LINEで生理日を予測、パートナーとも共有できる「ペアケア」にサブスクプラン追加

LINEを使った生理日予測サービス「ペアケア」を提供するEntaleは3月26日、有料のサブスクリプションプラン「ペアケアプレミアム」の正式リリースを発表した。

この手の生理日予測では、iPhoneならデフォルトで使える「ヘルスケア App」の周期記録や、ダウンロード数1300万を超える大御所「ルナルナ」をはじめ、複数のアプリやサービスが既に存在する。これまでのサービスと後発のペアケアとでは、どこが大きく違うのか。Entale代表取締役CEOの酒匂ひな子氏は「LINEで友だち追加するだけで使えること」かつ「パートナーのLINEアカウントと連携でき、情報共有できること」を挙げる。

LINEならアプリなしでも男性に「生理」の情報を共有できる

女性の生理周期の長さや“ピリオド”の前後に現れる症状は、個人差がとても大きい。しかも日本では、生理について、女性同士でも話すことがためらわれる風潮もある。男性であるパートナーにはなおさら相談しづらく、理解してもらうことを我慢したり諦めたりする人も多いだろう。

ところが実は、男性の側ではパートナーの女性が生理中かどうかや、今の体調、これからの予定を知りたがっている人が少なくなく、約7割に上るという調査(マイナビウーマン、2015年4月)もある。具合の悪いパートナーを支えてあげたい、一緒に旅行に行くなら彼女の体調が良いときを選びたい、といったニーズもあるだろうし、「雰囲気で察してよ!」と後から怒られるよりは、はじめから言ってくれた方がいい、ということもあるのかもしれない。

女性の健康・生活に関わる課題をテクノロジーで解決する「FemTech(フェムテック)」と呼ばれる領域は、日本国内でも盛り上がりを見せており、2025年の国内市場規模は約5兆円と予想されている(Frost & Sullivan社、2018年1月)。そうした背景と市場環境の下、Entaleでは「女性はもちろん、男性も生理についてパートナーと語れるようになれば、お互いにより生活しやすいのでは」とペアケアを開発したという。

ペアケアは、LINEで友だち登録をし、女性の場合は生理期間、生理周期と生年月日などの簡単な質問に答えるとすぐに利用開始できる。カレンダー画面では、生理日を記録したり、予測日を確認したりすることが可能。経血量や今の身体的・精神的症状、ピルの服用状況を記録しておくこともできる。

またパートナーに招待リンクを送り、LINEアカウントと連携すると、カレンダーや今日の調子など、情報を共有することができるようになる(ちなみにパートナー共有は女性同士でも可能)。パートナーが旅行や外出の予定を立てやすくなる、今まで相手に明示的に言えなかった・聞けなかった体調や生理の状況を間接的に伝える・知ることができるといったメリットがある。

プラットフォームとしてLINEを選んだ理由について、酒匂氏は「毎日のコミュニケーションで使っているツールだから、誰にでも使いやすい。また共有機能を持つ他社アプリもあるが、LINEなら、インストールすることのハードルもなく、アプリのアイコンが画面に表示されることもないため、男性でも使いやすい」と説明する。

インターフェースについては、こんな工夫もしていると酒匂氏は言う。「アプリでよくあるのが、生理周期や症状の入力が面倒で、忘れることも多いという点だが、日常的に使うツールだから忘れにくくなる。またセンシティブで憂鬱な情報の入力に対して、かわいいクマのキャラクターがアクションをし、アドバイスを届けるようにして、『入力=作業』感をなくすようなユーザー体験を心がけている」(酒匂氏)

トーク画面でクマのキャラクターがアドバイス。記録忘れを防ぐ工夫も。

こうした工夫の結果もあって、生理日以外の症状等の情報も7割のユーザーが入力してくれているということだ。

「女性にはメモや手帳に予定を入れるのが楽しいという人が多く、記録すること自体にモチベーションがあることは分かっている。だから、記録のしやすさにはこだわっている。デザイナー出身ということもあり、ユーザー体験の面ではほかには負けないようなプロダクトにしたいし、自信もある」(酒匂氏)

「将来的には『痛い』『生理が来るのが遅い』『生理周期がズレている』『この時期は眠い』などの情報を元に、ユーザーが個人的に気付きを得て、どうすればより快適になるか、というところまでやりたいと考えているので、症状を入れてもらうことは大事」と酒匂氏。「かわいいアイコンなども活用して、入力を楽しく、続けられるようにしている」と語る。

情報入力はアイコンタップで行える

初日の登録4000件、男性ユーザーが女性に勧めるケースも

酒匂氏はエウレカでデザイナーのインターンとして、2011年4月からアプリ「Pairs」の立ち上げに携わり、入社した後、2016年からはプロダクトマネジャーも兼任してきた人物だ。2018年2月にエウレカを退職してからは、フリーランスとして美容医療の口コミサービス「TRIBEAU」やママ友マッチングアプリ「mamagirl-link」などのサービスに関わっている。

Entale代表取締役CEO 酒匂ひな子氏

エウレカ退職の時点から、デザイナーとしての独立というよりは、プロダクトによる事業運営で起業し、「デザイナー出身起業家のロールモデルになりたい」と考えていた酒匂氏は、2019年3月よりペアケアを作り始めたそうだ。

2019年9月までの半年間は、マネタイズを含めたプロダクトの方向性を検討していたというが、「まずは使ってもらわなければ分からない」とリリースを決断。FemTechの盛り上がりや、同時期に立ち上がった“生理をもっとオープンに語ろう”というムーブメントも後押しとなった。

リリースされた9月6日当日だけで、4000人の登録があったというペアケア。「Twitterで知ってもらったエンジニアやデザイナーを中心に、男性からの登録も多く、男性が女性のパートナーを誘ってくれた」(酒匂氏)とのことで、現在も男性ユーザーが全体の約2割を占めるという。登録数は開始月の9月末には1万人に到達、2020年3月現在で6万人を突破した。

実はパートナー共有機能については、リリース時点で入れるかどうか迷っていたと酒匂氏はいう。「他社では共有機能は有料で提供しているところもある。しかし、LINEで生理周期の管理ができるというだけでは、プロダクトとして弱いし、“生理をもっとオープンなものにしよう”というムーブメントともそぐわない。パートナーにも生理について知ってもらうことは大切なこと。だからこそ、押しつけがましくなく、無料でも使えるLINE上のプロダクトとしてスタートすることにした」(酒匂氏)

そんなペアケアに、今回追加されたのが有料のサブスクリプションプラン、ペアケアプレミアムだ。プレミアムプランでは、「排卵予定日3日前に通知を送信」「基礎体温の記録やグラフ閲覧」「最長2年分のデータ確認」「フリー記述のメモ欄」といった機能が利用できるようになる。

ペアケアプレミアムの利用料金は、現在はキャンペーンにより、1カ月プランで400円/月、12カ月プランでは3000円(250円/月)の特別価格となっている(通常は12カ月プランで312円/月)。

ところで、ペアケア自体はもともと「妊活」を謳っていない。「多様化の時代、誰もが妊娠したいと思って、生理周期を管理しているわけではない」(酒匂氏)というのがその理由だ。男性から見たときに「妊活アプリ」に見えてしまうと、元の趣旨から外れるということもある。

ただし、パートナー共有機能があることで、妊活で利用したいというニーズは確実にあった。「問い合わせは月に何十件とあった」そう。そこで、妊活で求められる基礎体温の記録や排卵日の予測といった機能を、オプションとして提供することにしたと酒匂氏は説明する。

マネタイズ面では「広告は入れたくない。また海外アプリなどでよくある、無料でサービス提供する代わりにデータを他社に提供するモデルも批判が強く、取り入れたくなかった」と述べている酒匂氏。「ユーザーにプロダクトの価値を感じてもらって、長く運営したかったので、オプションでのサブスクモデルを採用した」という。

「将来的には6万人のユーザーをもっと拡大し、この領域で長期的には国内ナンバー1のサービスを目指したい。また個人差の大きな分野のサービスとして、機能面ではパーソナライズも進めたい。自分の状態を可視化することで、医師への説明や、会社での生理休暇申請の際などにも役立ててもらえる。ピルや漢方薬の選択なども含め、ユーザーのセルフケアに参考になるようなサービスとしていきたい」(酒匂氏)

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TechCrunch Japan

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