Just Verticalのエレガントな家具で家庭でも水耕栽培ができる

屋内栽培産業は拡大傾向にある。水耕栽培(通常大きな倉庫で土壌を使わずに作物を栽培する)と伝統的な温室を利用する農園は、主にレタス、ホウレンソウ、ルッコラなどの葉物野菜向けに、私たちの食物サプライチェーンの不可欠な一部となり始めている。

垂直水耕栽培は、伝統的な栽培に代わる持続可能な選択肢として捉えられている。水の使用量は95%少なく、土壌への環境負荷を抑えることができ、都市部の農園は食の砂漠エリアや食料品店の近くに設置することで輸送コストを削減できる。しかし、屋内農場の照明への大量のエネルギー使用は、農業からの炭素排出量の抑制を妨げてきた。

この業界のリーダーAeroFarmsは2021年中に上場することを発表した。サンフランシスコを拠点とする垂直農園企業Plentyは、カリフォルニア州北部のSavewayの17店舗への進出を果たした。東海岸の都市農業企業Gotham Greensは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による景気後退を乗り切り、コロラド州カリフォルニア州などの地域に屋内農園の建設を進めている。全体として、世界の垂直農法市場は2026年までに58億ドル(約6400億円)に達し、年平均成長率は14%になると予想されている。

一方、カナダを拠点とするスタートアップJust Verticalは、屋内栽培のムーブメントに家庭菜園を組み込もうとしている。同社の2つの製品AevaとEveは、水耕技術を利用して月に8〜10ポンド(約3.6〜4.5Kg)の作物を栽培できるエレガントな家具として販売されている。

これらの製品は木製のキャビネットをベースにしており、成長機構は約5フィート(約1.5m)上方に伸びている。AevaとEveは葉物野菜、ズッキーニ、イチゴ、ハーブ、ピーマン、キュウリの栽培が可能だ。同社は現在、花の分野にも進出しており、マイクロブルワリー向けのホップの栽培にも対応する。またハードウェアの販売以外にも、種やピートモスのポッドのサブスクリプションモデルを提供している。

「1年中栽培に専念することが難しい人や、裏庭やバルコニーがない人などの利用を想定しています」と共同創業者のKevin Jakiela(ケヴィン・ジャキーラ)氏は語る。「ただのカウンタートップバージョンになることは意図しませんでした」。

競合にはClick and GrowAerogardensなどがあり、主にハーブ向けの製品を手がけている。一方で、Tower GardenZipGrowといった大規模な競合も存在する。だがJust Verticalは、他社のバージョンとは異なる方向性に目を向けており、装飾と菜園の両立を目指している。

ジャキーラ氏によると、Just Verticalの最大の市場はマンションなどの住居で、レストラン、学校、カフェ、バーがそれに続く。また同社は、オフィス空間への関心についても、純粋に食を重視するというよりはインテリアとして捉えている。

「マンションや住宅内のアメニティのような、ビルド済み製品の一部になりたいと思っています。食洗機や洗濯機を選ぶように人々が選択する、電子レンジに準ずるような存在です」とジャキーラ氏はいう。「IKEAのような大型小売店への参入も考えています」。

同社はこれまでに1500台を売り上げ、District Venturesからシード投資を受けた。同ファンドはArlene Dickinson(アーリーン・ディッキンソン)氏が設立し、ジェネラルパートナーを務める。(同氏はShark Tank[アメリカ版「¥マネーの虎」]のカナダバージョンの番組Dragon’s Denに、Shark TankではShark[サメ]と呼ばれる投資家として出演している。)Just Verticalは現在、9月のシリーズAを目指している。

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ただ、Verticalの600〜1000ドル(約6万6千~11万円)という価格の高さを考えると、食料安全保障や環境問題への大きなインパクトに直面している家庭に対して、実際に変化をもたらす可能性は低いとも言えるかもしれない。

現在Just Verticalがターゲットとしている消費者は「Whole Foods(アメリカの高級スーパー)の買い物客」であることをジャキーラ氏は認めている。それでも同社のウェブサイトでは、人々が自分たちの食料を栽培することにより、1億1200万マイル(約1億8024km)超の食料輸送が節約されたことや、200万リットルを超える水が節約されたことなど、製品の環境上の利点を示唆するデータを取り上げて、自社のミッションを強調している。会社が規模を拡大するにつれて、社会的、ビジネス的なインパクトが生み出されていくことをジャキーラ氏は期待する。

「ホビイストから脱却し、より大きなインパクトを求めていきたいと思っています」と同氏は語る。「Aevaを使うことでコストのオフセットを可能にしたレストランでの実績に追随する形で、食料品店の前線に立ちたいと考えています。社会的な要素に照準を合わせた、小売ネットワークと分散型ネットワークの構築を進めていきます」。

Just Verticalは、ハイエンドの消費者側から始めて市場への適合性を証明し、実証済みの成功を携えて食料品店に向かうことで、真にインパクトを与えることができると判断した。

「特にスタートアップにとって、食料品店のドアをノックして『こんにちは、アイデアがあります』と切り出すことにはかなりの困難がともないます」とジャキーラ氏。「実績と適合証明を持って出直すように言われるか、8カ月から12カ月のプロセスを保証もなく繰り返すことになるかでしょう。何度も繰り返すことになります。食料品店側としては、自ら新機軸に着手するという危ない橋は渡りたくないものの、同時に後れを取ることは避けたいと思っているのです」。

画像クレジット:leungchopan / Shutterstock

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(文:Jesse Klein、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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