LiDAR開発会社OusterがSense Photonicsを買収、狙いは自動車業界

2021年3月にSPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場したLiDAR企業のOuster(オースター)は、ソリッドステート型LiDARのスタートアップ企業であるSense Photonics(センス・フォトニクス)を、月曜日の市場終了時に約6800万ドル(約75億7000万円)と評価された全株式を取得して買収すると発表した。

この買収が完了したら、Ousterは新たな事業部門としてOuster Automotive(オースター・オートモーティブ)を起ち上げ、現在のSense社のCEOであるShauna McIntyre(シャウナ・マッキンタイア)氏が、同部門を率いることになるという。この新事業部門では、Senseの最長測定距離200mのソリッドステート型LiDARを、Ousterが自動運転車用として計画しているマルチセンサーLiDARスイートに統合する。サンフランシスコを拠点とするSenseが開発したLiDARの特長は、以前TechCrunchの記事でも説明しているように、視野角の広さである。

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ニュースリリースによると、Ouster Automotiveは5社の自動車メーカーとの交渉進展を目指すというが、そのような可能性のある提携についての詳細は明らかにされなかった。もしこれらが確実なものになれば、2025年か2026年に生産が始まる見込みだという。

LiDARは、ほとんどの自動運転システムで重要な役目を担うセンサーだ。LiDARとは「light detection and ranging(光による検知と測距)」の略で、レーザーを使って離れた位置にある物体までの距離を測定し、周囲の3Dマップを作成する。Waymo(ウェイモ)やArgo AI(アルゴAI)などの企業が開発している自動運転システムにとって、LiDARはレーダー、カメラ、ソフトウェアとともに欠かせないものとなっている。

2021年2月、OusterのCEOであるAngus Pacala(アンガス・パカラ)氏は、ポッドキャスト「Shift(シフト)」で、LiDAR業界の将来は統合が進むだろうと述べていた。「LiDAR企業は今後5年以内に3~5社になるだろう」と同氏は語ったが、今回の新たな買収は、Ousterが同氏の予測を現実のものとする動きの先頭に立つことを示している。

Ousterは2021年前半に19億ドル(約2120億円)規模の取引で白地小切手会社との合併を完了し、競合のLiDAR企業であるLuminar(ルミナー)、Innoviz(イノヴィズ)、Velodyne(ヴェロダイン)と同様に、SPACルートで株式市場に上場を果たした。Ousterの株価は、2月に15.39ドル(約1715円)の年初来高値を記録したが、現在は7.41ドル(約826円)で取引されている。

Ousterの広報担当者にTechCrunchが確認したところによると、同社はSenseで働く従業員80人の大半がマッキンタイア氏とともにOusterに加わることを期待しているとのこと。

広報担当者は、次のように続けた。「Ousterの視点は常に、自動車製造会社が求めているのは、大量生産が可能で、数百ドル(数万円)という低コストで車体に組み込むことができ、長距離から短距離までカバーする、ソリッドステート型LiDARのマルチセンサースイートであるということを見据えています。それこそが、当社が提供しようと考えているものです」。

画像クレジット:Ouster

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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