Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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