MicrosoftがLinkedInを262億ドルで買収、エンタープライズ向けソーシャルメディアに参入

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エンタープライズ、そしてソーシャル・ネットワーク業界における巨額のM&Aの発表があった。MicrosoftLinkedInを買収すると発表したのだ。LinkedInは社会人のソーシャルネットワークで4億3300万ユーザーを抱える。買収額は260億ドル、1株辺り196ドルで現金で買い取る。この取引は両社の取締役会ですでに承認済みだ。

1株辺り196ドルという提案価格は、金曜日の引け後の価格 $131.08から随分と上乗せされている。(もちろん今日の株式市場開始前の取引ではLinkedInの株価は64%近く上昇し、Microsoftが支払う予定の株価に近くなった。一方、Microsoftの株価は株式市場開始前の取引で4%下がり、49.66ドルだ)。

LinkedInはブランドとプロダクトと維持し、Micorosoftのプロダクティビティとビジンスプロセス部門の一部となる。LinkedInのCEOであるJeff WeinerはSatya Nadellaに報告を上げることになる。

この買収案件は双方にとって影響が大きい。

Microsoftにとっては、同社のエンタープライズ向けサービスをさらに展開するための戦略に欠けていた部分を補うことができる。現在、Microsoftはほぼソフトウェアにしか注力していない(縮小している携帯端末ビジネスでは少しハードウェアも扱ってはいる)。

LinkedInの買収で、Microsoftはソーシャル・ネットワークとプロ向けコンテンツにおいて広いリーチを得ることになる。Microsoftは2012年にYammerを12億ドルで買収し、法人向けソーシャル・ネットワーキング分野への進出の意図を見せていた。LinkedInの雇用主と雇用者に特化した広範なソーシャル・ネットワークを得ることで、Microsoftは自社プロダクトを届ける潜在的な販売チャネルを得る。すでにMicrosoftを利用している企業に対しては、コラボレーションやコミュニケーションを補完する役割を担うだろう。

他にもこの買収案件においてLinkedInのビジネスが魅力的な要素がある。例えば、LinkedInはLynda.comを買収している。Lynda.comは、LinkedInがユーザーにオンライン学習ツールを提供する取り組みを進めるために買収していた。職業開発に関して一番先に思い浮かぶ場所という立ち位置を確立するためだ。MicrosoftにとってはLyndaを活用し、ソフトウェアプロダクトの販売を促進したり、それらの使い方の学習の手助けを提供したりできるだろう。

「LinkedInのチームは、世界のプロをつなげることを軸に素晴らしいビジネスを作り上げました」とNadellaは声明で伝える。「私たちは共に地球上の全ての人と組織の力になりながら、LinkedIn、Microsoft Office 365、Dynamicsの成長を加速さることができます」。

(ちょっと注記すると、この買収を受け、Microsoftが少し前に行ったコスト削減のためのレイオフと売却を別の角度から見ることもできるだろう)。

LinkedInにとって、彼らのソーシャルグラフ上でさらにソフトウェアを積み上げ、どんどんLinkedInとの差を詰める競合企業とどのように競うかという問題に終止符が打たれる。しばらくの間、LinkedInは競合する方向で事業を展開するように見えたが、直近のユーザーと収益の成長に関する課題、そして株価の継続的な下落を受け、LinkedInは守りの姿勢に入っていた。

「私たちが仕事の機会とのつながりを変えたように、Microsoftとの関係、そして彼らのクラウドとLinkedInのネットワークが合わさることで、私たちは世界の働き方を変えるチャンスを手に入れます」とWeinerは声明に綴る。「過去13年間、私たちはプロ同士をつなげ、彼らの生産性を高め、成功を後押しするという独自の立場を築きました。そして今後、会社の物語における新たな章でこのチームを率いることを楽しみにしています」。

これは、崩落しかけている会社を別の会社が拾い上げたという話ではない。LinkedInの株価は過去12ヶ月の最高値、1株258ドルから下落したものの、上場しているテクノロジー企業でも高いパフォーマンスを示している方だ。

一方のMicrosoftは、ソーシャルネットワーキングの分野で大成功を収めたことはない。Facebookの上場前に賢く投資したり、以前私たちが報じたようにSlackに関心を持ち、80億ドルで買収を試みようとしたりはした。だが、LinkedInのソーシャルネットワークがあれば、この分野でしっかりと足場を固めることができるだろう。

LinkedInは200以上の国で利用でき、月間アクティブユーザーは1億500万人だ。全体の登録ユーザーは4億3300万人だ。60%のトラフィックはモバイルで発生し、強力なSEOのおかげで、四半期におけるPV数はなんと450億あるという。また最大級の求人数を持ち、現在700万のアクティブな求人掲載がある。LinkedInのビジネスの一部分は確かに停滞している。特にMAUの成長率(昨年からたった9%しか伸びていない)だが、求人に関しては成長ビジネスだ。昨年から101%成長している。

LinkedInの現在の中核事業は求人広告で、それほどではないにしろユーザーのプレミアム・サブスクリプションのビジネスもある。採用ビジネス(名称は「Talent Solutions」)は2015年の全体収益の30億ドルの内の20億ドルを占めた。

そして、上記の写真を見て分かるように、共同ファウンダーで現会長であるReid Hoffmanが取引に関与している。

「今日はLinkedInにとって再創業の日です。私たちのメンバーとカスタマーにとって素晴らしい可能性が開かれます。両社の組む新たなビジネスをサポートしていくことを光栄に思います」とHoffmanは声明で伝える。「この取引、そして役員会がそれに同意するという決断を支持します。私はそれに従い、彼らの推薦と合わせて投票します」。

同社は、8時45分PTから、カンファレンスコールを開始する。下記は彼らが提示するプレゼン資料だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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TechCrunch Japan

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