MITスピンオフ企業OPT Industriesが3Dプリントによる鼻腔用綿棒の生産拡大に向けて約17億円を調達

OPT Industries(オプト・インダストリー)という社名を耳にしたことがあるならば(ない人がほとんどだと思うが)、それはこのMITのスピンオフ企業が、新しい鼻腔用綿棒を3Dプリントで作ったからだろう。例年ならあまり話題にならないような種類のものだが、昨今の世界的な新型コロナウイルス感染流行によって大きな注目を浴びたのだ。

この「InstaSwab(インスタスワブ)」は、髪の毛の幅にも満たない極細のポリマー繊維で構成された複雑な幾何学模様の構造が、デザイン界でも注目されている。

OPTの3Dプリントシステムは、開発に7年の月日がかかっているが、このタイミングで「細菌サンプルの溶出に最大20倍の効果がある」という綿棒が誕生したことは、確かに幸運だった。もちろん、このようなデバイスの必要性は新型コロナウイルスより前からあり、コロナ禍が(幸いにも)過ぎ去った後も確実に残るだろう。

画像クレジット:OPT Industries

アーリーステージのスタートアップが、大規模な資金調達を始める時に、まさに夢見るような報道のされ方であったことは間違いない。同社は米国時間3月1日、1500万ドル(約17億円)のシリーズA資金を調達し、再び注目を浴びることになった。このラウンドはNorthpond Ventures(ノースポンド・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のCrosslink Capital(クロスリンク・キャピタル)と、MITと提携しているE14 Fund(E14ファンド)が参加した。

InstaSwapは当面、この会社にとって不可欠な製品であり続けるだろうから、同社はこの綿棒の代替製品の生産拡大を計画している。今回の資金調達と同時に、OPTはLumiraDx(ルミラ・ダイアグノスティクス)が、InstaSwapを承認済み綿棒のリストに加えたことを認めた。3Dプリント製品がこの栄誉に浴するのはこれが初めてだ。

「先進的な製造企業として、私たちはマクロスケールの課題を解決するマイクロスケールの技術を構築することに価値を見出しています」と、創業者兼CEOのJifei Ou(欧冀飞、オウ・ジーフェイ)氏は述べている。「OPTは顧客と協力して、ヘルスケア、自動車、化粧品、消費財、その他の業界向けの斬新なメタマテリアルと製品の設計・製造に取り組んでいます。私たちはこの新たな資金を使って、InstaSwabの需要に対応し、製品開発を促進して、事業を拡大させ、チームを成長させるつもりです」。

画像クレジット:OPT Industries

その点から見れば、この綿棒はコンセプトの証明を超えたものであることは間違いない。しかし、これはOPTのアディティブ・マニュファクチャリング(付加製造・積層造形)を支える基盤技術の出発点のようなものでもある。同社の「RAMP 3D」と呼ばれる3Dプリンターは、エッジからエッジまでロール状にプリントするため、従来の方法よりもはるかに速い規模で高解像度のプリントを作成することができる。また、24時間プリント可能であるため、アディティブ・マニュファクチャリングの長年の目標であるサプライチェーン問題の対処において、極めて重要な役割を果たすことができると、同社は確信している。しかし、従来は規模を大きくすることに問題があった。

そこでOPTは、2021年後半に、InstaSwabの需要拡大に対応するため、最初の本社があるベッドフォードに近いマサチューセッツ州メドフォードに、1万4000平方フィート(約1300平方メートル)の製造施設を新設した。

画像クレジット:OPT Industries

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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