行機でWi-Fiを利用する場面を想像してみてほしい。どう控えめにいっても、飛行機で使えるネットワークは安定性が低い。通信可能な範囲や品質の急激な低下は日常茶飯事だ。最高の条件が整ったときですら、速度が上がらないことが多い。Starlink(スターリンク)などのネットワークは、こうした数ある昔ながらの問題を改善したいと考えているが、さらに上をいくのが、複数の衛星ネットワークに同時に接続できるこのソリューションだ。必要に応じてネットワークを切り替えつつ常に最良のネットワーク品質を保ち、速度をさらに向上できると思われる場合には、利用可能な周波数帯域も組み入れる。

Isotorpicの潜在顧客は、軍事、政府、民間の各市場のブロードバンドから低データ速度のIoTの分野にまで広がっている。今回調達した資金により同社は、その画期的な製品の生産規模の実現性と、約束どおりの有効性の実証を可能にするだろう。

カテゴリー:宇宙
タグ:Isotropic System資金調達衛星コンステレーションブロードバンド

画像クレジット:Isotropic

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。