Microsoftがイーロン・マスクらのOpenAIに1000億円超を投資、Azueクラウドの人工知能化を目指す

Microsoft(マイクロソフト)はOpenAIに10億ドル(約1080億円)を賭けた。3年前に創立されたこのAIスタートアップのファウンダーにはイーロン・マスク氏をはじめとしてY Combinatorの前プレジデント、サム・アルトマン氏(写真左)などシリコンバレーの著名人が多数いる。

OpenAIの目的は人工知能をユーザーフレンドリーな方向に導くための研究・開発だ。マスク氏は「現在のAI開発の方向は人類の生存を脅かす問題に発展しかねない」と警告してきた。OpenAIはAIの暴走を防ぎ、責任ある開発を目指すという。

現地時間7月22日にMicrosoftとOpenAIは複数年に渡る「実際のコンピューティングを含むパートナーシップ」契約を締結したことを発表した。つまりこの契約で両社はMicrosoftのAzureクラウド向けに新しいAIスーパーコンピューティングテクノロジーを開発する。加えてOpenAIは 現在稼働しているサービスをAzureにポーティングする。またこの契約でMicrosoftはOpenAIの優先パートナー(Preferred Partner)に加わった。これは今後OpenAIが開発するAIテクノロジーの商用化にあたってMicrosoftらが優先的な取扱を受けることを保証する。

今回の発表にちりばめられた「独占的」や「優先的」という単語は興味深い。実はOpenAが創立されたときの理念の1つは人工知能の研究にあたっての自由な協力体制だったからだ。AI研究者は共同でj研究を行い、成果物も自由にメンバーが利用できることを意味していた。しかしいくつかの留保事項があった。プロジェクトの中OpenAI Inc.はNPOだが、子会社のOpenAI LPは営利企業だ。同社の定款の一部は「セキュリティー上の理由により」 非公開となっている。つまり同社の事業の一部は今後も公開されない。

Microsoftにとって今回の提携の目的はAzureに広範囲にAIプラットフォームを確立することだろう。これにより、AzureのスーパーコンピューティングテクノロジーをAIや総合機械知能の開発に役立てることができるようになる。OpenAIは総合機械知能の発展の中心的グループにMicrosoftを迎え入れることができる。発表によれば提携はAIにおける「安全性やセキュリティー上の懸念」を解消することを念頭に置いているという。もちろん10億ドルという資金も念頭に置いているだろう。

投資資金の使い道など詳細については不明ながら、OpenAIの共同ファウンダーでCTO(最高技術責任者)、Greg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏のアカウントから のHackerNewsへの投稿は「キャッシュによる投資」だとしている。

Update記事公開後にOpenAIから連絡があり、投資の内容が多少明らかになった。OpenAIの共同ファウンダー、CTOのブロックマン氏のコメントは以下のとおり。

今回の投資は全額キャッシュでOpenAI LPに対するもので、リミテッドパートナーシップに対する標準的な出資確約(Capital Commitment)だ。すなわち今後複数年にわたって我々の求めに応じてMicrosoftが必要なを出資することとなる。我々はこれを5年以内と予定しているが、それより短い期間に出資が完了する可能性がある。

OpenAIは創立時に10億ドルをマスク氏、アルトマン氏らから確保している。共同ファウンダーには前述のブロックマン氏に加えて、LinkedInの共同ファウンダーであるリード・ホフマン氏、YCの共同ファウンダーであるジェシカ・リビングストン氏、ベンチャー投資家のピーター・ティール氏、AWSらが名前を揃えている。AWSの存在はAzureとの関係で興味深い。 Infosysと YC Researchは数年といった短い期間では出資金を全額使うのは難しいだろうと予測していた。

画像:Microsoft

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(翻訳:滑川海彦@Facebook