ITで不透明な業界に挑む、追加費用なしの定額リフォームEC「リノコ」が2億円調達

ネットを通じてリフォームを依頼できるサイト「リノコ」を運営するセカイエは28日、ニッセイ・キャピタルが運営するファンドを引受先とする2億円の第三者割当増資を実施した。リノコは施工店と消費者の間に入ることで、施工店による強引な販売や追加料金の請求を排除することをうたっている。料金体系が不透明なリフォーム業界にインターネットを武器に参入することで、適正な相場を形成したいのだという。調達した資金は主に広告宣伝や採用にあて、全国展開を強化する。

矢野経済研究所によれば、2012年の住宅リフォーム市場規模は約6兆3000万円。業界には圧倒的な市場シェアを獲得するプレイヤーは存在せず、中小零細企業の売り上げが75%を占めている。大手不在のためにサービスが適正化されていない部分もあるようで、見積もりに追加料金が発生するといったトラブルも少なくない。そこでリノコは施工店とユーザーの接点をなくし、問い合わせや連絡は自社のコールセンターを経由してやりとりしている。セカイエ代表取締役社長の高間舘紘平氏は、「腐った慣習がはびこっている業界に適正な相場をもたらしたい」と語る。

サービスの流れ

リノコが手がけるのはクロスの張り替えやキッチン、お風呂、トイレ、洗面台の交換など。見積もりには材料費や工事費、人件費などリフォームに必要なすべての費用を記載し、例えばクロス貼替えは6帖で3万9800円などと決まっている。価格は競合サイトと比べて最安値ではないが、リノコ経由で施工店に直接発注し、二次請けや三次請けといった中間マージンを排除することで業界標準よりも3割ほど安い価格を設定しているという。材料はこれまで施工店経由で仕入れていたが、2013年12月からはリノコ側で一括仕入を順次開始したことで、仕入れ値を下げている。

サービスの提供地域は日本全国。北海道から沖縄までの工務店や職人など300社と業務提携している。施工店側としては、通常業務の空き時間にリノコ経由で受注した仕事を行うことで稼働率をあげられることがメリットだ。この仕組みは、2月に14億5000万円を調達したネット印刷「ラクスル」や、昨年12月にサービスエリアを全国に拡大したネット宅配弁当「ごちクル」と似ている。前者は印刷会社、後者は飲食店を組織化し、ネット経由で受注した案件を通常業務の空き時間に依頼している。

リノコは全国一律で工事の品質を担保するために、ユーザーアンケートやコールセンターとの応対内容にもとづいてに施工店を採点し、ランク付けしている。同一地域内でランクが高い施工店には優先的に仕事を依頼し、反対に評価が悪い施工店は取り引きを停止している。実際にこれまで約100社との提携を解消したが、クレームをなくすための品質管理としては欠かせない仕組みなのだという。品質を担保するサービスとしてはこのほか、施工箇所の1年工事保証とメーカー保証も付けている。

主な利用者は50~60代の持家・分譲マンション居住者やマンションオーナー。地域別では東京が26%で最も多く、千葉、埼玉、神奈川を含めると5割を超える。受注件数は2013年11月期で1200件。現在は月間220件ペースで受注していて、今期は5000件を上回る見込みだ。年内にはハウスクリーニングや太陽光パネル設置などのメニューを増やし、今期売り上げ10億円を目指す。

セカイエは大阪に拠点を置くスタートアップ。リノコはもともと、低価格葬儀サービス「小さなお葬式」を提供するユニクエスト・オンラインの新規事業として始まったが、2013年にユニクエスト社が買収。これに伴い代表取締役を務めていた田中智也氏が退任し、新たにセカイエを設立してリノコを継続していた。その後、当事JAFCOでユニクエストのリードインベスターとして支援していた高間舘氏にラブコールを送り、田中氏に代わって社長に就任した経緯がある。ちなみに、小さなお葬式はリノコと同じく、不明瞭な価格設定が横行する業界にネットを武器に参入し、追加料金なしの定額プランを提供している。

セカイエ代表取締役社長の高間舘紘平氏


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TechCrunch Japan

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