Mozillaが70人レイオフ、新製品の立ち上げに遅れ

Mozilla(モジラ)が1月15日、約70人の従業員を解雇したとの情報をTechCrunchは入手した。

Mozillaの会長兼暫定CEOMitchell Baker(ミッチェル・ベイカー)氏は内部メモで、レイオフ実行に至った具体的な理由として、収益を生むはずだった新製品の展開が遅れていることに言及した。Mozillaはこの決定が英国とフランスの従業員に与える影響も引き続き検討しており、全体の削減人数はさらに増える可能性がある。2018年の時点で、Mozilla Corporationは(はるかに小さいMozilla Foundationとは対照的に)世界中に約1000人の従業員がいると述べた

「我々の計画では、新しいサブスクリプション製品からの収益を2019年と2020年に計上し、検索以外の事業からの収益を増やす予定だったことを思い出してください」と、ベイカー氏はメモで語っている。「2019年の計画では、新しい収益を生み出す製品の開発と出荷にかかる時間を過小評価していました。2019年のイノベーションのペースも予想外でした。2020年の収益予測ではそれらを踏まえ、より保守的なアプローチの採用を決定しました。また、分相応の暮らしをする、すなわち予見可能な将来において、稼ぐ以上の支出をしないという原則についても合意しました」

レイオフされた従業員は「手厚い退職パッケージ」と転職支援を受けるとベイカー氏は述べている。また、リーダーシップチームがMozillaイノベーションファンドの閉鎖を検討したが、新製品の開発を継続するためにはやはり必要と判断したと書いている。これまで累計で、Mozillaは新製品の開発に4300万ドル(約50億円)を費やした。

「未来に目を向けて、我々のミッションの永続性と強みを確かなものにし、かつ発展させるためには大胆なステップを踏まなければなりません」とベイカー氏は書いている。「Mozillaは将来の収益創出に関して力強い見通しを持っていますが、財務に対してはより保守的なアプローチを取っています。これにより、インターネットの健全性に対する市場の脅威に対応し、ユーザーのプライバシーと選択の自由を擁護するために、必要に応じて柔軟に動くことが可能になります」

同社が最後に大きなレイオフを発表したのは2017年だった。

過去数カ月間にMozillaは多くの新製品のテストを開始した。そのほとんどが発売後はサブスクリプションベースになる。目玉機能には、Firefox Private Networkと、こちらはまだ立ち上がっていない月額約4.99ドル(約550円)のデバイスレベルのVPNサービスが含まれている。

以上はいずれも、検索パートナーシップ収入への依存を減らし、収益チャネルを多様化するという同社の計画の一部だ。Mozillaが財務記録を公開した直近年度である2018年は、ロイヤルティ収入の約91%が検索契約によるものだった。

ベイカー氏はMozillaのブログに投稿された声明の中で、Mozillaがイノベーションに資金を供給するためには人員削減が必要だと繰り返している。「Mozillaには、当社の中核事業からの将来の収益創出に関して力強い見通しがあります。ある意味では、見通しが力強いために今回の施策は判断が難しく、従業員への影響についても深く悩みました。しかし、インターネットを改善するためのイノベーションに責任を持って追加投資を行うためには、コアファイナンスの範囲内で事業を続けるべきであり、そうしなければならないと判断しました」

メモの全文は以下の通り。

CEOオフィス<officeoftheceo@mozilla.com>

to all-moco-mofo(編集部注:Mozilla CorporationおよびMozilla Foundationの全員に宛てている)

みなさん、

お知らせしなければならないニュースがあります。ステアリングコミッティと取締役会の全員の賛成に基づき、極めて厳しい決定を下しました。本日、MoCo全体で約70人のポジションを削減する予定です。英国とフランスでは、削減する具体的なポジションついて、法律で義務付けられた協議をなお行っており、人数は若干増える可能性があります。影響を受ける1人1人に対して最大限の敬意をもって進めていきます。手厚い退職パッケージと転職支援を提供することにより、対象者の支援に力を尽くします。ほとんどの対象者はベルリンに参加しません。影響を受ける方々との面談が終わり次第、速やかに次のメモを公表し、通知や連絡が終了したことがみなさんにわかるようにします。

このニュースにショックを受ける方も多いと思います。これまでみなさんに対して必ずしも透明性を保てなかったことは残念です。これは決して私の望んだところではありません。ステアリングコミッティは、他のあらゆる手段が検討された後に初めて、2020年の計画および予算編成の一環として、人員削減を検討しました。最終決定は休暇の直前に行われ、具体的に影響を受けるポジションの確定作業は1月上旬まで行われました(英国とフランスには例外があり、決定について協議中です)。影響を受けるポジションと個人のリストの最終版に近いものができるまで、私はこの件について公表しないと決めていました。

今すぐ消化するのは難しいと思いますが、この決定に至った理由をもっと共有したいと思います。少し時間をおくのが適切であれば、後でご質問いただくこともできます。

我々の計画では、新しいサブスクリプション製品からの収益を2019年と2020年に計上し、検索以外の事業からの収益を増やす予定だったことを思い出してください。しかし、それは実現しませんでした。2019年の計画では、新しい収益を生み出す製品の開発と出荷にかかる時間を過小評価していました。2019年のイノベーションのペースも予想外でした。2020年の収益予測ではそれらを踏まえ、より保守的なアプローチの採用を決定しました。また、分相応の暮らしをする、すなわち予見可能な将来において、稼ぐ以上の支出をしないという原則についても合意しました。

このアプローチは堅実ではありますが、実行するのは簡単ではありません。当社の場合、痛みを伴う難しい決定が必要でした。定期的な年間給与の増加、ボーナス、毎年増加するその他のコスト、また独立のイノベーションファンドの規模を保ちつつ続けていく必要性を鑑みると、2020年の事業計画と予算編成プロセスの一環としてMozilla全体で大幅な節約を検討する必要がありました。この検討過程で、最終的に人員削減の決定に至りました。

独立したイノベーションファンドの閉鎖を検討したのか、ここで疑問に思われるかもしれません。答えはイエスですが、真摯に検討した結果、最終的にその案は採用できませんでした。Mozillaの未来は、現在の仕事で優れた結果を出すとともに、新製品を開発して影響力を拡大することにかかっています。新製品を生み出して未来を変えるためには従来のやり方から脱却する必要があり、それには資金が必要になります。具体的には4300万ドル(約50億円)を割り当てました。イノベーションをしっかりと形にするための計画について今後議論する予定です。今それを議論するのではなく、再び開催する全従業員会議に向けて細部を詰めていきます。

未来に目を向けて、我々のミッションの永続性と強みを確かなものにし、そして発展させるためには大胆なステップを踏まなければなりません。Mozillaは将来の収益創出に関して力強い見通しを持っていますが、財務に対してはより保守的なアプローチを取っています。これにより、インターネットの健全性に対する市場の脅威に対応し、ユーザーのプライバシーと選択の自由を擁護するために、必要に応じて柔軟に動くことが可能になります。

この困難な時期を乗り越えて、お互いをサポートするためにできることはすべてしてくださるようお願いします。

ミッチェル

画像クレジット:Horacio Villalobos – Corbis/Corbis via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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