LINE NEWSのMAUが1200万人突破、ヤフーの牙城を崩せるか

編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE DIGEST NEWS」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)
編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)

編集部が選んだ話題のニュースをLINE経由でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」(左)、雑誌ライクな「LINE NEWS マガジン」(中)、「LINE NEWS」アプリ(右)

もう数年来言われてることだけど、PC時代の王者・ヤフーの牙城がスマホ時代になって崩れる時がいよいよ近づいてきたかもしれない。

5月の「LINE NEWS」月間アクティブユーザー数(MAU)が1200万人を突破した。MAUはLINE NEWSのアプリ、および公式LINEアカウント経由で、LINE NEWSのウェブページに月1回以上アクセスしたユニークユーザーの合計。双方で重複ユーザーはあるものの、前月比469万人増と急成長を遂げている。

重複というのは、アプリを立ち上げてニュースを閲覧しているユーザーと、LINEを通じて話題のニュースを1日に3回ダイジェスト配信する「LINE NEWS DIGEST」を読んでいるユーザーのこと。重複ユーザー数は明かされていないが、LINE NEWSを担当するLINE執行役員の島村武志氏によれば、「アプリは能動的にニュースを読みたい層、LINE NEWS DIGESTはライトな層で住み分けがあるので、重複は多くない」という。

国内のニュースアプリは、昨年12月にMAUが400万人と発表したスマートニュース、MAUを公表していないグノシーなどがしのぎを削っている状況。ニュースアプリに限定しなければ、Yahoo! JAPANアプリやスマホブラウザー経由で毎月2300万人が読んでいる「Yahoo!ニュース」が圧倒的なユーザー数を誇る。島村氏はYahoo!ニュースを「明確に意識している」と言い、“巨人”超えを狙っている。その一端を担うのが、4月27日にスタートした「LINE NEWS マガジン」だ。

MAU急増の牽引役となった「マガジン」とは

LINE NEWS マガジンは、ユーザーが好みに応じて選んだ「マガジン」を週1〜2回程度、LINE NEWSの公式LINEアカウント経由でプッシュ配信する。ニュースアプリによくある「経済」や「テクノロジー」といった単純なカテゴリ分けはせず、テーマを絞った全21マガジンを用意している。

登録者が多いマガジンとしては、見るだけで旅行気分が味わえる「なにここ行きたい!」(約65万件)、旬なレシピや話題のレシピを届ける「これは使えるレシピ」(約63万件)、女子力を上げる情報を厳選する「女子力UP!」(約56万件)などがある。創刊を記念して無料でLINEスタンプを配布したことも後押しし、5月末時点でマガジン登録者数は合計636万人。LINE NEWSのMAU急増の牽引役となった。

LINE NEWSのLINE公式アカウント経由で届く「マガジン」。別アプリを立ち上げることなくニュースがプッシュで受け取れる点や、ニュースを“見る”だけで内容を把握できるのが特徴だ

LINE NEWSのLINE公式アカウント経由で届く「マガジン」。別アプリを立ち上げることなくニュースがプッシュで受け取れる点や、ニュースを“見る”だけで内容を把握できるのが特徴だ

各テーマは雑誌のようにコンセプトを決めているのが特徴だ。例えば、「野郎メシ」創刊の際にLINEが発表したコンセプトはこんな感じになっている。

肉!肉!肉!とろける極旨な「お肉」の情報や、パンチの効いた「麺」や「ご飯もの」など、とにかくガッツリ食べられる男のメシ情報。届くと思わず腹がへる「野郎系」なグルメ情報をまとめてお届けするマガジンです

で、マガジンの何がウケているのか? ということだけど、LINE NEWSを担当する島村武志氏によれば、こういうことらしい。

「欲しい情報がちゃんと届くことですね。LINE NEWSのカテゴリは分類学上で何に属するかという話ですが、マガジンはユーザーの志向性に基づいています。テーマに特化することでユーザー層が狭まる? そんなことはないですよ。例えば、動物萌えっていうマガジンがありますが、動物を見て癒されたいって普遍的じゃないですか。マガジンはそういう共通性のあるテーマを揃えています。」

タップされるかどうかが本質的な価値じゃない

もうひとつマガジンで特徴的なのは、イメージ画像とシンプルな記事タイトルで見やすくまとめた雑誌のようなUIだ。

ニュースをチェックするのが日課になっている人ならともかく、そうでない人は忙しくなるとニュースを見る時間を取りにくい。そんな時でもわざわざアプリを立ち上げず、LINEを通じて友達が画像を送るような感覚でニュースが届く。ニュースを“読む”のではなく、“見る”だけで内容が把握できれば、“ニュース離れ”の層も取り込めるということなのだろう。

「LINE NEWSの価値は、今までニュースを読まなかった人にも、ニュースを身近な存在にしたこと。我々は情報源のニュースを集め、人力で編集しているので記事を読んでもらいたいですが、タップされるかどうかが本質じゃない。動物萌えマガジンでアザラシの画像を見て、『今日もがんばろう!』と思ってもらえるだけでも価値があるはずなんです。」

LINE執行役員の島村武志氏

LINE執行役員の島村武志氏

ヤフトピは「間違いなく意識している」

スマホ向けニュースアプリの多くは、動画広告とネイティブアドが収益源。そのため、記事がタップされるかどうかが生命線だ。「タップされるかどうかが本質的じゃない」と言うLINE NEWSは、収益化をどう考えているのか?

「タップを意識するのはPV型のビジネスモデルだから。PVを軽視するつもりはないですが、ユーザーを騙しちゃダメと思っています。今は焦ってPVをお金に換えるよりも、LINE NEWSを愛してくれる人、つまりMAUを増やす段階。なのでPVは全く追いかけていません。ただ、想定よりも早く1000万MAUを超えたので、そろそろマネタイズのテストはしたいですね。」

島村氏は、2013年7月のLINE NEWS創刊時から「ヤフトピ超え」を強く意識していた。昨年12月、ヤフーは「スマホのYahoo!ニュース利用者は2300万人」というブログエントリを投稿。新興ニュースアプリとはユーザー数で桁が違うことをアピールした。LINE NEWSのMAUと比べても2倍近くのユーザー数を誇っているが、島村氏は現在も「ヤフーを超えるのは、目標として確実に存在しています」と言い、その考えは揺らいでいない。

「Yahoo!ニュースがあるからこそ、カウンターとしてのLINE NEWSがあると思っています。ヤフーさんの13.5文字の見出しが並ぶ、磨きに磨かれた世界観は存在してますけど、スマートフォンの時代になって感覚は変わった。その枠組みを我々がどう壊せるか。例えばマガジンで極端にビジュアル中心にしているのは、ヤフーさんとの対比で意識している側面はありますね。」

イケてる友達に、LINE NEWSはなりたい

「LINE NEWS創刊時からブレてないんですけど、キーワードは『友達』なんです。記事は人力で編集し、本文の語り口が柔らかいのも、友達でありたいから。マガジンで言えば、普段ニュースを積極的に見ている人でも、もう少し深い情報を欲している人に『これ読んでおくといいよ』ってヒントを与える。そんな情報通のイケてる友達になりたいんです。」

LINE NEWS マガジンは「もっともっとニッチなニーズにも答えていきたい」と語る島村氏。時期は明らかにしなかったが、将来的にはマガジンの編集をオープン化することも視野に入れている。

マガジンは現在、LINE NEWS編集部がピックアップしたニュースをまとめて配信する形態。これを外部のユーザーが編集して配信できるようにする。LINEはこれまでも、外部のユーザーが「スタンプ」を制作できるようにして、売上に報酬を支払ってきたが、マガジンでも同様の仕組みを検討するという。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。