NASAがSpaceXの商業乗員輸送契約を延長、3ミッション追加で約1036億円

NASAは米国時間3月1日、国際宇宙ステーション(ISS)への乗員輸送サービスを、SpaceX(スペースエックス)にCrew-7、Crew-8、Crew-9ミッションとして正式に追加発注したことを発表した。これによって、SpaceXが受注した商業乗員輸送能力(CCtCap)契約の総額は34億9000万2904ドル(約4018億円)となる。

当初の26億ドル(約3000億円)の契約は、Space Shuttle(スペースシャトル)の退役に伴い2011年に終了した米国の乗員輸送能力を開発するために、2014年にSpaceXが獲得したものだ。この民間宇宙航空会社は、2020年以降、Crew Dragon(クルードラゴン)宇宙船とFalcon 9(ファルコン9)ロケットで、ISSへ向けてCrew-1からCrew-3(+有人試験飛行1回)まで、3回の乗員輸送ミッションを行い、打ち上げを成功させている。

修正前の契約では、SpaceXは2022年にCrew-4とCrew-5、2023年にCrew-6と、さらに3つのISSへの飛行ミッションを受注していた。NASAの声明によると、今回の延長契約は「固定価格、無期限納入/無期限数量」であるとのこと。SpaceXの契約期間は2028年3月31日までとなり、成長中の打ち上げ・宇宙事業会社にとってはうれしい定期収入となった。

NASAの宇宙オペレーション本部副長官を務めるKathy Lueders(キャシー・リーダース)氏は、2021年12月に発表されたSpaceXの契約修正を意向する通知の中で「宇宙ステーションにおける米国の存在感を維持するために必要になったときにすぐに準備が整うように、ステーションへの追加フライトの確保を今すぐ始めておくことが重要です」と述べている。「米国の有人打ち上げ能力は、私たちが軌道上における安全な運用を継続し、地球低軌道で経済を構築するために不可欠です」。

NASAはこの通知の中で、SpaceXが現在ISSに乗員を輸送するために認定されている唯一の米国企業であることを認めた。Boeing(ボーイング)も、2014年にNASAから6回のミッションで総額42億ドル(約4800億円)のCCtCap契約企業として選定されたが、同社のStarliner(スターライナー)宇宙船はまだ人を乗せずに行う無人の試験段階だ。2022年5月に予定されている次のテスト飛行では、Atlas V(アトラスV)ロケットで打ち上げられ、ISSとランデブーする計画になっている。

最終的にNASAは、SpaceXとボーイングの商業乗員輸送プログラムを連携させ、ISSに宇宙飛行士を送り込むことを考えている。スペースシャトルの退役からSpaceXの商業乗員輸送プログラム認定までの間、NASAはステーションへの乗員輸送をロシアの国営宇宙機関であるRoscosmos(ロスコスモス)だけに依存してきた。NASAの監察総監室(OIG)による2019年の報告書によると、NASAは2006年から2020年の間に、RoscosmosのSoyuz(ソユーズ)打ち上げシステムに、1席あたり平均5540万ドル(約63億8000万円)を支払っている。このコストは年々上昇し、2020年には1席あたり8600万ドル(約99億円)になっていたという。同じOIGの報告書では、SpaceXの1席あたりの平均コストは5500万ドル(約63億3000万円)、ボーイングでは9000万ドル(103億6000万円)になると推定されている。

画像クレジット:NASA

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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