電気自動車メーカーのLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)は、700万ドル(約73億円)をかけた工場建設の第1段階を完成させ、来春販売予定の同社初の高級完全電動セダンAir(エアー)生産の準備を整えた。
この工場は、ツーソンとフェニックスを結ぶ州間ハイウェイ10号の中間あたりに位置し、年間3万台の自動車生産能力を誇る。Peter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏がCEOを務めるLucidがうまく人々の心を捉えることができれば、現在99万9000平方フィート(約9万3000㎡)の建設面積を500万平方フィート(約46万5000㎡)に拡張する予定だ。完成すれば、年間40万台の生産能力を有することになる。
まだ1台も販売していない会社にとって、これは野心的な計画だ。しかし、ローリンソン氏は電気自動車とLucidの未来に強気を示し続けている。Lucidは、2021年早々からの工場の次期ステージの建設準備を整えているが、そこでは2023年から次の車種となる完全電動SUVの生産が行われる。
同社は、590エーカー(約239万8㎡)の敷地に、2028年までに4段階に分けて工場を整備する計画を立てている。
今回の第1段階は、Lucidが電気自動車を作る意志を初めて明らかにしたときからおよそ4年後に完成された。これは、いままでなかなか踏み出せなかった記念すべき一歩だ。同社は資本金を使い果たし、新たな投資家探しに苦心していた。2018年9月、ようやくサウジアラビアの主権国家資産ファンドが歩み出て10億ドル(約1040億円)の投資を約束してくれた。
2020年9月に発表された完全電気自動車の高級セダンAirは、走行距離はタイプによって差があるものの最大517マイル(約832km)。テクノロジーと控えめな高級感がデザインの柱になっている。
4タイプあるうちの、16万9000ドル(約1760万円)のフラグシップDream(ドリーム)と、13万9000ドル(約1450万円)のGrand Touring(グランドツーリング)の2つは、ひと足早く2020年中に、この新工場で生産が始まる。この2タイプは、2021年春に出荷が予定されている。残る2つのタイプ、9万5000ドル(約990万円)のTouring(ツアリング)と、8万ドル(約830万ドル)をごくわずかに下回るベースモデルは、それぞれ2021年末と2022年の販売を目指している(これらの価格はすべて、米連邦税額控除適用前のもの)。
Airは、メルセデス・ベンツSクラスに対する電気自動車の答えだ。つまり、デザインもさることながら性能も重視されるわけだが、Airは目玉が飛び出すほどの高性能を誇る。たとえばDreamは1080馬力(約1094PS)、0−60マイル / 時加速は2.5秒。この高出力の影響で、Dreamの走行距離は465マイル(約748km)となる。一方、Grand Touringは800馬力(約811PS)、0−60マイル/ 時加速は3秒。だが走行距離は最大の517マイル(832km)だ。
またAirは32基のセンサー、ドライバーモニタリングシステム、Ethernetベースのアーキテクチャーを備え、高度な運転支援システム(未訳記事)を支えている。これは、ハイウェイでは手放しの運転も可能にする。内装では、ドライバーの正面に湾曲した34インチの5Kディスプレイがあり、ダッシュボードに浮き上がっているように見える。中央にあるもう1つのタッチスクリーンは、格納すると収納スペースが現われる。ハンドルと中央スクリーンの上には、手動で操作するコントローラーがいくつか残されており、音量調整やADAS(先進運転支援システム)、車両に組み込まれたAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)の起動ができる。中央のタッチスクリーンの下のコンソールには、無接触充電器、カップホルダー、USB-Cポート、もう1つの収納スペースがある。
これらすべてを製品化するために、Lucidはそのデザインアプローチとともに高度な製造方式についても宣伝してきた。Lucidでは、スポット溶接ではなくリベットと接着剤を使ったモノコックボディ構造を採用していると話している。現在の自動車は、ほとんどがユニボディデザインだ。つまり、フレームと床とシャシーが最初から一体構造で作られている。モノコックデザインはモータースポーツ用車両によく使われているもので、フレームが外殻となって張力や圧力を分散し、剛性を高める働きをする。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Lucid Motors、電気自動車
画像クレジット:Lucid Motors
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(翻訳:金井哲夫)