Moveworksがチャットボットプラットフォームを企業が社内のさまざまな部署にも対応できるように拡張

2019年末に投資家がMoveworks(ムーブワーカーズ)に7500万ドル(約83億円)もの高額なシリーズB資金を提供したとき、このスタートアップ企業はそれまで、ITヘルプの質問に自動で答えるように調整されたチャットボットを手がけていた。米国時間3月31日、同社はその資金を使って、すべてのビジネスラインで従業員の質問を網羅するようにプラットフォームを拡張したと発表した。

資金調達の時点では、新型コロナウイルス感染症の発生は誰も予想できなかったが、2020年は企業が在宅勤務に移行したこともあり、Moveworksのような自動化されたシステムを導入することがより重要になったと、同社の共同創業者であるBhavin Shah(バビン・シャー)CEOは述べている。

「さまざまな面で悲劇的な年でしたが、そのおかげで、人々のサポートに対するニーズや、スピードとヘルプに対するニーズに、多くのエネルギーが集中しました」と、シャー氏は述べている。社員は通常、Slack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフトチームズ)などのコラボレーションツールの中で、Moveworksのチャットボットにアクセスする。新型コロナウイルスの影響で、自宅で仕事をしながらこれらのツールを利用する時間が増えている。

「この市場に対する関心は明らかに高まっていますが、世界中の企業がSlackやMicrosoft Teamsなどのコラボレーションツールを大規模に導入していることも、その要因となっています」と、同氏は語る。

Moveworksは現在、顧客として100社の大企業と提携しているが、これらの顧客は、人事、財務、施設管理など、さまざまなツールにおいて、従業員の質問に対する答えを自動化する方法を求めていた。シャー氏によれば、このプラットフォームをITだけでなく、組織の他の部分にまで拡大することは計画にあったものの、パンデミックの発生により、さらに拡大する必要性が強調されたという。

同社では、最初の数年間は基盤となる人工知能技術をIT言語用にチューニングすることに取り組んでいたが、当初から拡張性も考慮して構築していたという。「私たちは会話システムを、誰かが(予め質問とその答えを)先回りして考えることを基本にするのでなく、ダイナミックに構築していける方法を学びました。そうでないと、拡張性を持たすことができないからです。それには企業の全リソースを扱うことなど、企業規模のパートナーとなるために必要なことがたくさんありました」と、シャー氏は述べている。

同社はまた、企業がMoveworksのボットを使って従業員と直接コミュニケーションをとり、何らかの行動を起こさせることができる新しいコミュニケーションツールも発表した。シャー氏によると、例えば、企業は通常、従業員にパスワードを更新しなければならないという内容のメールを送るが、このボットはそれを行う時期であることを伝え、そのプロセスを案内するリンクを提供するという。ベータテストでは、電子メールの代わりにボットを使ってアクションを伝えることで、反応に70%の増加が見られたそうだ。

言語を理解するテクノロジーには、さまざまな文化的差異やニュアンスの違いが含まれることを、シャー氏は認識しており、このようなツールを構築するには、多様な人材によるチームが必要だと同氏は考えている。シャー氏によると、同社の人事チームは、顧客ベースと世界全体のニーズを反映したチームを構築するため、少数派の人々とも確実に面接を行えるように一連の権限が与えられているという。

同社はこの9カ月間、10社程の顧客とともにプラットフォームの拡張を行い、質問の種類や関係する部署を問わず、回答の質を向上させるための反復作業を行ってきた。現在、これらのツールは一般に利用可能になっている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Moveworksチャットボット

画像クレジット:sorbetto / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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