Mediumがパートナープログラムを改訂、新たな資格要件と紹介ボーナス制度を開始

編集方針の変更従業員の大量退職など、2021年になってさまざまな出来事が相次ぐ中、Mediumは米国時間8月11日、プラットフォーム上のライターらがコンテンツを収益化するためのMediumパートナープログラムの仕組みを大幅に変更することを発表した。

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2012年に設立されたMediumがパートナープログラムを開始したのは2017年のこと。以来、同プラットフォームは20万人以上の寄稿者に2800万ドル(約31億円)を支払ってきた。当初Mediumは、同社の会員がライターのコンテンツを読むのに費やした時間に応じて支払いを行っていた。Mediumの会員は月額5ドル(約550円)または年額50ドル(約5500円)を支払えば、有料コンテンツを含むプラットフォーム上のすべての投稿を読むことが可能だ。さらに各会員の購読料の一部が彼らが読んだライターへと分配される仕組みで、例えば同社の会員があるライターの作品を読むのに10%の時間を費やした場合、そのライターは会員のレベニューシェアの10%を受け取ることになる。

読まれた時間に応じた収益はこれまでと変わらないものの、Mediumは今後、紹介プログラムによる新たな収益方法を開始する。

これまでは、あるライターの記事を読んでいた読者が30日以内に有料会員に移行した場合、そのライターには、その読者が作品を読んだ時間分のクレジットが付与されていた。新しいモデルでは、パートナープログラムのライターは個人用の紹介ランディングページを持つことになる。このページを経由してMediumの購読を購入した読者がいる場合、ライターはその会員が有料会員であり続ける限りその会員の購読料の半分を受け取ることができるという仕組みになる(そこから2.9%+0.30ドル[約33円]の支払い処理手数料が差し引かれる)。つまり、あるライターが自分を通して100人の読者がMediumの月額会員に登録したとすると、そのライターには月額227ドル(約25000円)の報酬が支払われることになる。

画像クレジット:Medium

ただし、パートナープログラムに参加するには100人のフォロワーがいること、Mediumで少なくとも1本の記事を公開していること、特定の地域に住んでいることなど、より厳しい条件が課せられることになる。また、こういった新しい資格要件を満たしていても、6カ月間何も新作を公開しなければパートナーの資格を失う可能性がある。それでも、これまでの仕組みではパートナーになっただけでは金銭的な報酬は保証されておらず、フォロワー数の少ないパートナーの中には毎月の収入が数円という人もいたというから、これはある種の改善である。既存のパートナーは2021年末まで現在のステータスを維持できるが、それまでにフォロワーが100人に達していない場合は削除されることになる。

またMediumは近い将来、最低支払額を10ドル(約1100円)に設定する予定だという。つまりライターが1カ月に10ドル未満しか稼げなかった場合、その分の報酬は翌月に繰り越され、最低10ドルが貯まってから支払われることになる。

Mediumはこれまで会員数について口を閉ざしてきたが、CEOのEv Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏はTechCrunchに対し11月、その会員数は「数十万人」であると述べている。Axiosによると2021年3月までのMediumの会員数は72万5000人とのことだが、Digidayは以前、Mediumが2020年までに100万人の会員数を達成したいと考えていたことを報じている。2017年に設立された競合のSubstackは、9月の時点で25万人の有料会員を抱えており、その2カ月後に6500万ドル(約71億円)のシリーズBラウンドを調達している。Mediumが最後にベンチャー資金を調達したのは2016年で、5000万ドル(約55億円)のシリーズCラウンドである。

Substackや新参のGhostのようなプラットフォームは、有料購読者の数に応じてライターに報酬を支払っている。Mediumの新しいレベニューシェアモデルも同様に、読者をプラットフォームに誘導することがライターのインセンティブになっているものの、Mediumの取り分は約50%である。ライターの個別ニュースレターへの直接購読に対しては、Substackは10%、Ghostは月9ドル(約990円)を受け取っている。SubstackやGhostの読者は複数の個別ニュースレターを購読しているかもしれないが、Mediumの購読者は月5ドルまたは年間50ドルの料金を支払うだけで、ウェブサイトの全コンテンツにアクセスが可能だ。

競争の激しいニュースレタービジネスの世界。6月にはFacebookが厳選された寄稿者によるBulletinというニュースレタープラットフォームを立ち上げ、2021年初めにはTwitterがRevueを買収。そして先週、QuoraがQuora+というマネタイズプラットフォームを発表している。会員費はMediumと同じ価格設定となっており、またMediumと同様、Quora+の購読者はライターが有料化を選択した全コンテンツにアクセスが可能。ライターはコンテンツへのエンゲージメントに応じて報酬を受け取ることができる。さらにライターはQuora上でユーザーが作成した出版物のようなSpacesに有料の記事を書くこともでき、Quoraはその支払いの5%を受け取っている。

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画像クレジット:Medium

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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