London Business SchoolとLocalGlobeが女性、黒人、アジア人に力を入れる新しいVCコースを発表

今週、英国で開催されているBlack Tech Fest(ブラック・テック・フェスト )に足並みを揃えるように、VC業界に入りたい人たちを教育するための新しいエグゼクティブ教育コースが英国で発足した。このコースはこれまで過小評価されてきたグループ、特に女性、黒人、アジア人、その他のマイノリティを対象にすることを意識している。

このたびLondon Business School(ロンドン・ビジネス・スクール)とヨーロッパを代表するシード投資家の1つであるLocalGlobe(ローカルグローブ)が共同で、VC業界全体が必要とする役割への正式なビジネス教育を提供するために、新しいプログラムを作成した。そのNewton Venture Program(ニュートン・ベンチャー・プログラム)コースは、VC投資家からリミテッドパートナー、エンジェル投資家、アクセラレーター、技術移転担当者までを含む、ベンチャーエコシステムにおける投資側の役割の全範囲をカバーしている。このプログラムの目的は、人びとがベンチャーキャピタル業界に参加できるルートを広げながら、業界のスキルを底上げすることだ。

コースでは性別の割合が半々になることを目指しており、同時に少なくとも半数が黒人、アジア人、その他のマイノリティになるように考慮されている。コースは初心者もしくは中堅を広く対象としている。

毎年、最大60人の学生からなる2つのクラスが用意され、最初のオンラインプログラムは2021年4月に開始される予定だ。また最初の実キャンパスクラスは、2021年10月に開始される予定となっている。世界中のどこからでも応募することが可能だが、大部分は英国、EU、アフリカ、イスラエルからと予想されている。

オンラインのみのプログラムには2050ポンド(約27万9000円)、中堅の専門家を対象としたLondon Business Schoolキャンパスでの対面式プログラムには1万6000ポンド(約217万8000円)の費用がかかる。どちらのプログラムも最大100%の奨学金を利用することができる。

この動きは、英国研究技術革新機構(UKRI)の一部であるResearch England(リサーチ・イングランド)からの助成金によって支えられており、Newtonプログラムは、コースに協力する機関やVC企業を募集している。LocalGlobeとPhoenix Court Works(フェニックス・コート・ワークス)は、20のデジタルスカラーシップを後援することを約束している。

このプログラムに参加することで、受講生たちはa16z、Benchmark、USVなどのトップパフォーマンスを叩き出すグローバルVC企業の専門家、および経験豊富な起業家とその創業チームに直接アクセスすることができる。例えばLuisa Alemany(ルイーザ・アルメニー)氏、Julian Birkinshaw(ジュリアン・バーキンショウ)氏、Gary Dushnitsky(ゲイリー・ダシュニツキー)氏、Florin Vasvari(フローリン・バスバリ)氏といった、VC業界の学術的権威者たちが重要な概念を教え、ケーススタディのディスカッションを主導し、参加者たちと最新の研究知見を共有する。

そして現役投資家とエコシステムの専門家たちが、取引を見つけ獲得する方法、ベンチャーの財務および法務、資金管理、ポートフォリオ企業を支援する方法といったテーマで、クラスを指導する。学生はまた業界の円卓会議、近隣の会合に参加し、Newton同窓会ネットワークの一員になることができる。

始まりと終わりがLondon Business Schoolで開講されるキャンパスプログラムは、トータル5年から15年の実務経験を持つ人間を対象としている。これには、すでに投資家である者だけでなく、投資家になりたいと考えている強力な運用バックグラウンドを持つ参加者も含まれる。シラバスに含まれるのは、スポンサーVC企業での研修、一流のベンチャーキャピタル投資家やリミテッドパートナーの側での実習、そして技術移転オフィス、アクセラレーターオフィス、その他のパートナーやスポンサーとの協業体験などだ。各参加者はフィンテックからAIまで、特定の業界とテクノロジーをカバーする1対1のメンタリングや徹底した詳細コースの恩恵を受ける。

Atomico(アトミコ)の信頼されているState of European Tech(ヨーロッパテック企業の状況)レポートによれば、ヨーロッパの創業者に黒人の占める割合はわずか0.9%に過ぎない。また、より広いITセクターであっても、それほどぱっとはしていない。英国コンピュータ協会(The Chartered Institute for IT)によれば、2019年の英国には26万8000人の黒人、アジア人、その他のマイノリティ(いわゆるBAME)のITスペシャリストがいた。これは全IT従事者の18%を占めていて、過去5年の間に(16%だった2015年と比べて)2ポイント上昇している。

Diversity.VCによれば、2019年にはベンチャーキャピタルで働く人材のうち、女性はわずか30%に過ぎなかった。英国ビジネスバンク(The British Business Bank)が発表した2019年のレポート(UK VC Female Founders)によれば、英国で投資されたベンチャーキャピタル投資のうち、女性創業者だけで構成されているチームに投資された額は、1ポンド(約136円)あたり1ペンス(100分の1ポンド=約1.36円)未満に過ぎない。

Newton Venture ProgramのエグゼクティブディレクターであるLisa Shu(リサ・シュウ)氏(上の写真)は声明で次のように述べてる。「世界をリードする次世代のハイテクビジネスを見つけるためには、投資家は私たちの社会の良き代表となる必要があります。【略】Newton Venture Programは次世代の投資専門家を育成する機会であり、ベンチャーキャピタル投資をより広く、より代表的な範囲の意見と経験に対して開放するのです」。

デジタル文化大臣であるCaroline Dinenage(キャロライン・ダインネージ)議員は次のように語る「投資家は、起業家がビジネスの夢を実現する過程における財政的支援とガイダンスによって、テクノロジーセクターで重要な役割を果たしているのです。このセクターは、社会を反映する必要があります。それが正しい事だというだけでなく、ビジネスとしても理に適っているためです。なので、今回の新しいコースの創設は、多様性を高め、あらゆる分野の創業者が成功する機会を増やすための歓迎すべきステップなのです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Newton Venture ProgramLondon Business SchoolLocalGlobeイギリス

画像クレジット:Lisa Shu, Newton Venture Program

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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