MicrosoftのVisual StudioがTypeScriptを正式サポート

約1年半前にMicrosoftは、JavaScriptで大きなプログラムが書きやすくなるプログラミング言語TypeScriptを発表した。そして今日はTypeScript 1.0の最初のリリース候補の提供と、Visual Studio 2013の最新アップデートが行われ、TypeScriptはMicrosoftのIDEが正式にサポートする言語になった。

つまりTypeScriptはMicrosoftにおいてC#やVisual Basicと同格になったのだから、Microsoftとしてはいよいよ本気だ。これまで、TypeScriptをVisual Studioで使うためには、そのためのエクステンションをインストールする必要があった。それはたいした手間ではなかったけど、これからはVisual Studio本体がサポートするのだから、Microsoftがこの言語を相当重視していることが分かる。

TypeScriptはJavaScriptのスーパーセットで、オプションで静的型付けがサポートされ、クラス(上図)によるオブジェクト指向プログラミングができる。MicrosoftによればこれによってJavaScriptのためのより良いツールの開発ができるようになり、プログラマの生産性を高める。またそれと同時に、それまでのJavaScriptライブラリもそのまま使える。コードはすべて、通常のJavaScriptへコンパイルされるので、どんなブラウザでも動く。ランタイムライブラリはなく、コンパイラが不要なコードを注入することもない。Visual Studioに統合されたので、MicrosoftのIntellisenseや文の補完機能を利用できる。

TypeScriptのチーフアーキテクトは、あの偉大なるTurboPascalを作り、のちにDelphiやC#の制作にも貢献したAnders Hejlsbergだ。彼によると、TypeScriptは今、Microsoft内部での普及が急速に進んでいる。たとえばVisual Studio Onlineには今、30万行あまりのTypeScriptコードがあり、Windows 8.1用のXbox Musicの新しい機能はすべて、この言語で書かれた。またBing Maps、Photos、Microsoft Dynamicsなどそのほかのアプリケーションも部分的にTypeScriptで書かれている。

“JavaScriptでもきれいなコード*が書けるようにしたかった”、とHejlsbergは言う。TypeScriptで書いてもパフォーマンスが犠牲になることはないし、むしろコンパイラがプログラマの負担を取り除いてくれる部分が大きいから、素(す)のJavaScriptより生産性は高い、とも。〔*: JavaScriptのきれい化, GoogleのDart言語はどうか…。〕

TypeScriptはHejlsbergの期待を上回って、Microsoftの外の世界でも人気が出始めている。具体的には、今人気の高いIDEのほとんどがこの言語のためのプラグインを提供しているし、GoogleはTypeScriptコンパイラを同社のOctaneベンチマークに含めている。またGitHub上にはTypeScriptのタイプ(型)定義集DefinitelyTypedがあるなど、サードパーティのJavaScriptフレームワークをサポートする非常に活発なオープンソースコミュニティも、今ではTypeScriptをきわめて前向きに取り上げている。

3年前にTypeScriptの開発が始まったときには、できるかぎり軽量なフレームワークを作ろう、ということでチームの意思がまとまった。新しい言語を作るときは、あれやこれやと新しい機能を導入したくなるものだが、TypeScriptは自粛して新しい文をまったく導入していない。でもHejlsbergによると、今後は新しい文が増えるかも、という。しかしとにかく大筋では、今年の後半に公布される予定のECMAcript 6の規格に沿うことを鉄則とし、この新規格に盛り込まれたものはすべてTypeScriptにも含めることにした。

Hejlsbergによると、今日ローンチした1.0リリース候補(release candidate, RC)は、実質的には本番の1.0そのものだ。でも、ユーザが新しいバグを発見する可能性もあるから、控えめに‘リリース候補’と呼ぶことにした。もちろんこれまでのバージョンとの後方互換性には厳密に配慮しているが、言語本体の(未来指向の)開発も力を抜かずに継続していく意向だ。

Visual Studio 2013の最新アップデートは今すでにダウンロードできるが、Visual Studio 2012のユーザはTypeScript 1.0 RCを専用のインストーラを使ってインストールできる。Visual Studio 2013のアップデートには、TypeScriptの統合のほかにも、いろんな新機能やバグフィクスが盛り込まれている。詳しくはこのドキュメントで。

このアップデートの一環としてMicrosoftは、同社のTeam Foundation ServerやVisual Studio Online、それにTeam Explorer Everywhereのニューバージョンもローンチした。新しい機能の多くは、GitとJavaのビルドのサポートの向上に関連している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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