nanapi「けんすう」が語る、ユーザー投稿サイト運営でやってはいけないこと

起業家の失敗談をテーマにしたイベント「FailCon」が18日、日本に初上陸した。FailConは、成功談ばかり語られるイベントが多く開催される中で、失敗談を研究して成功につなげようと、2009年にサンフランシスコで誕生したイベント。東京・代官山で開かれたFailCon Japanでは、 nanapi共同創業者の「けんすう」こと古川健介氏が、「CGMサービスを作る上での失敗」をテーマに講演。学生や予備校生向けのコミュニティサイト「ミルクカフェ」やハウツーサイト「nanapi」、スマホ向けQ&Aアプリ「アンサー」など、ユーザー投稿サイトの運営での失敗談とそこから得た教訓を語った。

ミルクカフェでは何度も警察に出頭

一番最初は19歳の時に「ミルクカフェ」というものをやっていました。どういう仕組みかというと、ユーザーが好き勝手に投稿して、「この授業が良かった」とか「予備校のあの先生、教えるの下手だよね」とかも投稿されていました。投稿しているのが学生さんなので責任を追わせるのは嫌だと思って、全部ボクの責任というふうにしたんですね。

そうすると、めっちゃ責任を負わされてですね。めっちゃ警察に行ってましたし、内容証明もがんがん来るし、訴訟での損害請求額は総額6800万円。でも、僕も学生でお金がなくて払えないので無敵だったんですね。

警察のような公的機関はいいんですけど、すごく大きな宗教団体の人が右翼を使って圧力をかけてきて、「街宣車呼ぶぞ」みたいな。すごい面白いと思って、ぜひ来てくださいという話で盛り上がったんですけど、そういうのがあると結構面倒臭いなと思うようになりました。

ミルクカフェの反省を活かした「したらば掲示板」も……

管理者が自分だからいけないんだと思って作ったのが「したらば掲示板」。ユーザーが好きに掲示板を作れるのですが、「自分の責任で管理してください」というものなので、我々は責任がなくなるんです。ユーザーも自分の掲示板を宣伝してアクセスが伸びていまして、2003年で3億PVだったりして、日本では100番ぐらいになってたりしました。

ただ、ユーザーからすると「掲示板は自分のもの」という意識があるので、広告を貼られるのを嫌がるんですよね。流行ってサーバー費用がかかるのにお金が入らない。成長すればするほどお金がなくなっていく感じで大変だなあと思いました。それで、ライブドアに事業譲渡せざるを得なかったという失敗をしてしまいました。

じゃあ次何やろうと考えてみると、やっぱり意見を交換するものは人が傷つく、これからはポエムだなと。主語とかなくて、「空がきれい」とか。ポエムが来るなと思ったんですけど、ポエムが来なかったんですね。ポエム来ないのかあと思って結構びっくりしました。

ハウツー版ウィキペディアの難しさ

その次にやったのがnanapiです。いろいろ考えてみて、人の意見がぶつかり合うものはトラブルが多いし、だからといってポエムぐらい振り切ってもニーズがない。そこで、生活に便利なネタを投稿するサービスを始めることにしました。

簡単に言うとWikipediaのハウツー版みたいなイメージ。これが結構難しくて、Wikipediaが解説する名詞と違って、ハウツーはコンテンツの粒感がバラバラなんですね。名刺とか固有名詞はひとつのコンテンツになるのですが、ハウツーだとドラクエのクリアの仕方から、ドラクエのこの洞窟の攻略法など、あらゆるレイヤーにわたって難しい。主観と客観もあったので、Wikipedia式は難しいと感じました。

最近気づいたのは、もともとは人が困るようなものを検索させたいと思ったんですが、検索できないものがあるということ。例えば、寂しいという悩みは、「寂しい」と検索してもいい情報が得られないんですね。我々のサービスの検索キーワードを見ても、寂しいで流入する人がベスト3くらいに入っていたんですよ。人は寂しいと思うと寂しいと検索するんだと。

検索しても解決しない悩みを解決したい

あんまり解決していないのでどうしようと思って作ったのが、即レス型の「アンサー」なんです。実際の例としては、「仕事にいきたくないー」「俺も」みたいなやりとり。仕事に行きたくないのは悩みなんですけど、検索してもしょうがなくて、「俺も」の2文字でいいんですね。それでユーザーさんが課題を解決するというか、解決まではいかなくても楽になることが起こっていたりします。

例えば、「次はぁ〜 おなりもん」という質問が飛んで「東京タワーのそばだよ」というと、のっぽんという東京タワーのキャラクターがボットで投稿したりします。そのほかにも、「化粧水は絶対にけちっちゃだめなんですってね」と言うと、島耕作が「そうですか」とボットで反応したりする。これは講談社に許可を取ってやっているんですけど、めちゃくちゃウザいじゃないですか。ユーザーは嫌がっているんですけど、島耕作がたくさん出てきます。

お題を投げてコミュニケーションしたかったのですが、こういったことはTwitterではできない。「おはよう」と言っても返信が少ないんですね。アンサーだと20〜30件くらい返ってくる。ユーザーが求めている緩やかなつながりとか、雰囲気を作っていたりします。今はアンサーが伸びていて、nanapiともつなげています。例えば、「大福の作り方を教えてください」といったときに、nanapiから引っ張ってコンテンツを出したりしています。

コミュニティサイトを作る際の5つのポイント

コミュニティサイトはボランティアや選挙事務所と同じなんです。社員は給料を払えば基本的に働いてくれますが、そうじゃないとモチベーション設計をしないといけない。このへんが難しいんですね。行き過ぎると誹謗中傷が起きたり、緩すぎると情報価値がなくなる。これをやると、こちらが立たず……ということになるんです。

人と人とのコミュニケーションは思い通りに行かないんですよね。そこで気づいたのはロジカルに考えないことです。意味のないことをやらないコミュニティはうまくいかない。2ちゃんねるのおみくじ機能とか、FacebookのPokeとか。

あとは数字で考えないのも大事です。この数字が伸びているので伸ばしましょうとすると、なぜか壊れるのでやっていなかったりします。

この機能の意味や価値は何かと説明できるものはイケてなくて、「島耕作がレスしたら面白いよね」「ユーザーが不便になるよね」というところからやるといいと思います。今のところ結果は悪いですけれど。意味不明にするのは大事で、素人考えだとわかりやすさやシンプルさが良いとされますが、わかりにくいからこそスティッキネスになったり、知りたくなるという人間の心理があるので、その辺を意識しています。

あとはゴールを明確にしないこと。例えば、クックパッドは「料理で困っている人を解決する」という価値が明確ですが、これを明確にするとつまんないなあと思うんですよね。コミュニティの話は非言語的な部分が多くて説明しにくいんですが、あえてゴールを明確にしないで、「この機能を付けるとユーザーがどうなるか」というのが大事だったりします。

手段を目的化するというのもよく言っています。目的に向かって手段を当てるのはアメリカ的な考えですが、手段自体を目的化したほうがよいと思っています。日本で言うと、初音ミクはこういう曲が作りたくて「手段」として使うよりも、初音ミクを使っていかに面白いことをするか、というのが起こっていて、新しいクリエイティブが生まれています。人間が生み出すものは、こういう目的のために作るというよりも、それ自体がめちゃくちゃ楽しいので盛り上がっていくのが強いんじゃないかなあと思っています。

アンサーも半分くらいは質問になっていないんですが、「会社に行きたくない」「俺も」と話しているうちに話が膨らみ、上司が嫌だったり、その上司ってこうだったんだよねと、会話で気づいたりする。上司の問題を解決しようとして、「あなたの心の持ちよう」と答えが返ってきても人は変われない。コミュニケーションをしているうちに解決したり、気持ちが楽になることを目的にしたほうが面白い。ビジネス的、ロジカルにやると面白くないと思っています。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。