NASAが火星で初となるヘリコプターの飛行を4月8日に計画

エキサイティングな火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」のミッションで、我々地球人が最も楽しみにしているイベントの1つは「Ingenuity(インジェニュイティ)」と呼ばれるヘリコプターの初飛行だろう。何度もチェックを重ねた後、Perseveranceチームは地球以外の惑星で初めて制御された動力飛行に挑戦する日付を4月8日に設定した。

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すべてが順調に進めば、約2週間後にIngenuityは、火星の地上から約3メートルの高さで、初のホバリング飛行を行う。しかし、それまでの間にはさまざまな準備が必要だ。

まず、チームはPerseveranceの着陸地点の近くに「飛行場」となる10メートル四方の平らな空間を特定しなければならない。完了したら、火星探査車はその中心部に向かい、位置を確認することになる。

次にヘリコプターが探査車の腹部から切り離される。ヘリコプターは探査車にボルトやケーブルで固定されている。これは混沌とした着陸プロセスの間、ヘリコプターを安全に保つためのものだが、一度外したら元には戻せない。だからチームは、その場所が100%間違いなく、条件が整っていることを確認しなければならない。この作業には約5日かかる。

IngenuityがPerseveranceから切り離され、飛行可能な位置まで回転すると、Ingenuityは地表からわずか5インチ(約12.7センチメートル)の高さにぶら下がり、わずかに残された探査車との接続を利用してバッテリーを充電する。そしてIngenuityを着陸させた後、Perseveranceはすぐに走り去る。

「6年前にこの旅が始まって以来、私たちが歩んできた一歩一歩は、航空機の歴史において未知の領域でした」と、JPL(ジェット推進研究所)でプロジェクトのチーフエンジニアを務めるBob Balaram(ボブ・バララム)氏は、NASAのニュースリリースで語っている。「地表に展開することも大きな挑戦ですが、火星での最初の夜を、探査車による保護と電力供給なしに単独で乗り切ることは、さらに大きな挑戦となります。Perseveranceとの接続を切り離し、地表に向けて最後の5インチを落としたら、大きな友人にできるだけ早く走り去ってもらい、太陽の光をソーラーパネルに当てて、バッテリーの充電を開始するつもりです」。

ヘリコプターは切り離された後、火星で30日間(火星太陽日)は作動に十分な電力が得られることは確認されているが、それ以上は確実ではない。

これから数日間は、Ingenuityのシステムのテストと、ローターを2537rpmまで回転させるテストが行われる。火星の大気は地球と比べるとほんのわずかしかないため、飛行は多くの意味でかなり困難だ。だからこそ、挑戦はとても楽しみにものになる。

すべてのテストとチェックがOKであれば、早ければ4月8日にIngenuityは離陸を試みて、3メートルの高さまで上昇し、30秒間留まることになる。それから数時間後に、チームは飛行が成功したかどうかを知ることができる。そして多分、Ingenuityに搭載されたカメラから白黒の画像が得られるだろう。カラー画像が取得できるのは、それからさらに数日後になる。

チームは今回の初飛行に基づいて次に行うことを査定し、数週間後にはさらなる(より遠くへの)飛行が行われるかもしれない。データが戻れば、もっと詳しいことがわかるだろう。

Ingenuityの機体には、ライト兄弟が初飛行に成功した飛行機「Flyer(フライヤー)」の翼に使われていた端布が積まれている。地球で初めて飛行した機械が、他の惑星における最初の飛行にも、わずかながら参加することになるのだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星ヘリコプター

画像クレジット:NASA / JPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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