MIT研究者グループ、外部動作部なしに自己組換を行うモジュラーロボットを開発

自分で構造を変えることのできるロボキューブ(robo-cubes)の登場だ。外部に動作部を持たずに自力で動きまわるようなものが出来るわけがないという意見もあった中、MITのリサーチサイエンティストがついに作り上げた。これでついに完璧版なリアルテトリスが楽しめるようになる(もちろん開発の目的なそのような用途ではない)。バラバラに散らばった状態から、自動的に秩序ある構造に組変わる。ドクター・フーに登場したダーレク(Dalek)の軍隊をつくって、他の惑星に送り込むようなことができるようになるかもしれない。

このロボキューブはM-Blockと名付けられている(上のビデオに動作の様子あり)。ひとつひとつのキューブを「モジュール」に見立てている(今のところは実用性はない)わけだが、外部に動作部がないのがとても面白い。動きの秘密は内蔵しているフライホイールにある(毎分2万回の速度で回転する)。これにより、他のブロックの上にのぼったり、ジャンプしたり、あるいは回転したりという動作が行えるようになっている。動作部どころか出っ張りも何もないキューブが自在に動くのは不思議な感じだ。動作部が存在しないことで、キューブがどちらを向いていても動作可能であるというのも大切なポイントだそうだ。

キューブには磁石も入っていて、それにより移動の方向を定めたり、他のブロックとぴったりと重なりあうように制御することになる。M-Blockの小さな一歩が、何かのきっかけで大きすぎるジャンプとなり、机の下に転がりこんでしまうようなことを防いでいるわけだ。もちろん、そうしてどこかに隠れることが目的であるのなら、そのように動かすこともできはする。ブロックの端の方は、回転運動中に磁石の力が届かなくなってしまわないように、面取りもしてある。

ロボットのモジュール化を進めるにあたって、外部の動作部を持たせないでおくというのは長年の目標だった。聖杯(Holy Grail)であったと言っても良い。エレクトリカル・エンジニアリングおよびコンピューターサイエンスの教授であり、かつCSAILのディレクターであるDaniela Rus曰く「モジュラーロボットを研究するコミュニティで、ずっと実現が夢見られていた技術です」とのこと。インタビューの様子も上のビデオで御覧いただける。「新たな仕組みを考えだす力と、諦めない忍耐力が今回の発明に繋がったと思います」。

「モジュラーロボットで目指しているのは、目的に応じて自身を組み立てたりあるいは組み替えたりすることのできるロボットを実現することです。行うべき作業に応じて自らの姿を全く異なるものに変えることができるのです。ロボットというのは一般的にひとつの作業を行うのに特化して作られています。その特定の作業では素晴らしいパフォーマンスを発揮するものの、他の作業はからっきし駄目だという状態でした。こうした状況を変えることができるわけです」と、インタビューの中でも述べている。

長期的な話としては、たとえばモジュラーロボットを小さなマイクロボット(あるいはさらに小さくナノボット化でもいい)化して、作業現場で必要な応じた形式ないし大きさに変化するようなロボットの実現を目指しているのだそうだ。モジュールの組み合わせによって、多様な作業を行うことができる。但し、これは今のところ遠い将来の話、ないしはSF的な話ではある。

もちろん、現在のサイズのままでもモジュラーロボットにはさまざまな可能性があるのだと、M-Blocksの研究者たちは言っている。たとえば緊急時に、建物や橋などの構造物として機能させることもできる。あるいは用途に応じて組み替える家具や、あるいは大型機械としての用途もあるかもしれない。それぞれのキューブにカメラ、ライト、バッテリーなどのモジュールを搭載して、ほぼ無限の用途に利用することができるようになる。

現在は100のキューブを使って、それぞれが自在に移動して各種のテストを行っているところだ。それぞれのキューブの移動を制御する効率的アルゴリズムも開発中だ。将来的には全くランダムに配置された状態から、キューブ同士がお互いを認識して、自律的に必要とされる形(たとえば椅子やハシゴなど)に組み替えることができるようにと考えている。

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(翻訳:Maeda, H


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TechCrunch Japan

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